きのね〈上〉 (新潮文庫) | |
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本屋でこれを手にして「へ~、歌舞伎の世界の小説か。読んでみよっと」と軽い気持ちで購入した上下二巻。
下巻を読んでだいぶ経った頃に、
あ、あれ?これってもしかしてモデルがいる?
遅い、遅すぎる。それに気がついて見返したら名前、芸名が一字~二字違いじゃないか…。
なぜ、気がつかない。
さて、昨日もタカラヅカの当日券で並んでいた2時間半、一心不乱に読んでおりました。
ネタバレしちゃうと、先日亡くなられた市川団十郎さんのお母さんから見た先代団十郎さんとの生活をモデルにした作品です。
当然、小説なのでフィクションありなはず。でも、大筋はやっぱり現実に即しているんだと思います。
歌舞伎の家に女中として入った光乃は献身的に坊ちゃんに尽くし、やがて入籍しないまま子をなして。
梨園といえば、そら恐ろしい世界。お嫁様も政治的な輿入れだったりしますから稀代の美男俳優の
奥方が女中あがりのひっつめ髪で化粧っ気もないような方だったらそらもういろいろありますわな。
戦前からの話なので、当時としては珍しくないんでしょうがこの坊ちゃんが癇癪持ちでねえ…。
ひどい、ひどすぎる位の目に合う光乃。だからこそ、最後の穏やかな日々の描写に心が動かされました。
歌舞伎の世界のしきたり、また戦前戦後の演芸の歴史としても読み応えがある本でした。
小説としても面白かったんですけど、“市川家”に興味が湧きましたので違う本も読んでみたいものです。