円安の昨今、旅行会社もツアー料金の維持に四苦八苦しているようだ。
今回の「西安」ツアーでは、上海から乗り継ぐ国内便を週末の早朝及び、最終便に設定するなどして経費の圧縮を図ったようだ。
そのため、乗継ぎ時間が往路が4時間、復路は7時間半待ちというセッテングになった。
この待ち時間を空港で過ごすのは苦痛以外の何物でもないが、おまけに往路は、出発が2時間遅れとなったから、何をか言わんやである。
という訳で、これを慰めてくれたのが、藤沢氏の短編集「静かな木」と「霜の朝」の2冊であった。
「静かな木」は、家督を譲った老境の武士が、息子にふりかかった災難を家老の過去の不正を暴くことで切り抜けるという物語なのだが、同氏の遺筆となった作品である。
城の前に立つ欅の大木に自らをなぞらえて感慨にふける描写が素晴らしい。
「霜の朝」は、主として江戸庶民や商人の日常を克明に描いた短編11編を収容しているが、いずれも、私たちと等身大の主人公へ寄せる作者の暖かいまなざしを感じさせる佳作である。