160分の長尺だけど、やられたなあと感服。
「この空の花 ―長岡花火物語」71点★★★★
74歳の大林宣彦監督、久々の新作です。
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2011年、夏。
天草の地方記者・玲子(松雪泰子)は
昔の恋人で高校教師の片山(高嶋政宏)から手紙をもらい
一人、新潟県長岡市にやってくる。
手紙には
教え子の花(猪股南)が書いた
「まだ戦争には間に合う」という芝居と、
長岡の花火を見に来て欲しいと書いてあった。
その花火はかつて長岡を焼き尽くした空襲で亡くなった人々を
追悼する鎮魂の花火でもあった。
そして玲子は長岡で
伝説の花火師(柄本明)や、
戦争体験を語り継ぐ老婦人(富司純子)などと出会い、
また時空を超えて
生々しい空襲の風景に触れることになる――。
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長岡市の花火を軸に、
震災と戦争をつなげる壮大な構想の160分。
最初はやたらセリフが早口で、
妙に説明的でテンポの速い、謎のワールドに戸惑ったけど、
現在と過去、現実と仮想を行き来する構成には
ファンタジーほど儚くない、独特の幻想性があって、
次第に引き込まれていく。
ラストは疲労感でなく
清々しい気持ちが花火の残像のようにしんなり広がりました。
激しい空襲で被害を受け、
さらに中越地震、そして3.11を経験した長岡市の
壮大な郷土史であり、
退屈させない戦争話であり、
ひとつの市をクローズアップした
究極のご当地映画でありながら、
しかし日本全体のムードである「復興」につながる答えを探す
映像作品として立脚している。
よくこれだけのものを組み立て、映画に構築したなあと
感服いたしました。
疾走する一輪車のイメージが
目に焼きつくんだよなあ。
★5/12(土)から全国で公開(新潟県内では4/7から公開中)
「この空の花 ―長岡花火物語」公式サイト