「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

自殺行動と自傷行動とは? (2)

2011年10月11日 20時59分43秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 自殺に関して 不適切な言葉として、

 「自殺のそぶり」 「助けを求める叫び」 「操作的」 などがあります。

 いずれも 使ってほしくない言葉です。

1. 自殺のそぶり

 「そぶり」 という言葉で 行動の深刻さが 薄れてしまうだけでなく、

 本人の精神的苦痛も 軽く聞こえてしまいます。

 どんな意図的な自傷行動でも  (自殺企図であってもなくても)、

 深刻に受け止め、 放っておいてはいけません。

 「自殺のそぶり」 というのは、

 単に 人の気を引こうとしているだけという 意味になってしまいます。

 ほとんどの人は、 注意を引いたり 他の人に何かを伝えるために、

 自分を傷つけているのではありません。

2. 助けを求める叫び

 この言い回しも、

 他の人の注目を得るために 自殺行動をしているという 意味になってしまいます。

 他の原因を 基本的に無視し、 本人の精神的苦痛を 全く考慮していません。

 自分を傷つける行動の 深刻さを弱めてしまい、

 その行動によって 満たそうとしていることを 正しく評価できなくなります。

〔「境界性パーソナリティ障害 サバイバル・ガイド」(星和書店)より〕

(次の記事に続く)
 

 「境界に生きた心子」 にも、

 心子の自殺行動は 助けてほしいサインなのだと 書いています。

 心子は あまりにも苦しくて、 その苦しみを分かってほしくて、

 助けを求めていたのだと思います。

 この場合の言い回しは、 心子の深刻さを 弱めるものではありません。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自殺行動と自傷行動とは? (1)

2011年10月10日 19時09分27秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 自殺行動と自傷行動は、

 BPDの人に ごく一般的であると同時に、 最も深刻な問題でもあります。

 これらに関する いくつかの言葉を説明します。

1. 自殺企図

 意図的に自分を傷つけ、 死に至らしめる行動です。

 死を目的とする 明白な意志があります。

 しかし 死ぬ意図が あったかどうかの問題は 簡単ではありません。

 気分をよくするために (死ぬつもりはなく)  リストカットをした人が、

 「自殺企図者」 として扱われ、 入院させられてしまうことがあります。

 けれども 死ぬつもりがない人に 入院は役に立ちません。

 逆に 本当に死にたいと思っている人が  「自傷者」 と呼ばれて、

 真剣に受け止めてもらえない 場合もあります。

 必死で 病院に援助を求めている人を 退院させて、

 本当に自殺してしまう例もあります。

 自殺するために傷つけることと、 気分を紛らわせるための自傷は 全く別のことです。

 死ぬつもりが あったのかどうかを知るのは、 とても重要です。

2. 既遂自殺

 実際に自分を 殺す行為のことです。

 多くの場合、 自殺企図は 死に至ることはありません。

3. 意図的な自傷

 死ぬつもりがなくて 自分を傷つけることは、 自殺行動ではありません。

 故意にとる行動なので、  「意図的な自傷」 という 言葉が適していると思います。

4. 両面性のある自殺企図

 自分を傷つけても、

 死にたいとまで考えているかどうか 定かでないこともあるでしょう。

 死にたいと死にたくないの 両方の方向へ、

 押したり引いたりしている状態を  「両面性」 と言います。

 自分を傷つけるとき 死に対する両面性があったら、

 それを  「両面性のある自殺企図」 と呼びます。

5. 自殺念慮

 故意に死にたいと 考えることであり、 自殺についても考えています。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDと併存する精神障害 (5)

2011年10月09日 19時15分33秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

(3) パニック障害

 パニック障害は、 突発的で 繰り返し起こるパニック発作で、

 不安と死や、自制心を失うような 激しい恐怖が伴います。

 人間の体は 危険に直面すると (現実でも想像上でも)、

 闘うか逃げるか すばやく準備します。

 「闘争あるいは逃走」 反応と呼ばれ、 基本的には 生存のための仕組みです。

 鼓動が早くなる、 汗をかく、 視野狭窄 (ひとつのことに集中する),

 筋肉の硬直, 速い呼吸などです。

 しかしこの反応は 時々故障します。

 ストレスがあったり 調子が悪いと、

 危険な兆候が起きてないのに  「闘争あるいは逃走」 反応をしてしまいます。

 この 「パニック発作」 は ショッキングなもので、

 心臓発作に襲われた, 気が違ってしまった,

 気絶しそうだという 気になったりします。

 でも実際は、 ストレスがたまって、 不安を恐れているということなのです。

 これが度重なると、 不安でもない些細なことで、

 恐怖や覚醒の 連鎖反応を起こしてしまいます。

 パニック発作は予測不可能で、 非常に恐いので、

 発作に結びつく状況から 逃れようとする人もいます。

 外出を避けることもあり、 家の外に 一歩も出ない人もいます (広場恐怖症)。

 BPDの人も 感情コントロールが不能で、

 予測不可能だと感じているかもしれません。

 それがきっかけで  ストレスがたまり、日常的なストレスの 解消が難しくなります。

 その結果 「闘争あるいは逃走」 反応が故障し、

 パニック発作が起きることもあるでしょう。

 発作が一度起きると、 次の発作への 心配や恐怖を感じ、

 回避行動をする可能性が高まります。

 最初は 回避も効果があるかもしれませんが、

 最終的には長引いて 悪い結果をもたらしてしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDと併存する精神障害 (4)

2011年10月08日 20時24分09秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

5. 不安障害

 BPDによく見られる 不安障害は、

 社会不安障害, PTSD, パニック障害です。

 BPDの人が 併発する割合は、 順に、

 4分の1~2分の1, 約2分の1, 3分の2です。

(1) 社会不安障害

 社会的場面で 否定的に評価されることを 激しく恐れるのが、 社会不安障害です。

 BPDはストレスが多く、 困難で虐待的な 対人関係を受け、

 周りの人に対して 不安を抱き、 考えや感情の表現を 躊躇することがあります。

 その結果、 人間関係に 全く自信が持てなくなります。

 幼少期に非承認的環境を 経験していることもあり、

 自分を主張したり、 人を信頼することもできなくなり、

 社会的な場面にいる不安は 増していくばかりでしょう。


(2) PTSD

 幼少期に 虐待を受けた人は、

 BPDかPTSD、 または 両方になる可能性があります。

 BPDの人が トラウマを経験すると、 回避など 不健康な対応をしてしまうため、

 PTSDになる可能性は 高いと思われます。

 レイプや悲惨な事故などに遭うと、 その後遺症と闘うのに苦労し、

 物質使用や不適切な行動によって 苦痛を和らげようとします。

 しかし苦痛の回避は 一時的な効果しかなく、

 後遺症は長引いて PTSDに繋がり、 悪化させてしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDと併存する精神障害 (3)

2011年10月07日 19時22分13秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

3. うつ病

 うつ病は BPDの人に 最もよく見られる 障害のひとつで、

 41~87%が うつ病に苦しんでいるという 研究もあります。

 BPDの人は 否定的な感情を 激しく経験して、

 対処するすべがないと 思ってしまいます。

 人との諍いや 激しい人間関係が 果てしなく続くので、

 すっかり孤立し、 寂しい思いをするでしょう。

 BPDに付随する問題は、 うつ病に繋がりうる 充分な理由になるでしょう。

 うつ病がBPDの副作用ならば、 BPDから回復すれば うつ病も緩和されます。


4. 双極性障害 (躁うつ病)

 BPDの人の約10%が 双極性障害を抱えています。

 双極性障害には 幾つかのタイプがあり、

 感情の大きな変動が 長く続くタイプ

 (例えば、うつや躁の状態が 2週間かそれ以上続く) や、

 気分がもっと早く 切り替わるタイプもあります。

 BPDの気分変動と似ているので、 BPDと誤診されやすいのです。

 けれども両者には 決定的な違いがあります。

 双極性障害は数日間 気分が高まったあとに、 うつへと急降下します。

 でもBPDの人は ほんの数分、 もしくは数時間足らずで

 気持ちが次から次へと 切り替わっていきます。

 また、 双極性障害と診断したがる医者もいます。

 患者への偏見が 小さくなると思っているのです。

 しかし 診断が間違っていれば、

 患者は何に苦しんでいるのか 分からなくなりますし、

 治療方針も適切でなくなってしまいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDと併存する精神障害 (2)

2011年10月06日 20時20分47秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

2. 摂食障害

 BPDの人の50%に 摂食障害が見られます。

 「神経性無食症」 (極端な食事制限で、 命に関わるほど体重減少する) と、

 「神経性過食症」 (食べすぎて下剤を乱用したり、 過度の運動や嘔吐をする) が

 あります。

 過食と嘔吐の両方が、 精神的苦痛を和らげる手段になります。

 食べるということは、 人を落ち着かせる 最も一般的な方法のひとつです。

 糖分や油分の多い 食べ物を摂取すると、

 脳の快感中枢が働き、 ドーパミンの放出を引き起こします。

 また 嘔吐のあとには、 緊張の緩和や 安らぎを経験します。

 しかし 同じ感情を和らげるためには、

 次はもっと 沢山食べなければならなくなります。

 それに 嘔吐はとても 危険な行為ですし、 重大な健康問題にも繋がります。

 さらに、 嘔吐しても

 摂取したカロリーの3分の1しか 取り出せないという人もいます。

 過食と嘔吐の悪循環が、 生活に悪影響を及ぼします。

 BPDの人は幼少期に、

 容姿や人格を否定される 感情的虐待を受けていることが 少なくありません。

 そのため、 痩せているのが良いとされる 現代社会で、

 自分の身体に不満を感じ、 体形や体重を変えようとする 劇的な挑戦になり得ます。

 それによって 体を悪くすることができるので、

 自己嫌悪の表現にもなるかもしれません。

 BPDの人は 自分をコントロールできないと 感じているので、

 生活の一部でも コントロールしたいと思うでしょう。

 食事制限していると、

 自分は強くて、 人生をコントロールしているように 感じるのです。

 でも摂食障害は 自分をコントロールできなくなるので、

 このコントロール感は錯覚です。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDと併存する精神障害 (1)

2011年10月05日 20時46分12秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 BPDの人のほとんどが、 少なくとももうひとつの 精神障害を持っています。

1. 物質(アルコールや薬物など)使用

 BPDの人の3分の2が 物質使用に問題がある、 という調査結果が出ています。

 また、 物質乱用している人の 約4分の1が、 BPDの基準を満たしています。

 物質は感情的な苦痛から 逃れるのに役立ちます。

 しかし苦痛を回避しても、

 そもそも 感情を引き起こした問題に 対処できたわけではありません。

 問題を直視して 解決することを妨げ、 そのあいだ問題は増え続け、

 回避や逃避を繰り返すという 悪循環に巻き込まれてしまうのです。

 BPDの人は 他の人より感情が強烈なので、

 対処するための より強い方法が必要になり、 物質を乱用してしまいます。

 ただしその効果は、 あくまでも 「一時的」 です。

 しかも使用前より 状態を悪くしてしまいます。

 使用しているうちに  「耐性」 ができ、 もっと多量の物質が 必要になります。

 また 「禁断症状」 もあります。

 身体が物質を強く要求し、

 不快感 (動揺, 不安, 発汗, 吐き気など) を覚えます。

 そのために物質を使用し、 生活が物質に 支配されてしまうのです。

 激しい感情的な苦しみがあって、 他の対処法がないなら、

 一時的にでも 苦痛から解放されたいという衝動は、 とても強烈なものです。

 例え将来が悪くなるとしても、 わらをもつかむ思いで 求めてしまうのでしょう。

 けれども幸いなことに、 弁証法的行動療法 (DBT) などは、

 BPDと物質使用障害の 両方に治療効果があります。

 感情的苦痛に対処するため、 物質よりもっと 効果的な方法を教えてくれます。

 (弁証法的行動療法については後述します。)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

変化するBPDの症状 (2)

2011年10月04日 20時25分16秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 認知や対人関係の 問題の変化は、 行動面の変化と 感情面の変化の中間です。

 かなり早く 変化するものもあれば、

 長引いて パーソナリティの一部になっているものもあります。

 認知面の症状で 最も変化したのは、 被害妄想観念でした。

 しかし、 「私はひどい人間だ」 とか  「誰にも好かれない」 といった、

 自分や世界に対する 否定的な認知や、 解離症状は多くが変わりませんでした。

 対人関係の症状で 最も早く変化したのは、 衝動的な行動です。

 人との深刻な諍い, 不安定で激しい人間関係,

 人に極端な依存をする 傾向なども含まれます。

 これらの症状は 生活の中で 多くの問題を起こしますが、

 それが早く変化するのは 望ましいことです。

 一方、 見捨てられる恐れや、 孤独に耐えられないといった 感情的なものは、

 長引いてしまう傾向があります。
 

 これらの症状は、 全て互いに繋がっていて 相互関係にあります。

 例えば、 大切な人の 自傷行為や自殺行動を見れば、

 動揺して怒鳴ったり、 しまいには離れたくなってしまうでしょう。

 従って、 自分を傷つけない 対処法を学めば、 対人関係はもっと良くなるはずです。

 対人関係の質が BPDの症状や経過に 大きな影響を与えると、

 考える研究者もいます。

 安定した 協力的な対人関係を築けば、 より早く 快方へ向かうということです。

 BPDの人は だんだん対人関係から 離脱したくなる傾向がありますが、

 人間は社会的な生き物であり、

 周りからのサポートや 社会との接触で 成長していくものです。

 対人関係を避けるのではなく、

 健全な対人関係を築いていくことが、 回復に最も役立つのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

変化するBPDの症状 (1)

2011年10月03日 19時29分49秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 BPDの症状は 5つの調整不全に分類されます。

 感情, 人間関係, 認知, アイデンティティ, 行動の調整不全です。

 感情的なこと自体は 悪いことではありません。

 問題なのは、 自分の感情に対処するため、

 薬物を使ったり 自分を傷つけたりすることです。

 感情的な気質がある場合、 それは症状というより

 パーソナリティの一部と考えられるので、 大きく変化することはないでしょう。

 それに対して、 自殺企図, 薬物, 自傷などの行動は 変化していきます。

 これらの行動は性格ではなく、 一時的な問題対処に過ぎないからです。

 ザナリニらの調査では、 80%の人が 行動上の問題を持っていましたが、

 6年後には20%になったそうです。

 薬物使用も 50%から25%に減りました。

 一方、 感情的な症状は6年経っても それほど変化しませんでした。

 感情は苦痛になることもありますが、 人生を狂わせるとは限りません。

 感情的な問題が変わらないからといって、

 自分自身や治療が悪いのだと 考えないでください。

 衝動的な感情を抑制したり、 人間関係を上手に維持できるようなれば、

 全てにおいて もっと良い気分でいられるようになると考えられます。

 人間は生きている限り、 誰しもが 否定的な感情を持つものです。

 生まれつき 人より感情が激しい人もいます。

 従って、 特定のことを感じないようにしたり、

 感情を避けることに エネルギーを費やすより、

 自分の感情や問題に いかに対処するかを学ぶほうが、 より得るものがあるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDの回復の 妨げになる要因 (3)

2011年09月30日 20時00分33秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

4. ほかのパーソナリティ障害

 回避性, 依存性, 強迫性パーソナリティ障害を あわせ持っていると、

 BPDからの回復が遅くなるようです。

 (これら3つのパーソナリティ障害を

 「不安恐怖パーソナリティ障害」 といいます。)

 それぞれのパーソナリティ障害の内面には、

 抑制された 起伏の激しい感情が潜んでいる、 と提言する人もいます。

 激しい感情を抑えている人は、 新しい展開に警戒したり 不安になったりします。

 そして 恥じ入ったり、 人見知りをします。

 回復には 多くのエネルギーが必要なので、

 進んで援助を求め、 自分のことに素直になったほうが 回復が楽になります。

 内気で心配性の人にとって、

 回復への道を 進もうと決心して 立ち向かっていくのは大変なことです。

 積極的な人のほうが、 BPDを治すには 有利といえるでしょう。

 内気な人は より自分を 駆り立てる必要があります。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

 普段の心子は、 すこぶる社交的, 行動的, 自立的な面を持っていましたが、

 落ち込んだり傷つくと、 非常に回避的, 依存的になったりしました。

 いつも回避, 依存していたわけではないので、

 不安恐怖パーソナリティ障害では なかったのではないかと思います。

 また心子は 病院が好きで、 治療に後ろ向きではありませんでしたが、

 BPDに特化した治療は 受けていませんでした。

 当時はまだ 治療も不備なものでしたが、

 治療法が確立していれば、 回復に向かったのだろうかと 思いを巡らせます。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDの回復の 妨げになる要因 (2)

2011年09月29日 20時56分12秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

3. 気分障害と不安障害

 特に大うつ病やパニック障害も BPDの回復を難しくします。

 感情的に傷つきやすいか、 感情を抑制するのが 困難な可能性があります。

 また、 PTSDと同じように 回避の問題もあります。

 パニック障害の人は、 パニックを起こす恐れのある 場所には近づきません。

 感情を避けたり、 感じないようにすれば、 かえって状況を悪くするだけです。

 避けようとすればするほど、 人生はより恐ろしくなってしまうでしょう。

 また、 落ち込むと 他人との関係を断ち切ったり、 自ら孤立するようになります。

 基本的に 積極的な行動を回避しますが、 もっと前向きになるべきなのです。

 回避によって 感情的苦痛に火がつき、

 回復に役立つはずのことが できなくなってしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

 心子も うつ病を持っていました。

 心子は 僕との関係で傷つくと、 僕から離れていき、

 もう誰も信じないで 聖書だけ握って 独りで生きていく、 と

 何回も言ったことがあります。

 それは うつ病のせいだったのでしょうか。

 誰よりも愛情を欲している心子が、 人との関わりを断って、

 独りだけで生きていけるはずもありません。

 そんなことをすれば 確かに、

 人の支えが大切である BPDの回復を妨げるでしょう。

 でも心子は 時間さえ経てば、 再び何事もなかったかのように、

 僕の所へ戻ってきて、 楽しい時を過ごすのでした。

(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDの回復の 妨げになる要因 (1)

2011年09月28日 21時41分50秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 抱えている問題が多いほど、 それぞれの問題に取り組むことが 難しくなります。

 BPDの人が 別の精神障害も持っていると、

 BPDの治りが遅く 治療も複雑になります。

1. 物質使用障害

 BPDの回復を妨げる 最も大きな要因は 物質使用です。

 これは  「乱用」 と 「依存」 に分けられます。

 乱用では、 アルコールや薬物の使用によって 生活が困難になります。

 依存では、 アルコールや薬物のためなら 何でもしてしまい、

 次第に使用料が 増えてくることがあります。

 物質使用障害を伴っている人は 4倍近い確率で、 BPDが治りにくいと言われます。

 物質使用に伴う問題は、 BPDの問題と重なります。

 例えば、 危険で無謀な行動を起こしたり、

 より感情的になったり、 人間関係に問題が生じたりします。

 BPDの人は こういう問題を避けようとして 物質を利用し、

 結果的に 同じ問題を悪化させるだけなのです。

2. 心的外傷後ストレス障害

 BPDの人の多くが、 幼児虐待のような トラウマ的な出来事を経験しています。

 同じきっかけで PTSDを持つ可能性も 高いといえます。

 PTSDとBPDの 両方を持っているとしたら、

 成長過程で受けたストレスは より深刻で、

 BPDから回復する 妨げになると言えます。

 また、 PTSDに付随する問題は BPDの問題と似ています。

 例えば、 PTSDにも 「感情調整不全」 があり、

 もし 両方の障害を持っていれば、 二倍の感情調整不全が見込まれるのです。

 「回避」 の問題もあります。

 PTSDの人は トラウマを連想させるものを回避しようとし、

 BPDの人も 感情に対処するため回避します。

 BPDの回復には 問題に取り組むことが大切なので、

 二倍の回避が 回復をより困難にさせるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
(次の記事に続く)
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

境界性パーソナリティ障害は治るのか

2011年09月24日 21時41分56秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 人間にとって最も恐ろしいのは、 予測不可能なことです。

 BPDが どのくらい続くのか分からない、 治るのかどうか分からない。

 障害がどうなっていくのかが分かると、

 恐怖感が軽減され、 事実を受け止めやすくなります。

 これからのことを計画したり、 うまく対処できるように 準備することもできます。

 BPDは治らないものだと 思われていました。

 「パーソナリティ障害」 と 呼ばれている所以で、

 パーソナリティが生涯変わらないとしたら、

 パーソナリティ障害も同じだと 考えられていたのです。

 しかし今では、 パーソナリティ障害は不治のものではないと 分かっています。

 また、 ある症状は長引いても、

 他の症状は 良くなったり悪くなったり、 消えてしまうことさえあります。

 変化する症状と 変化しない症状が分かっていれば、 回復への希望が持てるでしょう。

 BPDの入院患者が、 6年後には 障害の基準を満たさなくなる、

 つまり 「寛解状態」 になるという 多くの証拠があります。

(5つ以上満たしていた基準が 4つ以下になる)

 メアリー・ザナリニらの研究では、

 2年後には35%が、 4年後には49%が、 6年後には69%が、

 6年以上では74%の入院患者が 基準を満たさなくなったのです。

 さらに、 基準以下になった人の94%は、 再発することはありませんでした。

 治療法は様々で、 全員が6年間ずっと 治療を続けていたわけではありません。

 最新の特別な 治療を受けていなくても、 BPDが良くなっていったのです。

 別の調査では、 BPDの人の半分以上が 2年以内に基準を満たさなくなりました。

 25%以上の人が、 1年以上でほぼ症状がなくなった、

 つまり ほぼ完全に回復した という報告もあります。

 10%の人は6ヶ月以内に 基準を満たさなくなっています。

 ただし、 BPD以外の障害がある場合は 治りにくいのです。

 BPDは 他の様々な障害を 頻繁に併発しやすいのも事実です。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

BPDが長引く原因

2011年09月22日 19時58分59秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 BPDがなぜ長引くのかは 明らかになっていませんが、 ひとつの要因として、 

 「混沌とした、 または有害な 人生の出来事」 が考えられます。

 BPDの人は、 耐えきれないくらい沢山の 不愉快でストレスの多い出来事や、

 困難な問題に直面しています。

 マーシャ・リネハンはこの傾向を、  「止むことのない危険」 と呼んでいます。

 次々と災難が起こり、 立ち直る暇もなく、 また次の惨事に出くわすのです。

 恐らく 他人との衝突が、 最も一般的な ストレス要因だと思います。

 拒否されたり、 失敗をしたり、 ひとりぼっちになってしまうことが、

 精神的苦痛の引き金になる という研究結果もあります。

 それらの出来事が 絶えず起こると、 イライラしたり 傷つきやすくなったりして、

 人生に立ち向かう精神力が 欠けてしまいます。

 その穴を埋めるために、

 自傷, 薬物使用, 自殺企図という行為に 走ってしまうのです。

 BPDが長引く もうひとつの要因は、

 BPDの人の危険な行動も、 短期間なら 有効であるという事実です。

 BPDの 「行動調節不全」 は、

 暴飲, 危険なセックス, アルコール, 無謀な運転などがあります。

 一時的にはこういう行動で、 感情を和らげることができるのです。

 これを 「強化」 といい、

 似たような状況で また同じことをするようになってしまいます。

 何か不愉快なことを 取り去る行動によって、 「負の強化」 として効果が表れます。

 または、 そういう行動をすることで 何らかの快感が得られ、

 「正の強化」 としての 効果が見られます。

 行動の 「強化」 は 悪循環を招きます。

 でも幸い、 こういう行動を取らなくても、

 別の手段を探して、 もっと調子がよくなり、 強化を止めることができるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛着に関する問題点

2011年09月16日 20時49分58秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 もうひとつの環境的問題は  「愛着」、

 つまり、 他の人と感情的な結びつきが うまくいかないことです。

 健全な愛着を持つことは、 良いメンタルヘルスや 人間関係に不可欠です。

 BPDを持っている場合、 非承認的人間関係が多いと、

 安定した愛着を作ることが 難しくなります。

 あるBPDの人は 自分の親を、 無関心, 虐待的, 支配的だと表現したそうです。

 親との関係が 困難な子供は、

 不安定な愛着を抱いてしまい、 母親に対して 矛盾する反応を示します。

 母親と触れ合うのを嫌がったり、 逆に近づいたりすることを、

 交互に繰り返します。

 このような子供は、

 ぼんやりしているように見えたり、 混乱や不安になりやすいのです。

 このタイプの愛着は、 虐待を受けた子供で よく見られます。

 不安定な愛着は BPDによく似ていて、

 身近な人に対しての気持ちが 行ったり来たりします。

 養育者との経験が、 BPDの原因になっている 場合があるということです。

〔「境界性パーソナリティ障害 サバイバル・ガイド」(星和書店)より〕
 

 心子も母親とは、 密着したり 憎悪していたようです。

 生前 僕に対しては、 母親とは 価値観も感性も異なると言って、

 いつも母親を罵倒する 話をしていました。

 ところが 心子が旅立ったあと、 母親や周りの人たちからの 話を聞くと、

 心子は母親と一緒に よく旅行へ行ったり、

 同じベッドで母娘 寝たりしていたといいます。

 しかし 僕に対するのと同様に、 僅かなきっかけで激怒し、

 ののしって母親を追い返したり、

 その直後に 追いすがって呼び戻したりしたそうです。

 愛され方を知らず、 愛し方も分からなかったのです。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする