ちっとも前向きじゃない障害者って、
映画の主人公としてはかなりユニーク。
これがリアルなんだろうな。
「DON'T STOP!」72点★★★★
北海道・名寄に暮らす40代・車椅子男性の
ある旅路を追ったドキュメンタリー。
監督は「ちゅらさん」の小橋賢児氏です。
主人公のCAPは
26歳のとき事故にあい、
左手麻痺と下半身不随になった。
一人では排泄も困難な彼は
実家で母親を頼りに、20年も悶々と無気力に生きてきた。
そんな彼を「なんとかしたいと」と
彼の母親が行動を起こし
名寄に講演にきていた
世界を旅する行動派・高橋歩に声をかける。
「ルート66を、ハーレーで走りたかった」という
CAPの夢を聞いた高橋は
「じゃ、行くべ!」とCAPを連れて、
アメリカ横断の旅に出ることに。
高橋氏と仲間たち、
70歳を越えた母親となぜかその友人(笑)、
さらにCAPの娘(!)二人も同行し、
年齢も世代も、状況もバラバラな
男女の珍道中がはじまり――?!という流れ。
事故以来、過去の時間に生きてきた主人公は
気難しいところもあり、扱いにくい。
まあ「困難な人」、そうそう前向きになれないわな
というリアルでもあるんですが、
決して素直に感情移入できるタイプじゃないので、
最初はあまり気乗りしないんですよ(笑)
しかし、それゆえに単なる「美談」ではない
予測不可能なおもしろさがあり、
映像には
人間の素のままの善意や好意が映ってくるんですねえ。
道中で出会うある人々の善意には
さすがに涙が出たよ。
それに一緒に旅する、男連中のまあ気持ちのいいこと!
見ためいまどきの不良だし、ざっくりしてるんだけど
もし息子がいたら、
「こんなふうになれよ」と
言いたくなるかもしれないなア、なーんて。
そんな連中に支えられ、
CAPが何を手に入れるのか。
おそらく、あの言葉を言うための、旅路だったんだろうな。
★9/8(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開。
「DON'T STOP!」公式サイト