年内にも統合防衛戦略が策定・公表されることが決定的となった。
統合防衛戦略は有事において3自衛隊が統合して対処するための指針となるもので、国家安全保障戦略及び防衛大綱という政治部分(シビリアンコントロール)を遵守しつつも、軍事的な側面が強い対処計画を自衛隊の制服組が中心となって定めることとなるのであろうし、国家安全保障戦略を遂行するために不足する装備等にも記述が及ぶことも予想される。計画が公表された場合、国会で計画について質問される機会が増えると思うが、現在では国会の審議・質疑に制服を参加させないという取り決めがあるために答弁には防衛省の官僚が当たることになると思う。国家が行う有事対処では、事態解決のために力を集中するために緊急度の低い地域から人員・装備を抽出するのが一般的であり、人員・装備を抽出された地域のサービスや治安が一時低下することは避けられない。軍事行動も例にもれず、自衛隊の現有兵力では全国土・全国民を等しく防衛することは不可能で、防衛の空白地域や戦術上の放棄地域が生じるのはやむを得ないと思う。しかしながら"木を見て山を見ない野党議員""地域を優先する与野党議員""保身を優先する防衛官僚"による論議では、せっかくの純軍事的な制服の計画も、国会主導の広く薄い防衛計画に変貌してしまうことが懸念される。一党独裁国家を除けば、予算等の軍政は国会が、武力行使の軍略は政権指導者に与えるのが一般的であるが、80年間軍事オプションを行使しなかった日本では、軍政・軍略の棲み分けが不明確になっているのは憂うる事態と思う。
国民の安全確保に直接の責任を有する制服組の意見を除外して、永田町言葉による隔靴掻痒の議論の下に統合防衛戦略が策定されることを防ぐためにも、国会論議への制服参加を認めるべきであると考える。