臨床の場では BPの周りの人々が、 感情的に消耗して相談に来ます。
様々な方法で努力しても 事態が好転せず、 万策つきた疲弊状態で 訪れるのです。
「相手が病気なのか、自分が悪いのか分からない」 「どう関わればいいのか」 と、
正に暗闇の中 手探りでもがいているのです。
BPDの成因は、 「感情的脆弱性」 と 「自己無効化」 が影響している
「生物社会論」 です。
生物学的な感情調整不全の素因と、
感情的な応答を 「認めてもらえない」 (非承認的な) 環境という 誘因が、
相互に作用しあうというものです。
従って、 「認めること」 (有効化や根本的受容) が、
二人の関係を穏やかにする 重要かつ必須の条件になります。
「BPの行動には 同意できなくても、 そこに至る感情や思考は 理解できる」
という姿勢です。
BPは、 悲痛な感情を避けるため 次々と衝動的な 逃避行動をとる一方、
喪失を繰り返す 悲哀の感情を、 自らシャットダウンしてしまいます。
BPの不可解な行動が、 「病的な症状」 としてではなく、
「BPがどう感じ、 どう体験しているか」 として理解し、
それを受容することで、 間接的に BPの行動が変化してくるのです。
社会全体が 「承認的」 になることが、
BPの苦しみを 和らげるだけでなく、
BPとの破壊的な人間関係から 解放してくれるかもしれません。
〈荒井秀樹〉
〔「境界性パーソナリティ障害をもつ人と良い関係を築くコツ」
(星和書店) 〈シャーリ・Y・マニング著〉 より〕
[星和書店の許可のうえ掲載]