ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ヴィダル・サスーン

2012-05-24 23:29:12 | あ行

先日、5/9に亡くなったとのニュースが入り、
驚きました。

すごい貴重な映画になったなあと。

「ヴィダル・サスーン」70点★★★★


1950年~60年代に
サスーン・カットという新しいヘアスタイルを作り出した
ヴィダル・サスーン氏のドキュメンタリーです。

日本でヴィダル・サスーンっていうと
シャンプーのCMしか思い浮かばない感じですが、

実はすげえ人だったんだ、ということが
よくわかる映画です。


81歳の超元気バリバリな本人が登場し、
映像や写真とともに
けっこう“がっつり”自分の歴史を振り返り語るという、
非常にわかりやすい「人生話」なんですね。


ユダヤ人として第二次大戦を過ごし、
14歳で美容院に弟子入りし、

当時、おかまみたいな機械でセットする
崩さないヘアスタイル一辺倒だった業界を
「変革する!」使命に燃え

カットだけでOKという
斬新なあの「幾何学的なカット」を発明したこと。

弟子への厳しい姿勢や、
ほぼ独学ゆえの努力など、

先日、インタビューした安藤忠雄さんに
重なるところがあるなあ……と思って見ていたら、

なんと本人「大学に行けてたら建築家になりたかった」そうで
わお、当たってるじゃん!(笑)


あと、おもしろかったのは
ロンドンで成功したあと、アメリカに渡って
商業的な“ヴィダル・サスーン”展開をはじめるくだり。

ロンドン時代はファッション最前線、という感じで
今見てもカッコイイのに

この70年代のアメリカ時代で
いかにもショービス業界人、みたくなってしまう(笑)

はっきりいって、カッコワルイんですけど(笑)
そのへんもきちんと描いているのが
いいんでしょうね。

ただ、
登場するのはすべてサスーン信奉者たちで
もちろん彼への称賛ずくし。

それだけでここまでスマートにまとめられると
かえって引っ掛かりがないのも事実。

ジャーナリスティックにみると
彼と敵対する人や彼を読み解く第三者的視点があれば
なおその偉業が輝きそうだなあと思いましたが。

でも、充実の内容ですよ。

★5/26(土)から渋谷アップリンク、新宿武蔵野館、銀座テアトルシネマほか全国順次公開。

「ヴィダル・サスーン」公式サイト
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ミッドナイト・イン・パリ

2012-05-22 23:22:09 | ま行

ウディ・アレン、洒脱の真髄。

「ミッドナイト・イン・パリ」79点★★★★

************************

ハリウッドの売れっ子脚本家ギル(オーウェン・ウィルソン)は
婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムス)の両親と
休暇でパリにやってくる。

作家になることを夢見ているギルにとって
パリはいつか住みたい、憧れの街だ。

その夜、一人で路地をぶらついていたギルは
陽気な集団に誘われ、古い型の車に乗り込む。

そしてパーティー会場についたギルは
そこでフィッツジェラルドやヘミングウェイと名乗る青年たちに出会う。

そう、そこはなんと
古きよき、
1920年代のパリだったのだ――?!

************************


粋でロマンチックで、
クスクス笑えて皮肉もチクリ。

まさにウディ・アレンの真骨頂!のステキ映画。
GG賞&アカデミー賞で脚本賞受賞も納得です。

おそらくウディ・アレン好きは
名作「カイロ紫のバラ」(85年)を思い出すんじゃないかな。


冒頭、絵はがきみたいなパリの街並みショットが続き
「アイ・ラブ・パリ!」なベタさに笑ったけど、

ラストにちゃんとそれが繋がるんですねえ。
うまし。


古きよき時代に憧れる作家が、
1920年代のパリにタイムスリップし、
憧れの人々に会うわけですが、

「現状に満足していない人は、いつの時代も過去を美化し、憧れるのだ」という
懐古主義へのやんわりした皮肉をうまく含んでもいます。

そしてこれは、アレン流の
「多くの人を魅了するパリの秘密」の解釈であり、

実はみんなこういう体験してるんじゃないの?という
愉快な謎かけだと思いますね。

マリオン・コティアール、エイドリアン・ブロディ(ダリ役が似合いすぎ!笑)、
キャシー・ベイツ…と、役者も魅力的だし。

もちろん主役のオーウェン・ウィルソンも、
ヨーロッパの文化の香りと逆方向にありそうな
アメリカ男をルックスともにバッチリ演じてます。

この人、「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」(6/30公開)でも好演。

一見やさ男ふうで、しかし一度見たら忘れられない
ゴツイ鼻がポイントだよねえ。


★5/26(土)から新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国で公開。

「ミッドナイト・イン・パリ」公式サイト
コメント (6)
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メン・イン・ブラック3

2012-05-20 20:43:53 | ま行

まさか10年も経って、
このコンビに再会するとは思わなかったなー。

「メン・イン・ブラック3」3D版 69点★★★☆

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ときは現代。

米政府は隠しているが、
実はずいぶん前から地球には
こっそり大勢のエイリアンたちが暮らしていた。

そんなエイリアンたちの犯罪を取り締まる
メン・イン・ブラック(MIB)の
ベテラン捜査官“K”(トミー・リー・ジョーンズ)のもとに
極悪エイリアン・ボリスが刑務所から脱獄したとの知らせが届く。

ボリスは“K”に恨みを持っていた。

“K”の相棒“J”(ウィル・スミス)は
彼を守るために、事件の鍵を握る
1969年にタイムスリップをすることに。

そこで“J”が出会ったのは
若き日の“K”(ジョシュ・ブローリン)だった――。

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これはですねー
思ったよりも、面白かった。

試写後のみなさんの感想も、そんな様子でした。


1作めは1997年、2作めは2002年制作。
1作目から15年も経ってるってすげえ。

さすがに2作目とか忘れていたんで、
最初がいきなり復讐話から始まり
「話がわからん??」と思ったけど、
知られざる“K”の過去話なので、知らんのは当たり前でした。

なのでシリーズ未見でも、楽しめると思います。


ビルの61階から飛び降りて、過去にタイムジャンプするシーンは
3Dならではの体感が“怖オモシロイ”だし、

また行く先が1969年なので、
ファクトリーと言って工場ではなく、
ウォーホルが出てきたりする展開に笑った。


そのファクトリーを闊歩する
“トンガった”ファッションの人々を見て、
“J”が「みんな宇宙人かよ」て(笑)


アクションをゆるーく回避したのか
トミー・リー・ジョーンズの出番は少ないんですが、

彼の若き日をジョシュ・ブローリンが演じるというアイデアが
うまく効いていてましたね。

とにもかくにも
地球に実は宇宙人がたくさん生息しているんだ、という設定の妙が、
意外に色褪せてないことに、今更ながら感心。

そしてあの記憶を消しちゃう“ニューラライザー”も
映画史に残る名マシンだなあと、改めて。

本作では69年型の“ニューラライザー”が見られますよ(笑)


★5/25(金)から全国で公開

「メン・イン・ブラック3」公式サイト
コメント (2)
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バッド・ティーチャー

2012-05-19 21:15:11 | は行

キャメロン・ディアスは
いつだって全力投球!なところがエライよね。

「バッド・ティーチャー」56点★★☆


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アラサーの中学教師エリザベス(キャメロン・ディアス)は
美人でキュートで服装もセクシー。

だが決していい先生、いや善き人物とはいいがたい。

授業は超テキト-。同僚教師を見下しており、
頭にあるのは“結婚”だけ。

その甲斐あって(?)、まんまと寿退職するが、
運悪く、また学校に舞い戻るハメに。

そんなとき、中学校に
イケメンの代理教師(ジャスティン・ティンバーレイク)がやってきて――?!

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想像よりかなりベタなコメディでした。

スクールものって“いいネタ”の宝庫だし、
若さ、衝突、そして成長――とか、

あるいは
「スクール・オブ・ロック」的な何か?なんて期待すると
まるで裏切られるので注意(笑)

「ダメ教師と生徒との友情」「成長」的な予定調和は
裏切られてもいいけど、

ただただ、ひたすらに“バッドな教師”ってだけじゃ
ちょっと得るものがないなあ(失笑)

さらに話の軸が、
同僚女教師といまいちな相手(ごめーん、ジャスティン!)をめぐってのバトルって
あまりにも中身がなさすぎる。

ただキャメロン・ディアスの
そのルックスを生かし切ったワルっぷりはハンパなく、
(豊胸ネタはウケる。笑)

やっぱりキレイですごいなと。

車洗うシーンとか、
さすがのセクシーっぷり。

ただ
アラサーってよりアラフォー(もうすぐ40歳!)だし、
ちょっとこういう役には、無理が出てきている模様。

ポストC・ディアスはいないのかねえ。


★5/19(土)から全国で公開。

「バッド・ティーチャー」公式サイト
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ザ・マペッツ

2012-05-17 23:40:25 | さ行

マペット(人形)たちがフツーに人間と競演する、
愉快でハッピーなミュージカルです。


「ザ・マペッツ」70点★★★★


********************************

田舎町スモールタウンに住む
マペットのウォルター。

小さいころから
人間のゲイリー(ジェイソン・シーゲル)と共に育ち、
兄弟の間柄。

そして二人ともテレビの「マペット・ショー」が大好きだった。

そんなゲイリーにもカノジョができた。
それは優しくてキュートなメアリー(エイミー・アダムス)。

結婚間近の二人に誘われて、
ウォルターはLA旅行に行くことになる。

そして念願だった「マペット・ショー」の殿堂を訪ねると、
そこは、廃墟のごとくすたれていた――。

********************************

1976年にスタートした
テレビ番組「マペット・ショー」。

「セサミストリート」の人形も手がけた人物によって
生み出された番組で

「マペット・ショー」は見たことがないけど、
カエルのカーミットは知っている人も多いはず。

番長もそうでしたが。


だから、この映画世界をイメージするには
セサミストリートを思い浮かべると手っ取り早いと思うんですよ。


人と人形がごく自然に同居し、日常を送り、

その当たり前を前提に、笑いが起こる。


登場人物が、直に視聴者(観客)に話しかけたりするなど
昔テレビショーがよく使っていた
「作り物の世界」をキチンと認識したうえでの笑いが
おもしろいんですね。


さらに大物俳優らが
たんまりカメオ出演しているのも見どころ。

ウーピー・ゴールドバーグが
電話オペレーターをしたり

ジャック・ブラックが誘拐されたりする。

みんな「マペット・ショー」大好きで
そのお役に立てるなら!と集まったらしいです。

一番ウケたのは
フランス版ヴォーグで
アノ人が電話番をしてるところ!(笑)


どこか懐かしく、いい思い出に浸りながら
センスのいいパロディに大ウケしました。


★5/19(土)から公開。

「ザ・マペッツ」公式サイト
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