「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

切ない……

2006年11月28日 11時09分05秒 | 心理
 
 先日、僕が書いた記事に あるトラックバックがされました。

 記事の内容と 全然関係のないもので、

 かといって アダルトサイトや 出会い系などの 悪質なものでもなく、

 何だろうと 思っていました。

 後日、このTBの主は 他のブログにも 大量のTBやコメントを付けていて、

 一部の人達から 厳しい批判を受けていた ということが分かりました。

 実はこの人は うつ病で通院している人で、

 働くことができないため お金がなく、

 医療費の支払いだけで 汲々としているのでした。

 そこでこの人が考えたのは、自分のブログのアフィリエイトで

 少しでも 収入を得られないか ということでした。

 それで 多くの人に ブログへやって来てもらうために、

 TBやコメントを あちこちに付けていた というのです。

 でも、非難されて 本人は反省しきりで すっかり落ち込み、

 体調も崩してしまったようです。

 アフィリエイトで いくらの収入に結びつくのか 分かりませんが、

 こんなことまで せざるを得ないなんて、

 本当に切ない 思いがしました……。

 病に苦しむ人が、経済的にも さらに逼迫されたり、

 周囲の無理解で 肩身が狭い思いを したりしないよう、

 社会のシステムや 人々の理解が 進んでいってほしいものです。
 

 下記は その人の書いた記事です。

(多くの励ましのコメントが 付いているのが救いです。)

http://yury.blogzine.jp/blog/2006/11/tb_63ff.html

http://yury.blogzine.jp/blog/2006/11/post_0620.html
 

(ところで、この人の場合 精神保健法32条の適用で

 通院医療が無料にならないのか、コメントを付けてみました。)
 
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卵かけごはん

2006年11月27日 19時30分45秒 | Weblog
 
 卵かけごはんは、卵をかき回してから ご飯にかけるか、

 ご飯の上に 溶かない卵を乗せるか、よく話題になりますね。

 家は子供のときから、日曜日の朝は必ず 納豆と卵かけご飯でした。

 僕は 卵の白身がなくなるまで よくかき混ぜて、

(立った泡は 納豆に入れる)

 熱いご飯の真ん中に 箸で穴を開け、そこに卵を流し込むものと 決まっていました。

 生まれてこのかた、この食習慣は 揺るぎない定番です。

 混ぜない卵を ご飯に乗せるなど、あり得ないことでした。

 ところが 先日テレビで、吉野屋の社長が

 牛丼の正しい食べ方を 披露していました。

 まず 牛肉を一切れ取って、肉だけを味わう。

 次に ご飯と一緒にほうばる。

 そして、牛丼の真ん中に 卵を溶かずに乗せる。

 醤油をかけて かき込む、というものでした。

 今 吉野屋では 毎月1日から5日間 限定で牛丼を出していますが、

 先日 この食べ方を 試してみました。

 生まれて初めて、かき回さない卵を 丼に乗せて食したわけです。

 これが …… うまかった!!

 とろりとして、卵の味が生きていて、とても 美味だったのです。

 たしかに、親子丼などの卵とじは

 半熟や生の部分が残っているのが うまくて好きです。

 そこで 今度は、卵かけご飯も かき混ぜない卵を乗っけて 食べてみました。

 うまい …… !!

 これに はまりましてσ (^^; )。

 今日もまた 白いご飯の上に 生卵を割って乗せ、醤油をかけて いただきました。

 白身のとろとろ加減と、黄身のまったりした味わいが 絶妙な醍醐味です。

 長年に渡る 強固な食習慣が、いとも簡単に 変わってしまった 顛末でした。

 皆さんは そんなことはありませんか? 
 
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「敬愛なるベートーヴェン」 (2)

2006年11月26日 11時15分39秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42612256.html からの続き)

 第九初演の日、アンナは、

 難聴に苦しむ ベートーヴェンの 耳代わりになって、彼の指揮を 陰でリードします。

 第九自体が 感動的な音楽ですが、

 このフィクションの演出は さらに感動を大きくします。

 指揮台に立っている ベートーヴェンは、

 演奏後の 聴衆の大喝采の音が 聞こえなかったと言われていますが、

 そのエピソードも 盛り上げられています。

 そして、この山場の 名シーンの後も、ベートーヴェンとアンナは

 激しくも いとおしい 関係を深めていきます。

 病に冒されて 痛ましい最期を迎える ベートーヴェンに、

 家族のように、恋人のように、寄り添うアンナでした。

 
 実は僕は、ベートーヴェンの大ファンです。

 拙著にも書きましたが、かつて僕は 大きな挫折の時期がありました。

 そのときに救ってくれたのが ベートーヴェンの音楽であり、

 ベートーヴェンをモデルにした小説 「ジャン=クリストフ」 (ロマン=ロラン) でした。

 座右の書 という以上に、僕の 「魂の書」 というべきものになっています。

 「苦悩の英雄」 である ベートーヴェンでしたが、

 この映画によって ベートーヴェンは、

 もっと身近な 人間らしい存在に なったような気がします。
 
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「敬愛なるベートーヴェン」 (1)

2006年11月25日 16時17分45秒 | 映画
 
 作曲家が書いた楽譜を 清書する、写譜師 (コピスト) という仕事があります。

 ベートーヴェンには 3名のコピストがいて、3人目は誰か 判明していないそうです。

 この映画は、その3人目を 若き女性作曲家とした フィクションです。

 1824年、ベートーヴェン (エド=ハリス) は 

 交響曲第九の初演を 4日後に控えても 楽譜が完成せず、

 野獣のように 苛立っています。

 そこに、依頼されたコピストとして アンナ (ダイアン=クルーガー) が訪れます。

 最初は 若い女など認めない ベートーヴェンですが、

 アンナの才能を見込んで、共に創作に取り組みます。

 やがて 師弟愛を超えた感情で 結ばれていく二人です。
 

 「楽聖」 と奉られるベートーヴェンですが、この作品では

 粗野で下品な 実に人間臭い男を、エド=ハリスが 演じています。

 卑俗で天衣無縫な モーツアルトは すでに有名ですが、

 このような姿の ベートーヴェンが描かれるのは 初めてではないでしょうか。

 散らかりきった部屋で、ネズミやゴキブリも平気な ベートーヴェンは、

 人の迷惑も考えず 隣人からは クソ野郎 呼ばわりされています。

 がっしりしているものの 中年太りのお腹、ときに猫背気味で 傍若無人。

 しかし 一方で、音楽家は 神に最も近い存在だと 言い切る彼は、

 神の言葉としての 音楽を作り出し、人々に伝えるのです。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42634908.html
 
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「武士の一分 (いちぶん) 」 (2)

2006年11月24日 11時29分49秒 | 映画
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42544883.html からの続き)

 主演の木村拓哉は、テレビとは全く違う 名演でした。

 貧しい家に住み、庄内弁を話し、腰の低い 田舎侍。

 光を失って 焦点の合わない視線を 見事に表現します。

 そして、不貞を働いた妻を 見えない目で 睨みつけるシーンでは、

 氷のような瞳に 鬼気迫るものを感じました。

 剣術も半端でなく 様になっていると思ったら、

 子供の頃から 剣道を習っていたそうです。

(僕も 高校,大学で 剣道をやっていたので、

 木刀の素振りを 見ただけで分かります。)

 山田監督は昔 木村拓哉を見たとき、

 侍のようだと 感じたといいます。

 高倉健を 初めて見たときと 同じだったとか。

 何の役をやっても同じ “キムタク” では なかったんですね。

 役者としての 木村拓哉を見せてもらいました。

 作品作りにも熱意を見せ、

 島田との果たし合いの場面で 加世のたすきを鉢巻きとして 額に巻いたのは、

 キムタクのアイデアだったそうです。

 新之丞の使用人・特平が それを見て、

 そのあとの “粋な計らい” につながることに なったのでしょう。
 

 ところで、映画のキャンペーンのために キムタクが地方へ行ったとき、

 司会者が 「武士のいちぶ」 と紹介して 困り果てたとか。

 “武士の一部” って どこなんだよ という感じですね (^^; )。
 
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「武士の一分 (いちぶん) 」 (1)

2006年11月23日 13時16分28秒 | 映画
 
 山田洋次監督,藤沢周平原作の、時代劇三部作。

 「たそがれ清兵衛」 「隠し剣 鬼の爪」 に続き、

 木村拓哉主演で その最後を飾ります。

 山形の下級武士である 三村新之丞 (木村拓哉) は、

 妻・加世 (壇れい) と つましく 楽しく暮らしています。

 藩主の毒味役を勤める 新之丞は、ある日 毒に当たって 失明してしまいます。

 新之丞の上士・島田藤弥は、新之丞の身分を保証するという引き換えに、

 加世を寝取ってしまいます。

 新之丞は 武士の一分をかけて、島田に復讐を誓うのです。

 ストーリーだけを見れば いたって単純。

 シーンも多くは、二部屋しかない 新之丞の狭い家の中。

 派手な演出や 凝ったカメラワークが あるわけでもありません。

 しかし 山田監督の視線は、そこに深いドラマを凝視し、

 観る者の心に ぐいぐいと迫ってきます。

 随所にユーモアを 散りばめながら、

 人間の内面を 力強く描写する名作です。
 

 障害者福祉の概念など なかった時代、

 失明して 人の情けと施しを受けなければ 生きていけなくなった新之丞は、

 武士の誇りを砕かれ、人間としての価値も見失い、

 自ら死のうとしますが、妻・加世の 愛情に救われます。

 しかし その加世は、新之丞を守るために 島田の罠に落ちていくのでした。

 愛情と 武士の一分の 葛藤は、真に迫って 涙腺を刺激されました。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42574517.html
 
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神宮外苑・絵画館に隠し部屋? 

2006年11月20日 21時37分55秒 | 心子、もろもろ
 
 このブログでも 紹介したように
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/17513952.html )、

 神宮外苑は 心子とのメモリアルな場所です。

 銀杏並木が色づく頃に、心子と行ったものでした。

 日も暮れて、ライトアップされた 絵画館をバックに、

 長いキスをした 想い出もあります (^^; )。

 その絵画館に 隠し部屋があった という記事が、

 先日の読売新聞に 載っていました。

 昨年7月、男性職員が 資料整理をしているとき、

 倉庫の奥に 小さな木の扉を ふたつ見つけたといいます。

 扉の先は 正面玄関の階段下に当たる部分で、

 幅30メートル × 奥行き1.5メートル、

 幅1.5メートル × 奥行き6メートル の

 ふたつの部屋が 出てきたのだそうです。

 中からは 段ボール箱 約80個分の資料が 発見されたとのこと。

 かなり貴重な資料も 含まれているらしい。

 絵画館には 勤続30年の副館長をはじめ 12人の職員がいますが、

 この部屋の存在は 聞いたことがないということです。

 何のための隠し部屋だったのか、ミステリアスなムードを かき立てられますね。

 なお 発見された資料の一部は、来月3日まで 展示されているそうです。
 

 今年もまた 黄葉の季節。

 来週 銀杏並木を見てくるつもりです。(^^)

 
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物書き冥利

2006年11月19日 16時17分30秒 | 「境界に生きた心子」
 
 新風舎を通して、久しぶりに 読者の方からの お手紙が届けられました。

 娘さんがボーダーであるという お母さんからのものです。

 今までにも何通か 同じ立場の方からの お便りがありました。

 ボーダーの患者さんを 家族に持って 苦しんでおられる方が、

 沢山いらっしゃる ということだと思います。

 拙著を読まれて、苦しんでいるのは 自分たちだけではない ということが分かり、

 救われたり 癒されたと 書いてくださいました。

 まだ一般的に ボーダーの認知度は高くなく、

 人にも言えずに 辛い日々を送っておられるのでしょう。
 

 ボーダーご自身の方々からの メールやお手紙も多くあります。

 拙著を読まれて 自分のことのように大泣きし、何回も読み直されたとか、

 拙著を いつも枕元に置いて、辛い時や悲しい時、

 折に触れて 読み返してくださるという方もいます。

 こういう方々のお役に わずかでも立てているなら、

 拙著を書いた価値があるし、心子も喜んでくれている と思います。

 ほんの少しでも 拙著が支えになれれば……。
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(14.最終回)

2006年11月17日 19時15分49秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42320802.html からの続き)

 病院のベッドで 眠っている不動。

 包帯が痛々しい。

 不動が 意識を取り戻すと、美由,シンシア,啓輔が見守っている。

 道子も座っている。

 シンシアは 不動に抱きつき、啓輔は 頭を下げて礼を述べる。

 美由は 不動をすっかり見直して、今まで反発していたことを謝る。

 シンシアは、この人は自分の命を懸けても お客様を守る人だと話す。

 不動は、儲けさせてくれるお客を 死なせるわけにはいかないと うそぶく。

 微苦笑する美由。

 啓輔は 道子にも 不動に礼を言うよう促す。

 見ると、道子の手が 土で汚れている。

 さっきは道端で 何をしていたのかと 道子に尋ねる。

 道子は ごそごそと懐を探り、何かを持って 啓輔に差し出す。

 訝る啓輔。

 道子の手を開くと、中には 四葉のクローバが握られていた。

「これを探していたんですか?」

 と聞く美由。

 啓輔は驚く。

「まさか……俺が、泣いて 『元に戻して』 って言ったから……?」

 はっとする美由。

 啓輔は クローバを受け取って 道子を抱き締める。

「お袋……今のままでいいよ。

 もう どこへも行かないで、ただ、いてくれるだけでいい……!!」

 胸が一杯になる 美由たち。
 

 美由は 不動の車椅子を押して、病院の庭を散歩する。

 啓輔が 介護福祉士学校へ通うことにしたそうだと、不動に話す。

 啓輔は経験を生かして、将来は 人の役に立ちたいという。

 啓輔は 新しい生き甲斐を見つけて 生き生きしてきた。

 人間はどんなときでも 頑張っていけるということを、

 啓輔は 不動から学んだという。

 美由も 不動から大事なことを 教えてもらった。

 ビジネスは 決してクールなものではない。

 ビジネスには 理念が必要だ。

 理念とは、人の心なんだと。

 不動は 怪我が治るまで、美由に 身辺の世話を命ずる。

「たっぷり こき使ってやる。

 これから楽しみだ」

 と 薄ら笑いをする不動。

 美由は ぞっと身震いするのだった。

(終)
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(13)

2006年11月16日 16時58分17秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42297647.html からの続き)

 翌日の早朝。

 啓輔は 道子の姿が 見えないことに気付き、慌てて 周囲を探し回る。

 そのころ不動は 競技用車椅子で 朝のトレーニング中。

 美由から不動に 携帯電話がかかってくる。

 美由は、道子が行方不明だという 連絡があったことを告げる。

 道子を探しに行かせて欲しいと 頼む美由。

 不動は、それはサービス一覧にはない と言う。

 怒って食いつく美由に、不動は言い放つ。

「だから、無料だ!」

 不動は携帯を切って、車椅子を走らせる。

 出社まで時間があることを確かめると、啓輔の家の方向へ行ってみる。

 その間、美由や啓輔たちも 必死で道子を探している。

 不動は 辺りを探しながら走る。

 やがて、道端で老婆が しゃがんでいるのを見つける。

 道子だ。

 不動は 安堵の笑みを浮かべて、道子に近づいていく。

 そこに 美由もやってくる。

 道子が ふらふらと歩きはじめたとき、

 後方から バイクのエンジン音が響く。

 バイクは左右に傾きながら、道子のほうへ走っていく。

 酔っぱらい運転か!? 

 不動は急いで 道子のほうへ走る。

 バイクが蛇行して 道子は轢かれそうになる。

 悲鳴を上げる美由。

 不動は思い切って 車椅子でバイクに突進する。

 バイクは 車椅子のバンパーに激突し、横滑りになって 火花を散らす。

 間一髪で助かる道子。

 車椅子は吹っ飛ばされ、不動は投げ出される。

 泣き叫ぶ美由。

 血吹雪が散り、不動は意識を失う。

(続く)
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(12)

2006年11月15日 22時26分40秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42254546.html からの続き)

 ある日、啓輔と美由は、道子の車椅子を押して 散歩に出る。

 今日は これも契約だ。

 料金をもらうことを 恐縮する美由だが、

 啓輔は 美由を買ったのだから 付き合ってもらうと笑う。

 道子は ほんのりとお化粧をしている。

 歳をとっても お化粧くらいするのは 当たり前だと、美由が勧めたのだ。

 桜の花びらが 舞い散る下、啓輔は 道子をおんぶしてみる。

「戯れに 母を背負いて……」

 すっかり か細く 軽くなってしまった 道子。

 啓輔は このまま、いつまでも、どこまでも、

 歩いていきたい と思った。

 啓輔は ぽつぽつと語る。

「お袋が倒れてから 1年余りは、

 夢に出てくるお袋は 病気になる前の 元気な姿だった。

 その後次第に、車椅子に座ったお袋が 夢に出てくるようになった。

 それも 穏やかな表情で」

 美由は 

「ありのままのお母さんを 受け入れられるように なったんですね」

 と言う。

 微苦笑して 頷く啓輔。

「……でも この前、夢のなかのお袋は 病気が治っていた……」

 啓輔の目から 涙がこぼれる。

「お袋が元気なときには、何も親孝行ができなかった……

 もし、神様がいるんなら、一日でもいい、

 奇跡を起こして、お袋を 元気な姿にしてほしい……」

 美由は 啓輔の本音を聞いて 胸が詰まる。

「お袋を、元に戻してほしい……!

そしたら、死ぬほど 親孝行します……!

元に戻して……!!」

 道子の手を握り、涙を堪える 啓輔。

 美由は 啓輔を労る。

「泣きたいときは 泣いてください。

 涙はそのために あるんだから」

 美由の目にも 涙が溢れる。

 道子を抱き、声を出して泣く 啓輔。

「啓輔……」

 と 小さく呟く道子。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42320802.html
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(11)

2006年11月14日 18時08分56秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42225841.html からの続き)

 日曜日。

 体育館で、車椅子に乗った 障害者アスリート達の

 ラグビーが 繰り広げられている。

 観客席で 驚いて見ている 美由と啓輔。

 「ウィルチェアー・ラグビー大会」 という 横断幕がかかっている。

 選手たちは素早い動きで、ボールを 前後左右にドリブルしたり、パスしたりする。

 不動は 強力なオフェンスとして、装甲車のような バンパーが付いた車椅子で、

 相手に 強烈な体当たりを食らわせる。

 ウィルチェアー・ラグビーは、以前は 「マーダー(殺人)ボール」 と言われたほど

 激しい格闘技なのだと、シンシアは 美由と啓輔に説明する。

 不動の隆々たる筋肉に 汗がほとばしる。

 目が釘付けになる 美由。

 シンシアは 子供のようにはしゃいで 不動たちを応援する。

 美由と啓輔も 次第に高揚していく。

 障害者なのに こんなことまでできるとは。

 シンシアは、障害者だからできるんだ と笑う。

 不動の活躍により、試合は 不動のチームが 優勝を勝ち取る。

 飛び上がって 喜ぶシンシア。

 美由,啓輔も 不動たちの姿に 心から感動する。
 

 帰り道、シンシアは 不動のことを話す。

 不動は元々、チェーンの飲食店を経営する 猛烈な商売人だった。

 シンシアは従業員として 不動と知り合い、その後 結婚した。

 不動は 学生時代から ラグビーをしていたが (顔の傷も ラグビーでできた)、

 試合中に 大怪我を負って 下半身麻痺になった。

 不動は 全てに絶望して、シンシアにも当たり散らし、自殺も考えた。

 しかし 次第に立ち直っていき、

 自分にしか できないことはないかと 考えるようになった。

 そして、障害者や高齢者の 介護ビジネスを思いついた。

 人間は どんなに困難な状況になっても、理想を持って 頑張れるのだと、

 今の不動は 信じているという。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42297647.html
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(10)

2006年11月13日 21時55分29秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42179306.html からの続き)

 野々山宅へ 訪問に来た 美由とシンシアに、

 啓輔は 心から礼を述べる。

 啓輔は 介護に対して 暗いイメージしかなかったが、

 元気が出る介護が できるようになった。

 似合わぬエプロン姿で 一生懸命 道子の世話をする啓輔に、

 美由は 微笑ましいものを感じる。

 バケツをひっくり返したり、料理の鍋を 焦がしたりしながらも、

 啓輔は笑って 道子の世話を焼く。

 啓輔は 最近、道子と穏やかなときを 共有するようになったと言う。

 ただ 並んで 座っているだけだが、

 今まで こんなふうに 母の顔を じっくり見たこともなかった。

 シンシアは、それは 家族に与えられた 「とき」 なのだと言う。

 それを 大切にしてほしいと。

 啓輔は 庭を見ながら 幼稚園のときのことを 思い出す。

 昔 ここで お袋と一緒に 四葉のクローバを探した。

 狭い庭で やっと見つけた 四葉のクローバを、

 啓輔は 近所の友達に見せて回った。

 そのうち クローバの取り合いになり、葉っぱが千切れてしまう。

 啓輔は泣きじゃくって 家に帰り、

「元に戻して!」

 と母に泣きすがった。

 母は 千切れたものは 戻らないんだよ と静かに言い、

 悲しむ啓輔を いつまでも抱いて 一緒にいてくれた。

 啓輔は そのまま母の胸で 眠ってしまった……。

 昔は そんな 「とき」 があったんだなあ と、啓輔は感慨にふける。

 美由は 啓輔と道子を見て、逆に 自分のほうが 心が癒される。

 やっぱり この仕事をやっていきたいと、美由は思い直す。

 シンシアは 美由と啓輔に、今度の日曜日、

 リフレッシュするために 社長の試合を 応援に行こうと誘う。

 「試合?」

 美由と啓輔は 意味が分からない。

(続く)
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(9)

2006年11月12日 14時03分45秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42148337.html からの続き)

 ある日の 野々山宅。

 道子が下半身裸で、おむつを抱えて 庭をウロウロしている。

 啓輔は 頭に血が上るが、

「お母さんのすることには 必ず意味がある」

 という 美由の言葉を思い出し、一息ついて考える。

 道子は 粗相(そそう)をして、それを知られたくなくて、

 おむつを隠そうと しているのではないか?

 道子にもプライドがある。

 啓輔は 道子の腰を 自分の上着で被って、道子に耳打ちする。

「年を取れば、たまには チョロッと漏れるくらい 誰でもあるよ。

 実はな、内緒だぞ、俺も ときどき漏らすんだ」

 道子は

「なんだ、お前もか」

 と安心する。

 啓輔は 道子を風呂に入れて 体を洗う。

 細くなった道子の背中を 流していると、道子は

「ありがとう……」

 と呟いて 微笑みを見せる。

 驚く啓輔。

 道子が こんな豊かな表情を見せたのは、発病してから 初めてのことだ。

 啓輔の態度が 変わることによって、道子の気持ちも落ち着き、

 いわゆる痴呆の “問題行動” が少なくなった。

 “問題行動” を作っていたのは 道子ではなく、実は 啓輔のほうだった。

 道子は困惑して 心と行動が 乱れていただけだったのだ。

 道子の気持ちを理解せず、どんなに傷つけていたか。

 道子に深く詫びる 啓輔。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42225841.html
 
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「車椅子社長・猛烈ケアビジネス」(8)

2006年11月11日 14時19分24秒 | 車椅子社長/無意識の彷徨/コンビンサー
 
( http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42124828.html からの続き)

 美由は 終日、不動のトイレ介助や 身の周りの世話をする。

 しかし 尊大な不動は ありがとうの一言もない。

「俺は お前に給料を払って 修行をさせてやっているんだ」

 と言う不動。

 美由は、

「私が行けば 啓輔はとても喜んでくれる。

 ありがとうの一言が お金よりありがたい」

 と口を滑らせる。

 不動は、美由が 契約外のサービスを 続けていることを察して 激怒する。

 美由も つい逆ギレして、

「私は もっと普通の お年寄りや障害者の人の お世話をしたい」

 と不満を述べる。

「普通の?」

 と突っ込む不動。

 美由は 痛いところを突かれ、はっとする。

「 “普通の” 障害者は 心が優しいか?

障害者は 頭を下げながら 生きていくか?

強欲で 威張った人間は “障害者らしくない” ってか?」

 美由は 頭をハンマーで叩かれたような ショックを受ける。

 美由は 心の中に、

「弱い障害者を 助けてあげることで 満足している」

 という意識が あったのではないかと 気付かされる。

 不動は

「貴様のような奴に 障害者を介護する 資格はない!!

障害者を 暮らしにくくしているのは 町の階段や段差じゃない、

 貴様の “心のバリア” だ!!」

 と 美由を恫喝する。

 美由は 返す言葉もなく、自己嫌悪の涙を流す。
 

 自分に 介護の仕事をする資格はない と落ち込む美由。

 シンシアが 美由に声をかける。

「皆、必ず一回は 社長にやられる。

 それを どう受け止めるか、あなたの宿題」

 シンシアの言葉を 噛みしめる美由。

(続く)
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/42179306.html
 
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