レンタルビデオもDVDも無かった、70年代から80年代初頭。映画好きの僕が、本で知った「世界の名作洋画」を観ようと思えば、TVで放送されるのを待つしかありませんでした。「風と共に去りぬ」や「ゴッドファーザー」「大脱走」「荒野の七人」がオンエアされる時は、数週間前から楽しみで仕方がありませんでした。放送は前編・後編の2週にまたがり、後編を待つのが苦痛でした。もしくはUHF放送局の深夜放送で、眠い目をこすりながら、B級西部劇や白黒の古い洋画を楽しみました。
しかし、テレビでいつ放送されるか分からない映画を待つよりも、自分から名画座を探した方が、1本でも多くの名作が楽しめました。1番よく行ったのが大阪・十三にあった「弥生座」。そして時には、天王寺やトビタ、新世界と言った物騒な街まで映画観たさに足を運びました。
「新世界国際劇場」は、今も残る名画座です。しかも今も手描き看板を掲げている劇場です。コロナウイルスで今年の春に閉館していた時は、こんなユニークは架空の作品の看板を掲げていました。「フェイクニュース」「決断~戒厳の長き夜」「コロナマン」の3本立て!(笑)
手描き看板を描くのは、手描き看板師の八条祥治さん。看板1枚を2日で仕上げるそうです。現在、日本広しと言えども、手描き看板はこの映画館だけになりました。
昔はあちこちにこういう映画館があり、阪急電車の車窓からは、梅田駅の手前の左右の線路沿いには、大きな映画の看板がズラリと並んでいました。今はそういう光景を見ることは叶いません。新世界国際では、毎週3本立ての映画が変わります。看板が新しくなるのは、毎週火曜日です。
劇場関係者の方々の努力を考えると、あまり言ってはいけないことですが、ここに行くならお昼間がオススメです。女性だけで行くのは避けた方が良いでしょう。正直、大阪の中でも治安の良くないエリアです。「どついたるねん」「王手」、「ビリケン」といった「新世界三部作」や、NHKの「ふたりっ子」舞台にもなり、イメージが改善されたものの、新世界は昔は隣に飛田遊郭があり、今は大阪きってのゲイタウンです。
そして、この新世界国際劇場の地下にある新世界国際地下劇場は、昔は名画座でしたが、今はポルノ映画館です。聞き慣れないかも知れませんが、「ハッテン場」としての顔を持っています。2つの劇場を、間違えて入らないで下さいね。
劇場の中は、このように誰もいなければ綺麗なものです。そこに集まる人たちのタイプによって、この映画館が「危ない場所」だと言われるのです。
昨今世の中の多くの人は、LGBTに対して非常に理解が深く、それが為に彼らに法的な配慮までも検討している。しかし、一方、大阪のこういう町がなぜ「危ない」「怖い」「治安が悪い」というイメージが今も持たれているのか?世界的な大都市ニューヨークにも怖い場所があるのか?そういう事も全て考え併せた上で、LGBT等に対しても考えるべきで、何も知らずにリベラル面して、LGBTに理解を示さない人を糾弾するのは慎んで欲しいと思う。僕は頭の固い年寄りで、子供たちが目にする時間帯に、そういう人たちを多数テレビに出すことにさえ反対です。
事実として、僕は大学時代にここに映画を純粋に観に行った時(どうしてもジョン・ウェインの西部劇特集をやっていて観たかった!)、横に座って来た男が股間に手を伸ばして来て憤慨しました。当時の僕は柔道2段。自分で軽く撃退しましたが、「何するんや?」とお仲間が集まって来た時は、物凄く不愉快な思いをしました。それから名画座には行かなくなりました。
もし、こういう率直な意見や事実を個人的なブログで書いて、あれこれ言われるようなら、それこそ言論の自由の侵害だと考えます。