隣(とな)る、と読みます。
「隣る人」60点★★★
埼玉にある児童養護施設に
8年間、カメラを向けたドキュメンタリー。
施設には親と暮らせない事情を持つ
約40人の子どもたちと
彼らの親代りであるスタッフ約20人が住んでいる。
スタッフは毎朝、大勢のためのごはんを作り、
学校に送り出し、放課後は宿題をみてやり、
また夕ごはんを作る。
こういう施設内部の日常生活は
普段、我々がほとんど見る機会のないものであり、
珍しく、興味深いものです。
さらに
カメラは数人の子と、その担当者に寄っていき、
子どもたちの事情や背景が少しだけ語られたりもする。
異動になる担当者との別れを嫌がり
「もう捨てられたくない」とばかりに慟哭する子の姿には、
その心をおもんばかり、
あるいは深読みをし、心を痛めてしまいます。
しかし実際のところ
「もう捨てられたくないとばかりに」とは
あくまでもこちらの想像にすぎず、
そこまで映画では、
突っ込んで語られることはない。
全編、静かに状況を映すのみなので、
過剰な演出やドラマチックは存在しないのです。
それはいいんだけど、
見ながらちょっと違和感があったのは
あまりに事情が語られないと、
内部で事情を分かっている人たちだけの
「内輪ウケ」感が否めないという点。
8年間もの取材のなかで
監督が施設や子どもたちに寄り添い、
まさに「隣る人」になったのかなあと感じてしまいました。
さらに85分はあまりに短すぎて、
「え?これで終わり?」(苦笑)
例えばダルデンヌ兄弟の「少年と自転車」で
少年を受け入れる女性サマンサも
こうした“隣る人”であるわけで、
非常に意義あるテーマだっただけに、
あえて辛い評になったのもありますが、
一般公開映画とするには
もう少し精度を高めるべきではと思いました。
★5/12からポレポレ東中野ほか全国順次公開。
「隣る人」公式サイト