(前の記事からの続き)
自傷行為の治療では、 ふたつの臨床的課題があります。
自傷行為を減らすことと、 入院の必要性の判断を含む 危険性の評価です。
○ 自傷行為を減らすこと
患者の自傷行為の 主観的な体験を 包括的に評価し、 患者に伝えることで、
自傷行為を減らすために 使うことができます。
その際、 自殺関連行動の次の側面が 評価されます。
1. 自傷行為のプラスの作用
自傷行為は 人を操作したり 関心を引こうとするのではなく、
感情統制, 自己懲罰, 自己確認といった プラスの作用を理解しいきます。
2. 過去の自殺関連行動の意図
過去の自殺関連行動の意図によって、 死ぬ意図の有無が 判断されます。
この意図は、 客観的状況からだけでなく、
患者の主観的な報告によって 確認していかなければなりません。
3. 自傷行為の原因となる 認知と認知過程
患者は 自傷行為に良い点があるという、 歪んだ信念を持っています。
辛い精神状態に対処するのは 自傷行為しかないといったものです。
それは認知的再構成によって 修正することができます。
臨床家と患者は協力して、 感情の高まりが どのようにして
外的なでき事に 歪んだ認知をもたらすか、 理解していきます。
4. 自傷行為の影響
自傷行為を強化するような 影響を知り、
強化のパターンを変えて、 適切な行動を促していきます。
患者が意図した影響と 意図しなかった影響を区別し、
対人関係を改善する契機となります。
弁証法的行動療法や認知行動療法では、
自傷行為の衝動や 歪んだ認知の 修正を試みます。
弁証法的行動療法では、
患者の感情や経験を 有効なものと認める 「有効化」 と、
価値判断をしない介入によって、
感情統制機能の強化と 自己非難の緩和も 目標とされます。
(次の記事に続く)
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より