ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

夢売るふたり

2012-09-04 23:19:02 | や行

「ディア・ドクター」のあとだもん
西川美和監督、プレッシャーもあっただろうなア。


「夢売るふたり」70点★★★★


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東京のとある町で
小料理屋を営む貫也こと寛ちゃん(阿部サダヲ)と妻・里子(松たか子)。


愛嬌のある貫ちゃんと里子の息はピッタリで
小さいながらも店は繁盛していた。


が、ある晚、
ほんの一瞬の隙に調理場から火があがり
店は全焼してしまう。

ショックから立ち直れず、酒浸りになった夫を
里子はラーメン屋でバイトをし、献身的に支える。

だが、里子の収入だけでは
店を再建するのは永遠の先に思えた。

そんなとき、夫婦は
ある危険な方法でお金を稼ぐ手段を思いつく。

それは・・・結婚詐欺だった!

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「ディア・ドクター」超えはいきませんでしたが、
やはりレベルは高く、見応えはありました。

「ディア~」から繋がるものは、
現実のニュースを元にしたような題材であること、

そしてそこに
実社会のなかでの善悪のグレーさや、
“偽物”とは“嘘”とはどういうことか、を描いている点ですね。


限りなく人の良い、しっかり女房の松たか子が、
別のゾーンに踏み出す、
その境界での表情がスゴい。

あ、女優と思いました。


阿倍サダヲとの夫婦コンビの
あうんの呼吸なども細かい芝居だし、

深刻になりすぎないように
軽妙を配慮する点も「ディア~」に通じるものはあります。


しかしこれは
そもそもハッキリとしたオチをつけるのが難しいテーマ。

「結婚“も”できない」と思われるのが癪な女や、
男に貢いでしまう女、不倫をする女など
いわゆる“負け組”の典型的パターンを描いていることもあり

展開とともに笑いも減り
真顔にならざるを得ないのも
痛快さのある西川作品にしてはさみしかったかな。

なんにせよ
また次回作が気になりますねえ。


★9/8(土)から公開。

「夢売るふたり」公式サイト
コメント (4)
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