トランプ政権が、TPP交渉復帰を示唆した。
トランプ大統領は、大統領選前から一貫してTPPのような集団的な枠組みを嫌って、経済・外交・軍事を含むすべてを2国間協議で行うことを明言してきた。そこには彼のビジネスマンとしての成功体験が背景にあるものと思う。ビジネスの世界ではあらゆる手段を駆使してでも勝利することが全てであり、競合他社とWin Winの関係を築くことなどトランプの辞書にはなく、トランプ王国を形成する会社には日本のゼネコンのように、競合他社との共生を目指す仕組みはないのではないかと推測される。2国間協議では交渉術と恫喝等の手段によって、相手国には不利な条件で解決を図ることが可能であり、自動車をアメリカが輸入する場合を例にするならば、ドイツからは2%の関税で、日本からは20%の関税で、というように相手国との力関係によって二重・三重の基準で決定されることすら予想されるものである。これは、大航海時代以降に先進国が砲艦外交によって後進国に不平等条約を押し付けた手法に等しく、現代社会では容認できないものと思う。今回のTPP交渉復帰示唆の背景には、トランプ政権内部でウオール街出身の国際派が台頭したことにより、集団的な枠組みに参加して各国と平等な関係を築かなければ、アメリカが国際的な信義と指導力を失うであろうことを大統領自身が自覚した結果であるならば幸いと思う。
トランプ政権が経済的な枠組みでは集団的な協調関係に復帰したとしても、中国・北朝鮮問題ではいまだに2国間協議での解決を捨てていないものと思う。頭越しの解決で日本がバスに乗り遅れないためにも外務省の奮起を期待するところである。