仕事に明け暮れていると、どうしてもニュースに疎くなってしまいます。そんな時にこそ、友人はありがたいと思います。昨日トゥーツ・シールマンスが22日に亡くなったというニュースを教えてくれました。伝説のジャズ・ハーモニカ奏者で、94歳でした。
僕はそれほどシールマンスについて詳しいわけではありませんが、1曲だけ、凄く好きな彼が演奏している曲があります。クインシー・ジョーンズのアルバム「愛のコリーダ」のB面、CDなら8曲目に収録されている「ヴェラス」という曲です。阿川泰子が歌うバージョンが、80年代にコピーの三田工業のCMで使われていたのをご存知の方も、いらっしゃると思います。
僕が受験勉強をしていた大昔、月曜から金曜までの深夜3時から3時45分まで、FM大阪で「FMステーション~マイ・サウンド・グラフィティ」という番組がオンエアされていました。ウイリアム・ジャクソンという名のアメリカンDJが、英語で紹介しながら、新譜アルバムをほぼ1枚流してくれていましたが、その番組のエンディング曲がこれです。この曲が流れると、もう朝の4時。FM放送も、長い1日を終える時間になります。
僕はそこで眠る日もありましたが、その後もしばらく受験勉強をしていたものです。今でもこのトゥーツ・シールマンスのハーモニカを聴くと、冬の深夜から早朝にかけての硬い空気、蛍光灯の蒼さと夜明けの白みかけた窓が、脳裏に鮮やかに甦ります。苦しくも良き時代でした。月並みですが、明けない夜はないと、新たに迎える1日を信じて疑わなかった自分を思い出します。
友人は、シールマンスを懐かしんで、高校生の時に見に行ったライブのDVDを見なおしたそうです。高校時代にシールマンスを観に行くだけあって、彼は音楽に詳しく、学生時代からヤマハのイベント関連でアルバイトをしながら大学へ進み、音楽会社の社長も務めました。その彼曰く、その懐かしいライブの当時でも既に、シールマンスはおじいちゃんだったと。(笑)
彼の弁を借りると、「セサミストリートのエンディングのインストテーマ曲が有名ですね。ベニーグッドマンの時代から、この人1人でジャズハーモニカのスタイルを確立してしまった偉人。ジョンレノンが“Love Me Do”でハーモニカ吹いていたのも、この人の影響だからね」。彼がこれを聴いてみてと推薦してくれたのがこれ。
「爺さんになっても、こんな風に音楽を楽しめたら良いなと憧れます。この曲は本人の作曲で、楽屋で口笛を吹いているのを聴いたステファン・グラッペリが良い曲だから発表するべきと勧めたらしい。ステファン・グラッペリも大好きな爺さんバイオリニストです。」との推薦でした。
音楽は1人で聴くものではなく、僕は友人たちと聴くものでした。レンタルもネットも情報もなかった時代、レコードを聴くには自分だけの経済力では足りませんでしたから。(笑)いろいろなことが便利になったからこそ、より多くの人と繋がることができ、そのためにも英語が出来ればネットワークが広がる!今の若者は、その逆を行っているような気がします・・・。