「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ダブル・マイノリティ 「ハートをつなごう」 (1)

2010年04月30日 19時59分50秒 | 心理
 
 昨日、 NHK教育 「ハートをつなごう」 で、

 「ダブル・マイノリティ」 という 番組をやっていました。

 ダブル・マイノリティとは、 例えば 身体障害と精神障害など、

 複数の生きづらさを 抱えている人のことを言います。

 以前、 僕のブログにも

 「ダブル・マイノリティ」 について 書いたことがあります。

 性同一性障害という セクシュアル・マイノリティであり、 かつ、

 脳性麻痺という 身体障害 (四肢障害, 言語障害) を併せ持つ人と、

 僕は以前 ネット上 (パソコン通信) で

 やり取りをしていたことがある と書きました。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/35448313.html

 (記事中、 「TG」 とは 「トランスジェンダー」。

 生まれたときの性別と、 心の性 または生活上の性が、

 何らかの意味で 異なる人。)

 昨日の 「ハートをつなごう」 に、 何と この人が出演していました。

 外見は 頭が薄くなりかけた 中年の男性ですが、 「ひろこさん」 という女性です。

 (パソコン通信では  「洋子」 というハンドルネームで、

 僕は 「ようこさん」 かと 思っていたのですが。)

 ひろこさんは当時、 可愛らしい女の子の服を 着たいけれど、

 親はそれを認めていないため、 家族が寝静まった夜に、

 一人で鏡の前で 女装をしていたと書き込んでいました。

 モニター画面で その文章を読みながら、 僕は 涙を禁じ得ませんでした。

 ところが ひろこさんは7年前、 けいついを痛めてしまい、

 着替えも食事, トイレも 一人ではできなくなってしまった といいます。

 その時ひろこさんは、  「苦しかった…… 本当に、 苦しかった……」 と、

 声をふりしぼって 語っていました。

 今は 性同一性障害であるヘルパーさん (女性) に、

 身の回りの世話を してもらっており、 女装を楽しむこともできます。

 ヘルパーさんのほうも、 ひろこさんから 力を得ているそうです。

(次の記事に続く)
 
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パニックを コントロールする方法

2010年04月29日 21時41分02秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 フラッシュバックなどのパニックに 有効な対処法として、

 「グラウンディング・ テクニック」 があります。

 パニック状態のとき、 意識は狭窄し、 内的な感覚に 囚われてしまいます。

 それを止めるため、 外の世界に 意識を向かわせるようにします。

 地面にしっかり 足を踏ん張り、 壁や手すりなど 固い物にしっかりと触れ、

 ゆっくり腹式呼吸をしながら、 外にある物を見て、 外的感覚に集中します。

 家族などに 話しかけてもらって、 外界に意識を向かわせると やりやすくなります。

 もうひとつ、  「ブレス・ トレーニング」 があります。

 ゆっくり腹式呼吸をしながら、 息を吐きだすことに 注意を向けます。

 「リラックス」 と唱えながら、 ゆっくり繰り返します。

 恐怖のコントロールに有効です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 僕も以前に 少し瞑想や、 感情モニタリングという

 ワークショップをやったことがあります。

 人間の意識というのは 不思議なものです。

 意識を 体の一部分や 心の中に集中させたり、

 逆に 外のある部分に 集中させたりすると、

 全く違った意識状態に なっていきます。

 練習をしていくことによって、 多元的な意識を 持つことができるようになります。

 ヨーガなども 単なるストレッチではなく、

 呼吸法と合わせ、 心身のバランスを 整えていきます。

 さらに 高い次元への 意識の変容を通して、

 最終的には 宗教的な悟りに達することを 目標とするものです。

 上記日記のトレーニングは その初歩的なものでしょうが、

 気持ちを落ち着かせるのに 役立つものでしょう。
 
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フラッシュバックは どう扱うのか

2010年04月28日 21時47分13秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は、 PTSDを抱えていることが 少なくありません。

 治療を受けて 安定した上で、 過去の出来事に 向かい合う治療が 有効です。

 どんな出来事も きちんと言葉にし、 適切な対処を学ぶことで、

 乗り越えていくことができます。

 向き合わずに 心の中に押し込めているほうが、 害が大きいのです。

 回復に手間取ることもありますが、 問題を抱えながらも、

 時間をかけて、 バランスを壊さないことが 大切です。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子も フラッシュバックを起こしました。

 子供の人格に戻って 父親が急死したときの出来事、

 前夫が首を吊ったシーン、

 もう一人のパートナー・清志が 自殺を図ろうとしたシーンなど。

 悪夢を見て 飛び起きたことも 何回かありました。

 残念ながら、 その治療を始めるところまでは 行きませんでした。

 ただ心子の場合は、 実際の事実が フラッシュバックするのではなく、

 心の中にでき上がった 心的事実が 再現されることが多かったようです。

 しかし それは心子の中では、 客観的に起こった出来事と 全く変わりがなく、

 間違いなく存在した 事実だったのです。

 フラッシュバックは 単なる夢や記憶と異なり、

 明らかに いま目の前で起きている 現実として体験され、

 その衝撃や苦しみは 経験しない者には 想像し難いといいます。
 
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気持ちをコントロールする

2010年04月26日 19時25分38秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 情動のコントロール不全は、 この障害の 基本症状のひとつで、

 気分が変動しやすいことと、 傷つきやすいことがあります。

 程度が強い場合は、 薬で緩和することが望まれます。

 軽度の場合は、 生活習慣を整え、 安心できる環境で 過ごすようにします。

 次々に 新しい人と出会ったり、 人間関係が濃厚になると 刺激を受けやすいので、

 淡白で単純な 生活を心がけましょう。

 親子関係が落ち着いていない場合、 ほどよく距離を置いて、

 たまに顔を合わせるほうが よいこともあります。

 逆に べったり依存している場合は、

 徐々に 自分だけで過ごせる時間を 増やしていきます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 数種類の薬を処方されていました。

 現在では 多剤多用は禁物とされていますが、 心子は 腰痛の湿布や痛み止め、

 胃薬なども含めると、 通院の度に 袋一杯の薬を 持ち帰っていました。

 対人関係は、 当初 会社の苛めで 尋常でない日々を過ごしていましたが、

 その後は、 社会的な人間関係で苦しむことは 差程なかったと思います。

 母親との関係は、 価値観も感性も 全く異なり、

 揉め事が絶えないと、 生前は聞いていました。

 でも実は、 母親は心子を気にかけて 心子の部屋にやって来ては、

 ひとつのベッドで 寝たりしていたということです。

 愛情が深い分だけ、 傷つくことも多かったのでしょう。
 
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頭で考えるより、 体と手を動かす

2010年04月24日 22時02分33秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 回復する土台として、 体を規則正しく動かして、 生活のリズムを 整えることです。

 境界性パーソナリティ障害の人は 本来、 勤勉な人が多いのです。

 毎日の日課を決めて、 ひとつずつ実行していきます。

 いきなり 全てできる必要はなく、

 実行できたことが 少しずつ増えていけばいいのです。

 料理などは、 複数のことを 臨機応変に進め、

 総合的に考えながら行なう、 優れた作業療法です。

 デイケアや職業訓練施設の 利用もいいでしょう。

 対人関係の トレーニングにもなります。

 あっさりとした、 距離を置いた関係を 保つようにしましょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は やると決めたら、 徹底的にやりぬく性格でした。

 夏休みに 心理学のセミナーを 受講したことがありました。

 某大学で開催されたセミナーは、 遠方で、

 普通の人でも 付いていくのが難しい ハードスケジュールでした。

 心子は連日 早朝から夕方まで、 一ヶ月間、

 とうとう無遅刻無欠席で 皆勤を果たしてしまったのです。

 試験も 口では全然ダメだと 言いながら、 全科目 「優」 でした。

 でも 受講し終わって、 僕の部屋へ来た途端、

 無理がたたって 倒れてしまいました。

 不順な生理に襲われて、 3日間 起きられませんでした。

 その間、 僕は 心子の痛む腰を揉み、  “重い人用” の 生理用品を買ってきて、

 鉄分不足を補うため ニラレバ炒めを作ったりしたものでした。
 
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どん底の体験が 逆転のきっかけになる

2010年04月22日 21時28分32秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 人生最大のピンチが、

 回復における 逆転のきっかけになることが しばしば見られます。

 どん底まで落ちて 開き直ったときに、

 その人の中に 本来備わっていた力が、 本領を発揮するのです。

 自分を縛っていた鎖は、 思い込みが 作り上げていたものです。

 瀬戸際まで 追い詰められたとき、

 生きたいという願望が 思い込みを打ち破るのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 僕と付き合うようになって 数ヶ月し、

 だんだん症状が 悪化してきたようにも見えました。

 父親との死の約束や 近親相姦などのことを披瀝し、 解離を起こしたり、

 子供の人格に戻ったり、 激しい発作を 起こすようになったのです。

 それまで意識下に抑圧していた どろどろした部分まで、

 僕を信頼して 見せられるようになり (無意識に)、

 著しい心理的症状となって 現れてきたのです。

 (ただし 父親との間の出来事は、 心子の心的事実であって、

 客観的事実ではなかったことが 没後になって分かりました。)

 それは心子が 自分の心の内面と 向き合う作業の、

 始まりだったと言えるのでしょう。

 その時期を経て、 心子は 分裂した自分を統合するような 前兆を見せ始めました。

 真っ黒でも真っ白でもなく、

 一面の黒いオセロの中の、 一点の白に 目を向けられるようになったのです。

 けれども その直後、 ある人の言葉が引き金となって、

 心子はホテルの最上階から 宙に舞ってしまったのでした。
 
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回復を妨げる気持ちに 向かい合う

2010年04月21日 20時29分11秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 悪い状態から回復してくると、 それまで他の人に 肩代わりしてもらったことを、

 自分で しなければならなくなります。

 すると 負担が増えてきて、 また後退してしまう ということを繰り返します。

 しかし 何かのきっかけで、 本人自身が 状況を変えようと決意すると、

 見違えるように 積極的になることもあります。

 それは、 新しい目標や 楽しみが生まれたり、 受容される体験、

 逆に 支え手が亡くなるという 危機感が高まる状況などがあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は 僕と付き合い始めるまでは、

 社会的に自立して、 てきぱきと仕事もこなしていました。

 でも 僕に依存するようになって、

 悪い状況が出てくるようになった という面もあると考えられます。

 それは 多くのBPDの人が 見せる順番と、 少し異なっていたでしょうが。

 僕の部屋で過ごす (暮らす) ときは、

 薬のせいもあって 長時間寝ていたり、 不規則な生活でした。

 次第に 体にも変調をきたし、 フルタイムで働けなくなり、

 障害者基礎年金を 受給するようになりました。

 そこからの回復を 見せる前に、 心子は人生に 幕を引いてしまいました。

 でも改善の前触れは、 芽生き始めていたのではないかと 思われます。

 次の日記に記します。
 
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小さな成功体験から 変化が始まる

2010年04月20日 22時14分46秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 回復する過程には、 自信を取り戻すことが 不可欠です。

 傷ついた自己愛を、 周囲の人が どうにか支える段階が まずあって、

 少しずつ 一歩を踏み出していきます。

 例え 小さなことでも、 自分が認められる 体験をすると、

 またチャレンジをしようという 勇気が湧いてきます。

 最初はゆっくり、 三日坊主でも やめればいいと割り切って 始めればよいのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 「BPD家族の会」 の参加者からも、 お子さんである BPDの人たちは、

 自分に自信が持てず、 仕事もできないでいるという 状況をしきりに聞きます。

 「高機能BPD」 「低機能BPD」 という言い方は 好きではないのですが、

 言ってみると心子は  「高機能BPD」 だったのでしょう。

 対外的には 仕事は人並み以上に こなしていましたし、

 何をやっても できてしまうという面もありました。

 自分が目指すことに対しては、 どんな過酷であっても、

 艱難辛苦を乗り越えて 立ち向かっていく がむしゃらさも持っていました。

 しかし、 それが一度 わずかでもくじけると、

 一挙に自己卑下や 絶望に陥ってしまいます。

 自己愛性的な面があると同時に、 自己評価が低く、

 自分は生きる価値もないという 自己否定に苛まれていたのです。

 「BPD家族の会」 の参加者からも、

 BPDの人は 頑張るときは本当に頑張る という話しも聞きます。

 完全を求めて 頑張ってしまいますが、 求めていたことが100%できないと、

 やっぱり 自分は全くダメだと 一遍に落ち込んでしまいます。

 半分でもできたら上出来だという 適当さが必要なのでしょう。
 
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常識で考えるのをやめる

2010年04月18日 20時56分19秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人の 親は、

 常識的な価値観や体面で 子供を縛っていることが 少なくありません。

 子供は 親に認められたいために、 親が望むことを捨てられず、

 本人自身が 自分を縛っている場合もあります。

 境界性パーソナリティ障害は そのように、

 自己を確立する過程の障害 という側面を持ちます。

 境界性パーソナリティ障害は 常識的な価値を 覆す症状として 現れますが、

 それは その人を縛ってきたものに対する 命懸けの異議申し立てなのです。

 親から与えられた自分を 一旦否定することが、 回復に必要な過程です。

 親の期待を裏切ることは 罪悪ではなく、

 本人が選んだものをこそ 祝福するべきなのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の父親は、 かなり 常識はずれの人だったようです。

 幼い心子の 才能を見込んで、 勉強や礼儀作法, 社会の表と裏を 教え込みました。

 父親は 心子には完璧を求めました。

 心子を学校へはやらず、 家や実地で教えましたが、

 学校の試験は 満点でなければ許さず、

 99点だと 答案用紙を目の前で 破り捨てたといいます。

 100か0かという 心子の性質は、

 こんなところからも 植えつけられたのだろうと思います。

 心子の父親は 世間体を気にする人間では なかったと思われますが、

 完璧を要する価値観で 心子を縛りつけていたでしょう。

 心子は 父に愛されるため、 完全な良い子である もう一人の自分を作り出し、

 休むことも許されず 馬車馬のように突っ走りました。

 しかし それは本来の 自然な自分ではなく、

 無意識下に抑えつけていた 矛盾は、 いつしか噴出してくるのでした。
 
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出発点は、 一旦 ご破算にすること。

2010年04月17日 22時05分22秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 本人も周囲も、 状況が悪化して どん底になったとき、

 何もかも諦めて 全てを投げ出してしまう 時期を経て、

 回復へ向かっていくようです。

 この時期まで辿り着かないと、 過去の栄光や 未練を捨てきれず、

 ネガティブな考えや 恨みに囚われ続けます。

 どん底を極めると、 今までの路線に 見切りを付け、 生まれ変わりを容易にします。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 「BPD家族の会」 でも、 BPDの子の親御さんが、

 子供の自殺のそぶりに 及び腰でいるうちは うまくいかないといいます。

 あらゆる手を尽くし、 最悪の場合 この子が死んだとしたら、

 それがこの子の 寿命なのだと諦め、  「覚悟」 を決めたとき、

 そこから改善し始めるという 話を聞きます。

 僕自身も、 20才代の 人生最大の挫折の時期、

 地獄の底をのたうち回ったとき、 そこから這い上がり始めました。

 遅々として、 逆戻りを何回も 繰り返しながらではありましたが、

 どん底まで行けば、 あとは上がっていくしかないのでしょう。

 筆舌に尽くしがたい 苦悩であり、 あがき苦しむしかないとしても、

 決して 明けない闇はない、

 生きていれば 必ず再生していけるということを、 僕も実体験したのです。
 
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境界性パーソナリティ障害からの回復

2010年04月16日 19時38分04秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害は 克服できます。

 自己確立が 難産だったようなもので、

 普通より多めの 時間と苦労を要しますが、 早晩 落ち着くのが自然の経過です。

 どんなに辛くても、 とにかく生き続けさえすれば、

 必ず克服され、 本来の自分に 辿り着いていきます。

 「よくなりたい」 という 回復の意志が、 何よりも重要なのです。

 本来の人生を歩みたいと、 心から思うようになったとき、

 回復のプロセスは 半分まで成し遂げられています。

 悪い状態のときは、 ある意味、 よくなりたくないのです。

 よくならないことによって、 苦痛を表現し、

 分かってもらおうとしているのですから。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子も、 心理学を勉強していた立場から、

 よくなりたくないという面が あったのかもしれません。

 「私はこの世で最悪の 大変さと向き合っている。

 私以上に大変な状況はない。

 だからこそ、 私は 他の大変な人の気持ちが すべて理解できる。」

 世の中で一番の 大変さを抱えていることが 誇りであり、

 頑張るエネルギーにもなるといいます。

 なので、 大変さを捨てることができません。

 「この激しい感情がなくなったら、 苦しんでいる人に 共感できなくなってしまう。

 そんな鈍感な人間に なるくらいなら、 感情と共に 討ち死にした方がまし!」

 そうして、 感情をコントロールするのを 怖がる傾向があるというのです。

(参照:http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/16085103.html
    http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/16134670.html )
 
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過去と現在を 結びつける

2010年04月14日 22時52分31秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 自分の 悪い反応のパターンは、 過去の自分が 身に受けたことに 一因があり、

 しかも それが、 今も親に抱いている 屈折した思いと 関係があることが、

 だんだん分かってきます。

 こうして、 いま起きている問題を、

 過去に体験したことに つなぎ直し、 再統合する段階を迎えます。

 断片が 次第につなぎ合わさり、 自分の物語ができていきます。

 マイナスの体験を 表現し尽くすと、

 プラスの体験も 語られるようになってくるのです。

 否定されていた過去は、 現在につながる歴史として 受け入れられるようになります。

 自分の人生に 新たな意味を見つけ、

 転落と絶望の物語は、 危難と再生の物語に 変貌していくのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は出産時、 足に障害があり、

 親は 心子を抱かないようにと 医者から指示されました。

 心子の愛情飢餓の 根本的な原因は、 ここにあるのではないかと考えられます。

 最もスキンシップが 不可欠な幼児期に、 それを全く与えられなかった。

 自分が無条件に愛され、 大切にされる存在なのだということを、

 体で知ることができなかった。

 それは心子にとって、 致命的な愛情の欠乏と なったに違いありません。

 愛情の存在を 信じることができず、

 この世に生きていていいんだという 肯定感を、 無意識に育めなかったきでしょう。

 しかし 心子の母親は、 このことを何よりも 悔いているといいます。

 親のほうも、 愛したかったのに 愛せなかった。

 どれだけ我が子を抱き、 慈しむことをしたかったか。

 苦しいのは 心子だけではなかった。

 そういう物語が 紡がれてくると、 彼女の底知れない傷も、

 癒されていくことができたかもしれません。
 
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囚われを解除する テクニック (2)

2010年04月13日 19時56分48秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 さらに  「中核信念」 である思い込みについて、

 子供の頃、 そう感じることはなかったか、 過去に遡って聞いてみます。

 思い込みが、 親や 重要な人物との関係から 生じていることが分かると、

 その呪縛力は弱くなり、 行動や考え方が 次第に変化していきます。

 もちろん 一筋縄ではいかず、 ネガティブな感情が 強まることもありますが、

 それはより根本的な 改善に必要な段階なのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子を呪縛していた  「中核信念」 のひとつは、

 父親との関係から 生まれたものでした。

 心子は、 心臓病の父親と 一緒に死ぬという 約束をしていましたが、

 父が発作で倒れたとき、 あとを追うことが できませんでした。

 自分は 死ぬために生まれてきた、

 死ななければならないという 信念ができてしまいました。

 心子が召されたあと、 父親との約束は、

 心子の心の中だけの 事実だったらしいことが 分かってきました。

 それは単なる 思い込みのレベルではなく、

 主観的には 間違いなく存在した 「心的事実」 だったので、

 修正は より難しかったかもしれません。

 父親もすでに 鬼籍に入っていたので、 父親に真相を 確認することもできません。

 でも、 生きているうちから、

 その部分に焦点を当てて 治療することができたとしたら……。

 かなり困難な 道のりだったとは思いますが、

 新たな展開が 期待できたかもしれません。
 
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囚われを解除する テクニック (1)

2010年04月12日 20時51分18秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/60516159.html  からの続き)

 見つけ出した 悪い反応パターンを 意識しやすくするために、 名前を付けてみます。

 「 『また厭なことを言われた』 病」 というように、

 ユーモアを備えるのもいいですが、 本人を傷つけるものにならないよう 配慮します。

 そして重要なのは、 悪い反応パターンの 背後にある気持ちなどを 語ってもらい、

 さらにその根底にある、 偏った思考を 解明することです。

 思い込みの中核的な部分、  「中核信念」 が浮かび上がってきます。

 「誰も 自分を愛してくれない」 「人は 隙あらば攻撃してくる 敵である」

 といった、 不適切な確信です。

 その信念は 本当にその通りなのかと 問いかけ、 本人に 言葉で語ってもらいます。

 そうして検討していくうちに、

 一面的な思い込みだったことが 徐々に分かっていきます。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子はユーモアがあり、 何にでも ニックネームを付けることが 得意だったので、

 面白い名前を 付けることができたかもしれません。

 心子も 消沈したときには、

 「誰も自分を愛してくれない」 「生きている価値がない」 という、

 誤った 「中核信念」 に 捕らわれてしまいました。

 落ち着いているときに語れば、 別の見方もあると言うことが できたかもしれません。

 そういうことを 丹念に積み重ねていったら、

 或いはその信念を 少しずつ修正していくことができたでしょうか。
 
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おばあさんが転倒、 歯が折れた! (2)

2010年04月10日 20時57分03秒 | 介護帳
 
(前の記事からの続き)

 10分くらい経ったでしょうか、 やっと救急車が到着し、

 おばあさんをストレッチャーに乗せました。

 救急隊員が僕に、 血の付いた手を すぐ洗ってくるよう 指示しました。

 感染症の危険がありますから。

 女性の住人が 水道の場所を教えてくれて、

 もう一人のスタッフと 走って手を洗いに。

 現場に戻ってくると、 おばあさんはちょうど搬送され、

 僕は救急隊員に 名前を聞かれました。

 もしおばあさんに 感染症があった場合、 連絡が必要なので。

 職場の電話番号を伝えるため、

 救急隊員に ポスティング用のチラシを渡しました。  (^^;)

 それにしても、 いざという場合、 緊急時の知識がないと、

 どう対応していいのか、 適切な行動が分からないものです。

 呼吸のことを 指示した女性は、 医療の知識があったのでしょうか。

 以前も電車の中で、 僕の目の前に 女性が倒れ込んできたことがありました。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/51148233.html

 今回は 意識がはっきりしていたし、 痛みも特に訴えず、

 しゃべっていたので 大過はないと思いましたが。

 すると 先ほどの女性が戻ってきて、 顔を合わせました。

 聞いてみると、 女性のご主人が介護職で、

 女性を相手にして 介助の練習などをさせられるとのこと。

 ご縁なので、 この女性にも チラシを渡しました。  (^^;)

 うちのデイサービスは  「地域密着型」 を標榜していて、

 今回は地域住民と協力して 高齢者を助けることができて、

 良かったのではないかと思います。

 あのおばあちゃんにも チラシを渡したら、

 デイサービスに来てくれたでしょうか。  (^o ^; )
 
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