実際のカップルだった俳優と女性監督が経験した実話を、
自分たちが演じて、監督して
魅せる映画にしちゃうっていう
そのことが、まず、すげえ。
「わたしたちの宣戦布告」73点★★★★
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パリで出会った
ロメオ(ジェレミー・エルカイム)とジュリエット(ヴァレリ-・ドンゼッリ、監督も)。
またたく間に恋に落ちた二人の間に、
やがて愛らしい男の子アダムが誕生する。
泣いてばかりのアダムに
若いカップルは正直、辟易しながらも
「赤ん坊なんて、こんなもの?」と思っていた。
が、あるときジュリエットは
アダムの様子がおかしいことに気づく――。
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監督、主演のヴァレリー・ドンゼッリと、
ダンナ役のジェレミー・エルカイムの身に実際に起こったことを、
劇映画として制作した作品。
冒頭、MRIのガンガン鳴り響く耳障りな音が、
映画のリアリティを保証します。
二人の若い恋人たちの出会いを
わざとコミカルに描いたり
全体をポップな調子で描くところなどに、
「重苦しいのはいや!」という作り手の思いが
よく伝わってきます。
実際、重い印象はなくて
とてもうまい作りだと思います。
障害や難病を持つ子の親を取材をした経験からも、
我が子を「どこかおかしい?」と感じつつも
そのことを認めるまでがすごく大変だ、ということは知っていたので、
この夫婦が経る紆余曲折は
実にリアルだった。
どこにでもありそうな子育ての悩みが、
異常に変わっていく、その課程はとても辛いんだけど、
しかし、この映画の真骨頂は
息子アダムの問題が明らかになってからなんですね。
お涙頂戴のヒマもなく、
終始テンポよく物語は進んでいくんです。
だって「闘い」だから!
そう、いざとなったら悩んでるヒマなんてない。
やれることは「我が子を救うこと」だけ。
とにかく、前に進むしかないのだ。
さらに夫婦だけでなく、それぞれの両親、友人など
関わる人々すべてが自然に団結していくさまに
心打たれます。
それでも予想以上に
闘いは長引いていくわけで、
「なぜ、あの子が(こんな目に)?」と思わずつぶやく父親に、
母である監督が答える言葉に
真の強さを見ました。
アダムは、主人公たちは、どうなっていくのか?!
現在進行中の物語を
こんな形で見るのって、やっぱすごいかもね。
★9/15(土)からBunkamuraル・シネマ、シネ・リーブル梅田で公開。ほか全国順次公開。
「わたしたちの宣戦布告」公式サイト