私的美遊空間

美しく愛しいものたちへのつぶやき

断捨離の賜物、山水画沈金の会席膳

2014年12月16日 | 時空を超えて来たものたち

友達の家で眠っていた会席膳を頂いた。
最近、断捨離をしているのだとか。
「あなたお茶で使わない?」と有難いお申し出に「はーい!頂きますよー!」
善は急げと早速に出かけて持ち帰って来た。

一枚一枚点検すると、ほとんど傷んでいないし光沢も失われていなかった。
輪島塗の十客揃いで木箱入り、お膳を包む和紙には「竹中榮蔵」と塗師の名前があった。
インターネットで調べてみると、現在70歳の男性がこの塗師の会席膳をオークションに
出していて、そのお膳はその方の曽祖父の代からあるものだということだった。

頂いたお膳がいつの時代のものかは分からないが「竹中榮蔵」なる塗師が
同じ人なのか、代替わりした人なのかは別として、
古くから存在していた「名前」なのだと分かって嬉しかった。

~ ~ ~ ~ ~

このお膳は黒の本塗で、表面に山水画が描かれ(彫られ)、建物と舟、飛ぶ鳥の三点に沈金が施されている。
シンプルで静かな雰囲気がすんなりと自分の中に入ってくる感じだった。
茶道具も着物も、よく「出会い」と言う言葉を使う。たまたま出会った物で、自分の気持ちにすとんと落ちる物が
「もともと自分に縁がある物」と言う意味だが、このお膳はまさにそんな感じだった。
友達の断捨離のお陰で「良い出会い」を頂いた。物との出会いは本当に面白い。


*沈金(ちんきん)ー漆器の装飾技法の一つで、漆面に刃物で文様を彫り、この瘡に金箔や金粉を押し込むこと。
彫ったままで、何も埋め込まない場合は沈金とは言わず「素彫り」と言う。

コメント (2)
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