小平奈緒選手がピョンチャン五輪女子500mで念願の金メダルを獲得した。
挫折を乗り越えて頂点に立った小平選手は素晴らしいと思うが、それ以上に素晴らしいと思えるのは所属先の相澤病院では無かろうか。小平選手が後顧の憂いなく強化に取り組めた背景として、地元選手の成長のためにスポンサーとなった同病院のサポートを見逃すことはできないと思う。病院の仕事はさせない、広告塔として使用しない条件で、給料と強化・遠征費を払っていると報道されているが、善意の、無償のスポンサーとしては理想的であると思う。実業団やプロチームを抱える企業は多いが、本業の経常悪化によるスポーツ部門の廃止や縮小が幾度となく報じられ、所属選手は移籍や引退を余儀なくされる場合もあったし、スポーツ選手の後援自体が旦那衆のタニマチと同義に捉えられ批判されることもあった。後世に名を遺す中世の西欧芸術家の多くが、王族・教会・富豪の庇護の下に成長を遂げたことは知られているが、現在の日本では特定の人間に対する厚遇は悪とみなされ、受難者への慈善として広く・薄く恩恵を与えることが善とされている。テレビでは年商〇〇億円の富豪の豪奢な生活が伝えられることが多いが、それらの人々が芸術家や競技者への後援を行っているかどうかは寡聞にして知らない。相澤病院の例を見て、経済的に不遇である才能に対する厚遇を容認する社会と、無償で才能を庇護しようとする個人資産家や企業が多数現れることを祈るものである。
宗教家に対する寄進を除いて寄付や喜捨の文化に乏しい日本にあって秀でた才能に対する後援者を増やすために、経団連が主導する後援基金の設置や後援者に対する税制面での優遇などの措置は考えられないだろうか。