「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

初めてのオークション被害 (1)

2009年03月31日 14時27分32秒 | Weblog
 
 ヤフーオークションで “被害” に遭いました。

 代金をだまし取られたり したわけではないんですが、

 これまで 300件近い取引をしてきて、 初めての不当なオークションでした。

 2枚出品されていた 映画のチケットを、 1枚のみ707円で落札しました。

 最高額入札者は2200円で 1枚落札し、

 次点の人は2100円で ペアでのみ落札希望でした。

 こういう場合 次点の人が 2枚入手できないため、

 3番目の僕が 落札することになります。

 ところが 出品者からは、

 2100円まで “詰めて” もらえるかと、 落札額の3倍を求められました。

 「詰める」 という言葉が 全く分かりませんが、

 確かに商品説明の欄には 次のような文言がありました。

 「 落札者間の価格は 不公平感をなくす為

 入札単位で 高い方へおつめしますので ご了承下さい」

 意味不明でしたが、 落札額が変わるなどという 非常識なことは

 想像だにできないので、 大した意味はないだろうと 思っていました。

 通常なら 事前に質問するのですが、

 この日は事情で 質問する時間がなかったのです。

 僕は707円で 正規に落札しているわけですから、

 それ以上求められる謂われは どこにもありません。

 ルール違反ではないか と尋ねると、

 出品者は それ自体は認めましたが、 もう一人の落札者との 不公平を述べます。

 でも それはヤフーの現行ルールだから 止むを得ず、

 個人が勝手に 変えてしまってはいけません。

 もし ルールに不備があるとすれば ヤフーに言うべきで、

 落札者に損失を 与えてはならないのです。

 おまけに 「詰める」 などというのは 日本語になっていません。

 また出品者は、 派遣切りに遭って 死活問題なので、

 そんな安くは 絶対に売れないと 勝手なことを言います。

 しかし それがオークションというもので、

 出品者は 落札額で取引する義務があります。

 いくらお金がなくても 泥棒してはいけないのと同じように、

 ルールを破ってはいけないのです。

 2100円払うことはできないと 僕が答えると、 出品者は取引を拒否し、

 チケットは別のオークションとして 再出品され、 他の人が落札しました。

 規則違反をしていながら 頭ごなしで、 礼儀も知らず、

 払えない方が悪いと 言わんばかりです。

 せめて 誠意ある謝罪を求めましたが、 返答がありません。

(次の記事に続く)
 
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心子の 旅立ちの理由

2009年03月30日 19時06分41秒 | 心子、もろもろ
 
 ランディ・クリーガーさんの本によると、 ボーダーの原因は

 今アメリカの 最先端の研究では、

 生育歴の影響よりも 先天的な要素のほうが 多くを占めると言われています。

 生まれついての 生物学的な要因は、 誰のせいでもありません。

 また心子は、 出産時に 足に障害を受け、

 親が抱くことを 医者から禁じられたため、

 親のスキンシップ (=赤ん坊にとっての 根源的な愛情) を

 得られなかったことが、

 その後の ボーダーの起因になったのだろうと思います。

 子どもは 親から無条件に抱かれ 愛されることによって、

 自分は この世に存在していいんだ,

 自分は大切な 存在なんだということを、 無意識のうちに育んでいきます。

 生後1年間の 赤ん坊にとって 最も不可欠な時期に、

 適切な愛情が 与えられなかったというのは、

 致命的な 欠損だったのではないでしょうか。

 以上のように、 心子の 心の障害の原因は 誰の責任でもありません。

 そして、 心子が旅立っていった理由。

 まず、 亡くなる3~4ヶ月前から 心身の症状が悪くなり、

 働くこともままならず、 希望をなくしかけていました。

 それから、 心子は主治医の先生に

 陽性転移 (治療者に恋愛感情を抱く) を起こし、

 当然やむを得ないことながら、 それを 先生に受け入れられられず、

 大きな苦しみになりました。

 旅立ちの前日には、 バイトを辞めたいと 支店長に電話し、

 支店長から 長時間にわたって “叱咤激励” されました。

 あるいは、 それが一番直接の 引き金になったかもしれません。

 そして今回 あらたに分かった新事実は、

 数日前に 心子は清志に求婚し、 清志に辞退されていたということです。

( 求婚自体は突発的なことで、

 恐らく 強い決意によるものではなかったでしょう。

 清志は 心子から逃げたのだと 言っていましたが。 )

 それらは確かに、 全て旅立ちの  「きっかけ」 にはなったでしょう。

 でも本当の 「原因」 は、 彼女の 心の中の障害です。

 誰も 自分を責める 必要はないのです。

 清志が この先もずっと 重荷を背負っていくことを、

 心子も決して 望んではいないでしょう。

 心子は 我々が平安に生きていくことを 願っているはずです。

 僕はそれを 清志に伝えたかったのでした。
 
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清志からメール (2)

2009年03月29日 20時32分08秒 | 心子、もろもろ
 
(前の記事からの続き)

 清志のメールは、 最近 「境界に生きた心子」 の存在を知り、

 かなり動揺している という書き出しでした。

 そして、 心子が自殺した 大きな一因は自分にあると、

 したためられていたのです。

 心子のお母さんも 自分をずっと憎んでいるだろうと。

 また、 心子は旅立つ数日前、 清志に電話で 求婚をしたそうです。

 初めて知った 新事実でしたが、

 その時々の想いで 刹那的な言動をする心子ですから、

 そのこと自体は 僕は驚きませんでした。

 清志は 心子の申し出を 受けられなかったそうで、

 それも心子を死に追いやったと 自責していました。

 僕は彼に どうしても伝えたいと思いました。

 心子の死は 全く清志のせいではないということ,

 彼女のお母さんは 彼を全然 恨んでなどいないということ,

 また拙著のことを知らせず 申し訳なかったということを。

 清志が長い責め苦から 抜け出してほしく、

 どうか 自分を責めないでと、 僕はメールのやり取りで 伝えました。

 境界性パーソナリティ障害という心の病が 悲運の原因であり、

 それは 誰のせいでもないのです。

 けれども彼は、 BPDの知識で 心子の内面を 説明するのを嫌い、

 自分の想いを 変えることはありませんでした。

 とても残念なことでしたが、 彼の心を癒す 助けにはなりませんでした。

 心子も 悲しんでいるのではないかと……。

 しかしこれも 致し方のないことでしょう。

 物事に対する 向き合い方が、 人によって異なるのは やむを得ません。

 でも、 二度と 袖振り合うこともないだろうと 思っていた清志と、

 言葉を交わす 機会を得たことは、 とても良かったと 思っています。

 ネットを通して 心子が贈ってくれたのかな とも思います。
 
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清志からメール! (1)

2009年03月28日 21時16分24秒 | 心子、もろもろ
 
 非常に驚いたことがありました。

 知り合いのYさんから 久方ぶりにメールがあったのですが、

 そこに ある人物からの 転送メールがコピーされていました。

 転送メールの 書き主の名前を見て、 僕はびっくりしました。

 「境界に生きた心子」 に出てくる、 心子のもう一人の “恋人”、

 清志でした。

( 本名はもちろん違います。 )

 清志が Yさんのブログを見て、Yさんが僕と 交流があることを知り、

 僕へメールを送ってほしいと 頼んだのです。

 全く奇遇です。

 ネットでは しばしばこういうことがあるのですね。

( 今までも、 長らく離れていた人と 再会したことが何回かあります。 )

 清志とは、 心子の葬儀のときに 会っただけでした。

 その後は 連絡する機会もなく、

 これからも接することは ないだろうと思っていました。

 思いも寄らぬ遭遇です。

 生前の心子から 聞いていた清志は、 非常に優秀な能力があり、

 カミソリのように 鋭くて薄い 神経の持ち主でした。

 ところが 葬儀のときの清志は、 イメージとかなり 隔たりがあって、

 うらぶれた感じでした。

 その後、 心子が話していたことは 彼女の心的事実に占められており、

 必ずしも客観的事実ではなかった ということが分かったのです。

 転送されてきた 清志のメールを読むと、

 彼に対するイメージが さらに変わりました。

 彼は低姿勢で、 自己肯定感が低い 印象でした。

 心を患っていた清志が、 心子が旅立ったあと、

 どうしているか 僕は非常に心配していました。

 でも意外にも 元気にしていることが分かり、 とても安心しました。

 心子が清志に託した モンチ (猿のぬいぐるみ) も元気だそうです。

(次の記事に続く)
 
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畠山被告に無期懲役判決 (2)

2009年03月27日 00時11分46秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
(前の記事からの続き)

 真実は 解明されたとは言えず、 畠山被告の心の中は 今だ闇のようです。

 なぜ 二人の子どもの命が 奪われたのか、

 その理由が分からないままの 判決になってしまいました。

 法定では 裁判長が被告に、 次のような 異例の問いかけをしたそうです。

裁判長 「本当はどうだったのかということを 話してほしい」

被告 「裁判長は 私が嘘をついていると思いますか?」

裁判長 「不自然というか、 疑問なところが多い」

被告 「私も 自分の心の中が、 よく分からないんです」


 裁判員制度で、 このような審理を 扱う場合、

 一般の人は どのように考えるでしょう?

 分からないという人も 多いでしょうが、

 目に見えない 心理的現象の判断は、 職業裁判官にも難しいと思います。

 ちなみに、 弁護士でも 境界性パーソナリティ障害を理解している人は

 非常に少なく、 正当な審判が 進まないといいます。

 心の障害への理解が 深まることが、

 人を裁いたり 調停する場面でも、 ますます不可欠になってくるでしょう。
 
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畠山被告に無期懲役判決 (1)

2009年03月26日 00時14分08秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
(前の記事からの続き)

 秋田児童連続殺害事件の控訴審、

 仙台高裁秋田支部で 一審と同様、 無期懲役の判決が下されました。

 畠山被告が彩香ちゃんを 橋の欄干に乗せ、

 恐がって抱きついてきた 彩香ちゃんを突き落としたという、

 一審の事実認定が そのまま踏襲されました。

 解離性健忘を起こして、 事件 (事故) 当時の

 記憶がないという 精神鑑定は採用されませんでした。

 真実は 今の僕の立場では 分かりませんが、

 解離性健忘が 充分検討されなかったことは、

 とても 腑に落ちないものがあります。

 検察は 健忘など信じがたいと 述べていますが、

 健忘は 容易に起こるものだということが、

 なかなか理解されないのでしょうか。

 一審では、 豪憲くんを殺害した時点で、

 彩香ちゃん殺害の記憶が はっきりしていなかった、

 ということを認定しています。

 僕からすると、 今回は 後退してしまった判決である 感があります。

 控訴審では、 彩香ちゃんが落ちたあと 助けようともせずに帰ったのは、

 明白な殺意があったからだ としていますが、 それこそが正に、

 記憶をなくしていた (解離していた)  証であるとも言えます。

 また、 彩香ちゃんは事故死だという 警察の当初の見解に対して、

 畠山被告は事件だと 主張したことなどについても、

 控訴審では 疑問が残ります。

 しかし、 被告が事件 (事故) 時の 記憶を失っているとすると、

 説明がつきます。

 被告は 彩香ちゃんが行方不明になったと 信じているので、

 事件 (事故) 直後に 近所に聞いて回ったり、

 警察に事件としての 捜索を訴え、 ビラ配りまでしたわけです。

( 彩香ちゃんの死の状況に 不審な点があるので、

 事故ではなく 事件だと主張したようです。 )

 控訴審は 豪憲くん殺害の動機を、

 被告が捜査の矛先を 紛らわすためだとしました。

 しかし一審では、 自分の子どもがいなくなったのに、

 豪憲くんが元気でいるのを 妬ましく思ったとしています。

 彩香ちゃんが亡くなった時の 記憶がないことと合致します。

(次の記事に続く)
 
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畠山鈴香被告の 心の真相 (3)

2009年03月25日 14時26分37秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
(前の記事からの続き)

 長谷川教授は、

 捜査段階の供述には 被告の想像が加わっていて、 信用できないとします。

 心理検査でも、

 被告は 暗示に従って それを信じやすいという 結果が出ています。

 捜査員の誘導によって、

 覚えていない事実を 作り上げられてしまったというのです。

 彩香ちゃん殺害現場とされる 大沢橋ですが、

 その場所自体が 疑わしくなっています。

 地元の人たちも、 彩香ちゃんの遺体の状況などから、

 大沢橋に 疑問を持っています。

 捜査がずさんだったことが 指摘されています。


 教授は特別な方法で、 事件時の 被告の失われた記憶を

 断片的に呼び起こしました。

 接見を重ねるうち、 被告は震えながら、 幾つかの映像を 思い出しました。

 道路と橋の間の隙間, しゃがんでいる彩香ちゃん,

 (彩香ちゃんが持っていた) ピカチュー,

 そして、 「落ちて行った」。

 そのとき 被告の目から涙が流れ、 呼吸が荒くなり、

 自分の右手が見えた ということです。

 彩香ちゃんがピカチューを落とし、 それをつかもうとして、

 ガードレールの隙間から 誤って落ちたというのでしょうか? 

 被告が見た 自分の右手は、 彩香ちゃんを助けようとしたのか、

 突き落とそうとしたのか、 今の段階では分かりません。

 教授は、 自分の中で想像した ストーリーや希望, 願望、

 様々なものが バイアスとして入ってきた、

 一連の映像が 事実かどうかは 検証しないといけないと言います。

 それに、 思い出していない部分も あるのです。

 長谷川教授は 捜査段階の供述を 疑うべきとしましたが、

 その鑑定は 検察側の不同意で 採用されなかったということでした。


 人の心の真相の 不可思議さ。

 裁判員制度を控え、 我々は 真実を見極める難しさを

 改めて考えなければならないかもしれません。

(次の記事に続く)
 
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畠山鈴香被告の 心の真相 (2)

2009年03月24日 20時46分36秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
(前の記事からの続き)

 鈴香被告の 近所の人たちの話では、 彩香ちゃんが 汚い服装をさせられ、

 泣きながら出てきて 学校へ行く姿を よく見かけたそうです。

 けれども 彩香ちゃんの帰りが遅いときは、

 畠山被告は心配して 迎えに行ったり、

 普通の親子関係だったと 言う人もいます。

 被告の同級生は、 被告が夜、 彩香ちゃんを一人残して 買い物に行ったり、

 一緒に寝ていて 触られるのが嫌だと言っていた、 とも話しています。

 反対に 彩香ちゃんの友だちも 一緒に誘って、

 公園で遊んだりすることも あったというのです。

 こうした相反する態度を、 長谷川教授は 「分裂」 と説明しています。

 自分や他人を 全く正反対のものとして 受け取る,

 心のコンディションも 両極端になってしまう,

 子どももプラスに見えたり マイナスに見えたりするわけです。

 被告が 父親から受けた虐待が、

 分裂を引き起こす 原因のひとつだと 考えられます。

 親の機嫌によって 子どもの心のコンディションが 振れてしまう、

 成人してからも 刺激によって どちらかに振れる現象を 起こすのです。

 この極端な性質は、 「言語連想検査」 という 心理検査にも現れました。

 ある単語に対して 被験者は連想する言葉を、 できるだけ早く答えます。

 200の単語について これが繰り返され、

 被験者は思考が乱されて、 深層心理が現れるというものです。

(関連記事「ユングの連想実験」:
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/24115652.html )

 畠山被告の検査結果は、 母親や病院を 肯定的に捉える一方、

 父親や異性に 否定的な連想が出てきました。

 彩香ちゃんに対しても 両極の気持ちがあり、

 負の気持ちが出たときは 正の気持ちがなくなってしまいます。

 そして、 娘の死という 戦慄的なできごとのあとに 解離性健忘が起こり、

 そのときの記憶を 失ってしまったのです。

 健忘については、

 被告を以前から診ていた 診療所の医師は 演技であると言い、 また、

 被告は他にも 重大な記憶が飛んでいたことがあると 証言する親戚もいます。

(次の記事に続く)
 
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畠山鈴香被告の 心の真相 (1)

2009年03月23日 22時49分38秒 | 凶悪犯罪と心の問題
 
 秋田連続児童殺害事件・ 畠山鈴香被告の 控訴審判決が、

 3月25日に言い渡されます。

 それを前にして TBS 「報道特集NEXT」 で、

 畠山鈴香の 精神鑑定の番組をやっていました。

 この事件では、 畠山被告が 娘の彩香ちゃんを

 橋の上から落下させて 殺害した、 とされています。

 しかし 畠山被告本人は、

 彩香ちゃんの死の場面の 記憶がないと供述しています。

 この裁判は 証拠が乏しくて、 被告の供述に頼るしかなく、

 真実は明らかになったのか という疑問の声があります。

 東海学院大学の長谷川教授が、

 弁護団から 畠山被告の精神鑑定を 依頼されました。

 長谷川教授は 被告の記憶について、 トラウマティックなできごとの直後に、

 その記憶を 無意識に封じ込めた、 「解離性健忘」 の可能性を述べています。

 彩香ちゃんの死という 恐ろしいことが起こり、

 それを覚えていると 自分の心が壊れてしまうので、

 それを防ぐため できごとを忘れてしまう というメカニズムです。

 教授は 被告の供述の信憑性や、 性格の特徴を鑑定するよう 委嘱されました。

 畠山被告と接見した教授は、 被告の性格を、

 低姿勢でおとなしく、 非社会的で、

 テレビで見た印象とは 異なると述べています。

 心理テストを行なうと、

 TV報道で見られた 「攻撃性」 は、 平均値を わずかに上回る程度でした。

 むしろ、 人に救いを求めるという 「求護(きゅうご)」 の欲求が、

 最高得点を示しました。

 また 「他者認知」 という、

 他人がどう思っているかを 知ろうとする欲求が、 異常な低さを示しました。

 畠山被告から教授の下に 届けられた手紙には、

 「 苦痛のない 静かな死が欲しい。

 死にたくて死にたくて 狂いそう」 だと書かれていました。

 教授に強い求護の欲求が 向かっています。

 次の手紙では、 遺族の気持ちが分からないと 訴えました。

 「 一番 分からなくてはいけない人間が、 何も分からないのです。

 訓練や努力をすれば、 分かるようになるのでしょうか 」

 教授はこれを、 人の気持ちが分からない  「障害」 だと述べています。

(次の記事に続く)
 
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「BPD家族の会」 林直樹先生の講演

2009年03月22日 20時03分42秒 | 「BPD家族会」
 
 今日の 「BPD家族の会」 は、

 都立松沢病院 精神科医・ 林直樹先生の講演でした。

 家族会での講演や ゲストの話の内容は 外に持ち出せないことになっており、

 レポートをアップできないのが 大変残念ですが、

 第一線で ボーダーの人たちに触れている ドクターのお話は、

 とても参考になるものでした。

 林先生は、 統合失調症の家族への講演は 何回かしたことがあるそうですが、

 BPD家族の人への話は 初めてだとおっしゃっていました。

 もっと早く こういう機会があるべきだったと 言っておられましたが、

 「BPD家族の会」 ができて、

 このような場が設けられたことは 非常に有意義だと思います。

 今日の参加者は 50人以上で、 いつもの会場の テーブルを外に出し、

 椅子を大量に運び込んでの 会になりました。

 今回は 通常の家族同士の話は ありませんでした。

 「BPD家族の会」 ではこれらかも こういう講演会や、

 ゲストを招いての 会を開いていきます。

 こうして ボーダーについての催しが増えていき、

 家族の人たちが支えられ、

 ボーダーのことが 次第に浸透していくことを 願っています。


 今日は 星和書店の社長も いらしていました。

 「境界に生きた心子」 の売れ行きは 非常にいいそうです。

( ただし今わかるのは 書店からの注文数で、

 実際の販売数は 4ヶ月くらい経たって、

 返品との差分を計算しないと 集計が出ないということです。 )

 ただ 元々の発行数が 少なかったのですが。

( 星和書店は ノンフィクションのボーダーの本を 出すのは初めてで、

 最初は慎重でしたが、 それでも 出版前の予定数の 倍になりました。 )

 ボーダーの人, 家族の人は ますます増えています。

 拙著も少しでも 人々の手に届いていくことを 祈っています。
 
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ボーダーラインの子どもの子育て (1)

2009年03月21日 09時32分19秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
 BPDの子どもの 育て方の原則を 幾つか提案します。

( それらは 大人のBPDの人に対しても 通じるでしょう。 )

 中には まだ臨床的に 試されていないものもあります。

 有効なことは確かですが、 統計的な研究は まだされていません。

 また、物事は時々、 良くなる前に いったん悪くなる、

 ということを 覚えておいてください。

 変化はたやすいことではありませんが、 未来の幸せのためには 不可欠です。


原則1: 相手を認める

 BPDの人たちは  「認めてもらえない環境」 の出身だと言われます。

 罰せられたり、 馬鹿にされたり、 辛い気持ちを無視されたまま、

 感情をコントロールするよう 命じられるのです。

 相手の感情を 認めないことは、 対人関係を蝕みます。

 どのように 相手の感情を認めればよいか、 例を示します。

1. 推測しない。

 話を聞くとき、 勝手に判断したりせず、 ただ耳を傾ける。

 誰に責任があるのか 憶測は一切しない。

 必ずしも問題を 解決しようとしなくてもよい。

2. 気持ちを分かってあげる。

 子どもの感情を 出させてやる。

 できれば、 子ども自身が 感情を理解できるよう、 手を貸す。

( BPDの人は 自分の感情を なかなか特定できない。 )

 子どもが 何が起こったのか 振り返ることができたとき、

 有効な話し合いができる。

〔 「BPDをもつ子どもの 親へのアドバイス」
  ランディ・クリーガー (星和書店) 〕 より

(続く)
 
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BPDの原因 …… 子どものBPD (5)

2009年03月20日 21時36分17秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
(前の記事からの続き)

 BPDの人の75%が 機能不全家族の出身であり、

 性的, 肉体的, 感情的虐待を 体験しているという話を耳にします。

 しかし 仮にそれが事実だとしても、

 裏を返せば 25%は安定した家族の 出身だということです。

 虐待の経験は、 多くは BPDの子どもの自己報告です。

 BPDをもつ子は 必ずしも真実を 語るとは限りません。

( ただしもちろん、 実際に虐待を 受けた子もいます。)

 多くの臨床医も 親に問題があると 決めてかかっていますが、

 我が子のことを心配し、 自分の生活の ほとんどを費やして、

 我が子を救おうとしている親も 少なくありません。

 また 虐待を受けるのは、 親からだけとは限らないのです。


 虐待の他に、 子ども時代のストレスとして 次のようなものがあります。

・幼いときの 親の離婚, 別居, 別離。

・身体的な病気や怪我。

・親の精神疾患。

 ただし そのような体験をする子どもの 大多数は、

 BPDの兆候を 示していません。

 中には 非常に敏感な子どもがいるのです。

 親のBPDが 子どもに遺伝するのか、

 親が病んでいるため 子育てが危うくなって 子どもが発症するのか、

 それには さらに多くの調査が必要です。

 いずれにせよ、

 親は 罪悪感や悲嘆に暮れている 時間もエネルギーもありません。

 それよりも もっと他に、 しなければならないことがあるでしょう。

〔 「BPDをもつ子どもの 親へのアドバイス」
  ランディ・クリーガー (星和書店) 〕 より
 
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いい子ぶる …… 子どものBPD (4)

2009年03月19日 21時53分22秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
(前の記事からの続き)

 BPDの子どもの中には、 表面的には普通に見え、

 まともな行動を している子がいます。

 でもそれは いい子ぶっているのでしょう。

 仮面をかぶっている, 役を演じているとも言えます。

 常に 関心や承認を得るために、 完璧であろうと努力し、

 トップの成績や賞を取って 注目を集めようとします。

 このような子の親は、

 我が子の心の苦しみに 気付いてさえいないことも多いのです。

 BPDの子どもは 成人になってから 高校時代のことを、

 精神的な 地獄だったにも拘らず、

 全てうまくいっているように見せようと 決意していたと述べています。

 子どもは、 全く関心を 払われないくらいなら、

 例え 否定的な目であっても 見てもらえる方がいいと 思うものです。

 だからこそ、 否定的な行為ではなく、

 好ましい行為に 目を向けさせることが 非常に重要です。


 自分を罰しなければならないという、 自責の念に とらわれている子もいます。

 自分の責任ではないのに、 責めを引き受けてしまいます。

 逆に、 自分の行動の責任を 取れない子もいます。

 例え 自分の行動を認めたとしても、 それを正当化しようとします。

 批判を 受け入れられるようになることが、 成熟の証になります。

〔 「BPDをもつ子どもの 親へのアドバイス」
  ランディ・クリーガー (星和書店) 〕 より

(次の記事に続く)
 
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報酬システム …… 子どものBPD (3)

2009年03月18日 20時12分33秒 | BPD,パーソナリティ障害の書籍から
 
(前の記事からの続き)

 BPDの子どもの親は、

 過度に操作されているように 感じることがあります。

 BPDの子は 欲しいものを手に入れるために、

 直截的で 幼稚な方法を用いるのです。

 彼らは感情のレベルが 非常に激しいので、

 欲求のひとつひとつが 死活問題になります。

 親が求めに応じて それに折れると、

 同じことが 繰り返されるようになってしまいます。

 それを ペットの犬の話に 例えています。

 お客さんが来ると 犬が激しく吠えかかるので、

 主人は 犬におやつを与えて 静かにさせるようにしました。

 すると犬は、 誰が来ても 必ず吠えて

 おやつを期待するように なってしまいました。

 このような報酬システムが できあがってしまったら、

 一切の例外を認めず、 報酬を与えることを やめなければなりません。

 もし 10人目のお客さんのときに、

 飼い主が根負けして おやつを与えたら、

 それは犬に、 報酬を得るためには 吠えるのを10回繰り返せばよいと

 教えているのと同じです。

 今や事態は 10倍悪くなってしまったのです。

 子どもが素直に、 人を操作することなく、

 自分のニーズを きちんと伝えられるよう、 励ましてやることが必要です。

〔 「BPDをもつ子どもの 親へのアドバイス」
  ランディ・クリーガー (星和書店) 〕 より

(次の記事に続く)
 
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物語の名人 …… 子どものBPD (2)

2009年03月17日 20時17分57秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
(前の日記からの続き)

 BPDの子どもの中には、 “物語の名人” と言える子がいます。

 話を作り上げ、 まるで真実のように 見事に物語るのです。

 「意図的な嘘」 と呼ばれますが、 それは 次のような理由によります。

 難を逃れるため, 社会的に受け入れられるため,

 復讐するため, 関心を得るためなどです。

 「恩赦を与えるやり方」 を うまく利用することができます。

 まず 嘘がどのようなトラブルを 引き起こすか、 よく話し合います。

 そして 嘘をついても、

 それを正直に打ち明けたら 怒らないと約束します。

 そうするうちに、 嘘をついてから それを告白するまでの期間が、

 だんだん短くなるといいます。

 その後、 嘘を付いている最中に 話を止め、

 その場で嘘を認めて、 話をやり直すようになり、

 やがて 全く嘘をつかなくなるということです。

 BPDの子の中には、 空想と現実の区別が できていない場合もあり、

 自分の話していることが 真実だと確信していることがあります。

 一方、 自分の話が 事実でないと理解していながら、

 話に封じ込められて 後戻りできなくなっていることもあるようです。

〔 「BPDをもつ子どもの 親へのアドバイス」
  ランディ・クリーガー (星和書店) 〕 より

(次の記事に続く)
 
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