「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

抗精神病薬 -- BPDの薬物療法

2011年12月17日 21時09分21秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 精神病症状は幻覚や妄想などで、

 不自然な考えや信念を持つ BPDの人に効果があるものもあります。

 第一世代抗精神病薬, 第二世代抗精神病薬がありますが、

 前者は副作用の関係で BPDには投与されていません。

 第二世代抗精神病薬には、

 リスパダール, ジプレキサ, クロザリルなどがあります。

 副作用は、 倦怠感, 低血圧, 体重増加, 心臓の活動の変化などです。

 重い副作用としては、

 顔などの不随意運動, 体温上昇, 血圧の変化, 意識変容などがあります。

 抗精神病薬は 脳のドーパミン受容体を阻害し、

 ドーパミンの働きを 抑えると言われます。

 精神病症状がないBPDに 効果があるかは不明ですが、

 体重増加などの 重い副作用が認められています。

                   *

 以前 治療者は、

 BPDの症状によって 薬を使い分けるのが ベストだと思っていました。

 けれども今は、 気分安定薬でも 抗精神病薬でも 抗うつ薬でも、

 不安定な感情, 怒り, その他の精神症状に 効果を示すことが分かりました。

 脳内の化学成分に 異なる作用をもたらす薬も、

 実際には 様々な感情の問題に 似たような効果を示すのです。

 ただし  「抗BPD薬」 というものはありません。

 心理療法と合わせて受けたほうが 効果的なのです。

 薬物療法が 自分に適しているかどうか、 できるだけ沢山の情報を集め、

 主治医によく相談し、 メリット・ デメリットを 充分に考えあわせ、

 薬が効いているか症状観察記録を取り、

 自分で責任を持って 決めることが求められます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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気分安定薬 -- BPDの薬物療法

2011年12月16日 21時26分19秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 気分安定剤は大別して、 炭酸リチウムと抗てんかん薬があります。

・ 炭酸リチウム

 「リチウム」 と言われ、 双極性障害の人に 頻繁に投与されてきました。

 気分が極端に高い状態から 低い状態を 変動するのを抑えてくれます。

 ただ、 BPDに効くという証拠は 少ししかありません。

 一般的な副作用は、 吐き気, 手の震え, 頻尿, 下痢,

 胃のむかつき, 喉の渇き, 食欲減退などです。

 飲み間違えると 毒性を示す潜在性があり、

 ろれつが回らない, 手の震えの増加, 脱力感, 耳鳴り, 嘔吐, かすみ目

 などの副作用があります。

・ 抗てんかん薬

 GABAという 抑制系の神経伝達物質を、 活発にする効果が あるとも言われます。

 ある部分の 脳の動きを遅めたり、 阻害したりします。

 また、 グルタミン酸塩という 興奮性神経伝達物質の動きを 阻む作用もあります。

 脳のある部分が 活動することを妨げます。

 つまり GABAの活動を高め、 グルタミン酸塩の働きを阻害することで、

 気分の変動に関係する 脳の部分の活動を減らし、 気分を安定させるのです。

 テグレトール, ラミクタール, トピナ, ガバベンなどがあります。

 副作用は、 イライラ, 抜け毛, 血小板の減少,

 肝臓毒性, 膵臓炎, 多嚢胞性卵巣症候群などです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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抗うつ薬 (2) -- BPDの薬物療法

2011年12月15日 19時41分33秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

・ 選択的セロトニン再取り込み阻害 (SSRI)

 三環系抗うつ薬が セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを 阻害するのに対し、

 SSRIは セロトニンの再取り込みのみを阻害します。

 デプロメール, ルボックス, パキシル, ジェイゾロフトなどがあります。

 副作用はさほど強くありませんが、

 吐き気, 下痢, 頭痛, 不安、 睡眠障害, 興奮, 倦怠感, めまい,

 性欲の低下, 震え, 体重の増減などです。

・ モノアミン酸化酵素阻害薬 (MAOI)

 セロトニンとノルアドレナリンは、 モノアミン神経伝達物質に分類されます。

 これが シナプス (ふたつのニューロンの間) に放出されて、

 一定の時間が経つと、 化学物質 (モノアミン酸化酵素) によって 分解され、

 ほかのニューロンに 辿り着けなくなります。

 モノアミン酸化酵素阻害薬は、

 シナプス内の モノアミン酸化酵素を阻害したり、 量を減らしたりするのです。

 日本では エフピーがあります。

 副作用は深刻なものがあり、

 めまい, 心臓の変化, 胃のむかつき, 口の渇き, 便秘, 頭痛などです。

 チラミンというアミノ酸を 含むものを飲食すると、

 ひどい高血圧性危機を起こし、 脳梗塞, 昏睡, 死に至る場合もあります。

 ワイン・ チーズ・ 肉類・ 魚類などのうちの 一部のもの,

 ビール, 豆腐, そら豆などを 飲食してはいけません。

・ 新規抗うつ薬

 新しい抗うつ薬としては、

 リフレックス, レスリン, トラゾドンなどがあります。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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抗うつ薬 (1) -- BPDの薬物療法

2011年12月14日 20時30分09秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 心理的な問題は、

 脳の機能と 化学物質(神経伝達物質) によって 生じるとされます。

 脳内の神経細胞 (ニューロン) から 隣のニューロンへ、

 神経伝達物質が伝わることによって、 心理的・ 身体的活動が司られています。

 (ニューロン同士の間にある 隙間をシナプスという。)

 もしニューロンが あまり活発でないとすると、 次の原因が考えられます。

・ 神経伝達物質が少ない

・ 神経伝達物質が ほかのニューロンに結合しない

・ 神経伝達物質が ほかのニューロンへ伝わる前に、 放出された所へ戻ってしまう

 (この過程を 「再取り込み」 という)

 薬物療法は これらの過程に作用するものです。
 

 BPDの人に処方される薬には、

 抗うつ薬, 気分安定剤, 抗精神病薬などがあります。

 まず抗うつ薬は、

 神経伝達物質のセロトニンとノルアドレナリンを 活性化するものです。

 セロトニンは

 気分, 空腹, 体温, 性的行為, 睡眠, 攻撃性をコントロールし、

 ノルアドレナリンは

 敏捷性, 集中力, 攻撃性, 意欲, 自律神経に関わりのあるものです。

 抗うつ薬には、 三環系抗うつ薬, 選択的セロトニン再取り込み阻害薬,

 モノアミン酸化酵素阻害薬, 新規抗うつ薬の 4種類があります。

・ 三環系抗うつ薬 (TCA)

 三環系抗うつ薬は、

 セロトニンとノルアドレナリンの 再取り込みを阻害する働きがあります。

 シナプスのセロトニンとノルアドレナリンが増え、

 他のニューロンを 活発にする作用があるのです。

 アナフラニール, トフラニール, トリプタノール, ノリトレンなどがあります。

 副作用は、

 口の渇き, 疲労感, 尿が出にくい, めまい, 手の震え, 便秘, 吐き気

 などです。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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メンタライゼーションとBPD

2011年12月11日 19時51分00秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 BPDは メンタライゼーションの未発達が 原因で生じ、

 それが自我の問題 (特に弱い自我) を 引き起こすとされます。

 BPDの人は 興奮や混乱しているとき、 メンタライゼーションができず、

 心理的等価や見せかけモードを利用して、 自我を保とうとします。

 BPDの人が 衝動的な行動を起こすのは、 自己を守ろうとし、

 「見知らぬ自分」 と折り合いを付けようとする、

 絶望的なことと闘っているからです。

 BPDの人は、 否定的で不快な  「見知らぬ自分」 に圧倒されています。

 「見知らぬ自分」 を罰したり、 壊して もっと一貫した 自我を得るために、

 自傷行為をするのでしょう。

 「見知らぬ自分」 を 追い出そうとする場合は、

 「見知らぬ自分」 を 徹底的に破壊するため、 他者を攻撃することもあります。

 BPDの人が 荒れた人間関係を持つのは、 これが主な理由だといいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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MBTを通してみるBPD

2011年12月10日 21時19分56秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 子供は 自分が何者であるかという感覚を、

 親などの映し出しによって 養っていきます。

 自分が感じていることを 正しく映し出す人が 周りにいることで、

 自分の心理状態を理解し、 描写することを学びます。

 しかし 正確に映し出してくれる人が いないと、

 自分が感じていることについて 学ぶのは困難です。

 例えば 子供が怒っているときに、 母親が子供を笑い、

 脅えているみたいだと言ったら、 子供は混乱し、

 怒りが何かを 理解することが難しくなります。

 非承認的環境の一種です。

 育てる人が、 子供の感じることを理解できず、 または 感情を承認できないと、

 問題が引き起こされます。

 自分が感じていないことを 感じていると言われたら、

 自分の本当の感覚と 一致しない感覚が 発達し始めるかもしれません。

 自分自身が分離している、 もしくは 自分自身が疎外されていると

 感じるようになることがあります。

 四角いものを丸い穴に 無理やり押し込んでいる感じです。

 それを  「見知らぬ自分」 と表現します。

 本当の自分と あまりにも違っているのです。

 「見知らぬ自分」 は、

 子供に対する 養育者の否定的なイメージや、 欲求不満などの感情を

 映し出したものです。

 それは 不快なものなので、

 大抵はそれを消すために できる限りのことをしようとします。

 まず、  「見知らぬ自分」 を 自分の一部と認めて 保持しようとすると、

 自我に統一性がなく バラバラだと感じます。

 他者から映し出された感情なので、 支配されている 不安な気分になります。

 逆に、  「見知らぬ自分」 を取り除くため、

 否定的な感情を外に出すと (投影)、

 今度は外の世界が 自分に否定的な感情を抱いていることになり、

 不快な経験になってしまいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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MBTを支える理論

2011年12月09日 12時38分13秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 メンタライゼーションは 普通、 幼少期に徐々に 学んでいくものです。

 子供は 自分の気持ちや考えを、

 ミラーリング (鏡のように映し出すこと) の過程で 学びます。

 例えば 子供が泣いていると、

 親は 「悲しいの?  どうして悲しいの?」 と聞きます。

 親の質問と 子供への感情の関心によって、 子供の感情は 鏡に映し出され、

 認められ (承認され)、  泣くことは悲しいことを意味すると 理解します。

 感情を表す言葉が 与えられ、

 誰かが 理解や関心を示してくれることを 理解するようになります。

 子供が メンタライゼーションを完全に習得するには、 ふたつの初期段階を踏みます。

 ひとつは 「心理的等価」、 もうひとつは 「見せかけモード」 です。

 「心的等価」 の段階では 子供は、

 他者は自分と同じで、 同じことを感じると 信じています。

 他者や世界を、 自分の直接的な経験の 延長として感じます。

 全てのことが 自分のこととして感じられるので、

 圧倒されてしまうという 問題があります。

 (そのために 次の段階があります。)

 「見せかけモード」 の段階では、

 自分の心理状態は、 外界や自分以外の心理状態と 完全に切り離されます。

 全てのことが 非現実的に感じられます。

 基本的には解離と同じで、 不快で孤独な体験です。

 自分が実際に悲しくなくても、 悲しさがどういうことか 話すようなもので、

 悲しさを 「試着」 することができます。

 メンタライゼーションは、 このふたつの段階の バランスを保ちます。

 自分の世界と外の世界は 繋がっていながら、 別のものでもあるのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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メンタライゼーションに 基づく治療 (MBT)

2011年12月07日 20時52分12秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 MBT (メンタライゼーションに基づく治療) は まだあまり知られていませんが、

 将来的に有効な治療として 期待できるものです。

 アンソニー・ ベイトマンと ピーター・ フォナギーが 開発した治療法で、

 弁証法的行動療法に 似た部分もありますが、

 BPDとは何かという点で かなり異なります。

 MBTは、 自分が何者かという  「自我」 に焦点を当てます。

 BPDは、  「自我構造」 の弱さと 不安定な自己,

 自己理解の浅さによる 障害だとしています。

 MBTは 精神分析的治療法であり、

 弁証法的行動療法よりも  「会話療法」 なのです。

 治療者と話をして、 自己理解,

 他者との関係についての理解力 (メンタライゼーショ ン) を 深めていきます。

 メンタライゼーションとは、

 自分や人の行動は 心理状態, 考え, 気持ちや願望から起こる ということを

 理解する能力です。

 それぞれの行動は、 不意や任意に起きるのではなく、

 感情や考えに基づいて 起こるのです。

 BPDの人は、 心理状態がどのように 行動に繋がっているのかを、

 理解するのが困難だということです。

 衝動的に行動するとき 自分の気持ちや考えに 気付けなかったり、

 心理状態と行動の関係が 理解できないでしょう。

 MBTでは、

 他者の行動が どういう心理状態によって起こるかを 理解することも重要です。

 また、 心理状態と行動は 関係はあるけれども別個のものである、

 ということを 理解することも含まれます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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弁証法的行動療法の内容 (4)

2011年11月15日 23時39分01秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

3. 電話カウンセリング

 セッションの合間に 患者が助けを必要なときは、

 治療者が電話, メール, その他の方法で対応します。

 自殺の危機を減らす, 新しいスキルを 応用するのを助ける,

 治療者と患者の間の 問題を解決するためです。

4. セラピスト・ コンサルテーション

 患者を扱う治療者にも ストレスがかかるので、 治療者のための治療も必要です。

 治療者同士で 週に1回ミーティングを行ない、

 弁証法的行動療法の 様々な問題について語ります。
 

 弁証法的行動療法は、 科学的な 複数の臨床試験によって、

 他の治療法より 効果があることが証明されています。

 自殺企図や自傷行為, 怒りの問題, 薬物使用や摂食障害,

 うつ状態や絶望的な気持ちが、 従来の治療より 軽減することが分かっています。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 
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弁証法的行動療法の内容 (3)

2011年11月14日 20時28分37秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 対人関係を有効に保つスキル

・ 人間関係について 目標とすることを忘れない

・ 受け身にも攻撃的にもなりすぎず、 効果的に人に頼みごとをし、 頼まれ事を断る

・ 人の気持ちを承認し、 人には 正直に誠実に公平に接する

○ 情動制御スキル

・ 感情を効果的にコントロールする

・ 自分の感情を観察したり、 受け入れる

・ 感情を変動 (増加または減少) させる

・ 生活の中の 楽しいことを増やし、 自分を大切にし、

  身体と心の 要求を満たすことで、 感情にあまり 左右されないようにする

○ 苦悩に絶えるスキル

 困難な状況を切り抜けるまでは、

 自分の感情に耐えなければならない という場合があります。

・ 状況を さらに悪化させることなく、 困難な状況や感情を切り抜ける

・ 辛い体験から 気をそらす

  今の瞬間をもっとよく、 楽しくすることで、 危機を乗り切る

・ 現実を ありのままに受け入れる

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 

 詳細は下記の記事もご参照ください。

対人関係
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55275093.html

情動制御(調節)スキル
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html

苦痛耐性スキル
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55287176.html
 
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弁証法的行動療法の内容 (2)

2011年11月13日 19時39分03秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

2. スキル・ トレーニング

 人生を改善し、 目標を達成するのに必要な スキルを学びます。

 スキル・ トレーニングでは、 数人の患者グループを 治療者が指導します。

 前回出された 「宿題」 の復習をし、 次に 新しいスキルを学びます。

 弁証法的行動療法のスキルには、 マインドフルネスのスキル,

 対人関係を有効に保つスキル, 情動制御スキル, 苦痛に耐えるスキルがあります。

○ マインドフルネスのスキル

 「マインドフルネス」 というのは、 意識をはっきり持ち、

 その瞬間瞬間に 何が起きているかに 集中している状態、

 または  「今ある現実に対する 意識を絶えさせない」 状態です。

・ 判断を下すことなく、 今という瞬間に 意識を集中する

・ 今ここで 起こっている知覚 (視覚, 聴覚, 臭覚, 触覚) に気付く

・ 今起こっていることの  「事実のみ」 を描写する

・ 今自分がしていることに 完全に打ちこむ

・ 一度に ひとつのことだけに集中して、 うまくいくやり方だけを使う

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕
 

 マインドフルネスの詳細については、下記の記事もご参照ください。

http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/55263849.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45269689.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/45393819.html
 
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弁証法的行動療法の内容 (1)

2011年11月12日 19時37分28秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 弁証法的行動療法には 5つの目標があります。

1. 生きる価値のある人生に向けて 努力する意欲を起こす

   自傷行為や自殺企図などをやめる

2. 目標を達するための スキルを学ぶ

3. 前進と改善を促す 治療環境を作る

   患者が 自分の環境を模索する

4. 治療者が 患者を助ける意欲と スキルを維持する

5. 治療で学んだことを 現実の世界で使えるようにする

 これらの目標を達成するため、 4つの構成要素があります。

1. 個人療法

2. スキル・ トレーニング

3. 電話カウンセリング

4. セラピスト・ コンサルテーション
 

1. 個人療法

 通常週一回、 約1時間行なわれ、 日々の生活の問題に 対処するのを助けます。

 ダイアリーカードという用紙に、

 毎日どう感じているか (惨めか、 気分がよいかなど)、

 自傷行為や自殺企図したい 気持ちになったか、 実際にそれを行なったか、

 薬をきちんと飲んでいるか、 などを記入します。

 ダイアリーカードをもとに、 治療者と一緒に、

 「治療の優先順位」 を決めて、 何に集中すべきかを考えます。

 大抵は、 命を脅かすような行動を コントロールすることから始めます。

 治療の大前提は、 死んでしまった人は 助けられないということです。

 次に、 患者と治療者の  「治療妨害行為」 について話し合います。

 セッションに遅れる, 話をきちんと聞かない, 大事なことを忘れる、

 などがあります。

 患者が生活を送る 妨げとなるものについても 話し合います。

 薬物やアルコール, うつ, 失業, ホームレスの状態、 などです。

 患者が問題を解決し、意欲を維持し、望ましい人生に向かうのを助けます。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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弁証法的行動療法における 受け入れ、 変化

2011年11月11日 20時44分33秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

○ 承認

 弁証法的行動療法では、 患者が治療者から 理解されていると感じられるように、

 「承認」 をします。

 患者がこう思ったと言ったら、 本当にそう思っているのだと 治療者は認め、

 心から関心を持って 理解していることを、 患者に伝えるのです。

○ 受け入れ

 患者が、 自分自身, 世の中, 自分の感情, 他の人を 受け入れられるために、

 治療者は  「マインドフルネス (気付き)」 などの スキルを教えます。

 受け入れるということは、

 賛同したり好きになることではなく、 服従することでもありません。

 何かを変えようと もがくのをやめて、 それを今の状態のままに しておくことです。

 過去を変えられないように、 どんなに頑張っても 気持ちを変えられないことがあり、

 それを変えようとすれば 余計苦しくなるだけです。

 それを無理に変えることをやめ、

 少なくとも今のところは、 あるがままの状態に しておくことなのです。

 もちろん、 実際に変えられることを 変えてはいけないということではありません。

 動揺したときに 自分を落ち着かせる方法や、

 対人関係や色々な問題を 解決する方法を見つけることはできます。

○ 変化

 弁証法的行動療法は 問題を解決する治療法でもあります。

 自殺願望のあるBPDの人は、 当然何か 変えなければいけないことがあるはずです。

 変化を伴わない受け入れも、 受け入れを伴わない変化も、 助けにはなりません。

 弁証法とは、 受け入れと変化の バランスを取ることです。

 正反対の事柄を ひとつにまとめて、 解決に導くものを求めていくことです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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弁証法的行動療法の成り立ち (2)

2011年11月10日 23時02分54秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
(前の記事からの続き)

 「生物社会的理論」 の 環境的な要因には、  「非承認的環境」 があります。

 BPDの人は 自分の感情とどう付き合えばよいのか、 学べない環境で育っています。

 感じたことを 間違っていると言われたり、

 感情的になると 罰を与えられたり、 無視されたりします。

 抱いた感情を 拒否されたり怒られたりすると、

 自分の感情を恐れるようになるでしょう。

 家族の中で 自分だけが違うと感じて 育つだけで、 非承認になる場合もあります。

 自分はやっかい者、 部外者と感じてしまうのです。

 生物社会的理論では、 感情の脆弱性と非承認的環境の 両方がそろって、

 初めてBPDを引き起こすのです。

 またこの理論では、 感情の脆弱性も非承認的環境も 悪いわけではないとしています。

 感情的である人は、 情熱的で、 人の痛みをよく理解し、 繊細です。

 それが悪いことなど 何もありません。

 同時に、 あまり感情的でない人が、

 非常に感情的な子供との 接し方が分からないとしても、

 その人を責めるべきではありません。

 親や周りの人は、 どうすればよいか分からないだけで、

 傷つけたり動揺させたり しようとしているわけではないのです。

 非承認的環境と 感情的な子供との間で、 悪循環が起きているかのようです。

 このようなことが、 感情が脆弱な人に 繰り返し起こると、

 感情をコントロールするのが困難になり、

 自分の感情に耐えられないと 感じるようになります。

 そして 自分の感情から逃れるために、

 自傷行為や自殺企図を するようになってしまうのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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弁証法的行動療法の成り立ち (1)

2011年11月09日 21時04分37秒 | 「BPDサバイバル・ガイド」より
 
 弁証法的行動療法は、 ワシントン大学のマーシャ・ リネハンによって、

 自殺願望のある女性に 効果がある治療法として、

 1970年代~80年代前半に 開発されたものです。

 生きていたいと思えるような 人生を築く、 手助けをする治療です。

 自殺願望を抱えている状態は、 真っ暗な部屋の中で 出口が見えないようなものです。

 ただ、 ひとつのドアだけが うっすらと見えています。

 これが  「自殺のドア」です。

 自殺のドアの前にいると、 他のドアが見えなくなってしまうのです。

 問題は、 自殺のドアの向こうに 何があるか分からないということです。

 今よりも酷い世界が あるかもしれず、 これはかなり危険な賭けです。

 弁証法的行動療法は このドア以外のドアを探し、

 生きる価値のある人生を 見つけていくことです。
 

 弁証法的行動療法は  「生物社会的理論」 に基づいています。

 BPDは 生物的な要因 (生まれつきの感情の脆弱性) と、

 社会的・ 環境的な要因によって 引き起こされるという理論です。

 感情の脆弱性には、 次の3つがあります。

・ 感情が敏感

 他の人が感じないような 出来事にも反応してしまう。

 人がわずかに 不快な表情を見せただけで、

 自分が批判されていると感じ、 傷ついてしまう。

・ 感情が激しい

 物事に対して 非常に強く反応する。

・ 感情が元に戻るのに 時間がかかる

 感情的に反応すると なかなか落ち着かない

〔 「境界性パーソナリティ障害  サバイバル・ガイド」 (星和書店) より 〕

(次の記事に続く)
 
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