(前の記事からの続き)
家族療法の第1の目的は、
BPDの人の症状を軽減し、 能力を向上させることですが、
家族のストレスと負担の軽減が 目標にされるものもあります。
それは 家族サポートプログラム, 家族教育プログラムと呼ばれ、
専門家による家族心理教育とは異なります。
患者の家族自身である、 教育を受けたボランティアによって 指導されることが多く、
医療施設ではなく、 地域社会に基盤があります。
治療ではなく 草の根的なものであり、 最小の費用で参加できます。
「家族から家族へ」 と呼ばれる 家族教育もあります。
教育と共感的理解を通して、
家族が感じる偏見 (スティグマ), 孤独, 絶望を減らすことが目的です。
正式な家族心理教育とは異なりますが、
家族が患者に 不愉快や心配を感じることが 軽減されます。
○ 家族の関与のまとめ
・ 治療プログラムを選択するときは、
治療法の有効性についての 情報を得ることが重要です。
・ 家族心理教育は、 家族の強さを増すことに 重点を置き、
患者の問題を 家族の責任と考えることはありません。
・ DBT家族療法は、 家族内のコミュニケーション技能を築き、
家族内の相互作用を 改善させるアプローチです。
・ 家族サポートプログラム, 家族教育プログラムは、
ボランティアの家族がリーダーとなって、
問題解決と自助の技能や 情報を提供し、 相互サポートを促します。
BPD家族の負担を 減らす効果があります。
● 訳者 (林直樹) あとがき
本書では、 従来ないがしろにされがちだった 家族へのサポートを強調している。
専門家が、 BPDの原因は 養育環境や家族関係だという 偏った考えに毒されて、
家族のサポートは不充分だった。
さらに本書は、 家族が 治療チームのメンバーとなってもらうべきだと 示している。
わが国 (日本) では 家族への支援は 貧弱な段階にあり、 今後の課題は大きい。
しかし、 家族同士がサポートし合う活動が 大きな役割を果たしうることに、
大いに励まされる。
本書は 米国の状況の記述だが、 わが国でも 有用性が高いと考えられる。
〔 「境界性パーソナリティ障害最新ガイド」 星和書店 (林直樹訳) 〕より
(以上)