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午後、札幌狸小路6丁目にあるシアター・キノにて上映中の「ハンナ・アーレント」を観に出かける。年末に近くなる頃には例年、映画を観に出かけていたのだが、この度は今一つ観たいと思うものがないので、やめようかと思っていた。ところが、昨日の北海道新聞の夕刊に吉田徹(北大公共政策大学院教授)氏による「映画『ハンナ・アーレント』が問いかけるもの」と題された映画評が1ページの4分の1を占める割合で掲載されていて、心が動いた。また、オントナというミニコミ紙にもこの映画が紹介されていて、興味が倍増した。というわけで、さっそく出かけることにしたのだった。
この映画の主人公、ハンナ・アーレントは実在した女性哲学者だ。ドイツ系ユダヤ人として自身もナチスの強制収容所にとらえられていたが、脱出に成功し、アメリカへ亡命する。60年代初頭、元ナチス高官アドルフ・アイヒマンの裁判の傍聴記事を執筆し、「ザ・ニューヨーカー誌」に発表するが、大論争を巻き起こし、アーレントも激しいバッシングを受けることになった。
ラストのシーン、学生たちの前に立ち、毅然とした態度で、自身の論を展開する姿は一教授として、一人の女性として、一人の人間として素晴しかった。
彼女のユダヤ人としての立場から求められる答えはあっただろう。しかし、既成の考えによらず、薄いベールを剥がしていくように自身の考えを深めていった先の結論はアイヒマンがごく普通の市民であり、上層部の意見に忠実に従ったにすぎなく、道徳心を持たなかったからでもないこと。ユダヤ人に対する憎悪などからではなく、ただ合理的な「無思考」さ故だったということ。また、「無思考」さの傾向はナチに協力したユダヤ人の一部にもみられたと公表し、同朋からも非難されることになったのだ・・・・・・。真の悪とは何か、善とは何か、学ぶとは何か、勇気とは何かを考えさせられる映画だった。