政府が福島原発の廃炉作業に伴う処理水を海洋放出することを決定した。
処理水に含まれる放射性物質トリチウムは人体への影響も少なく、濃度も国が定める安全基準の40分の1未満で自然界と同レベルとされている。各国の原発施設からは福島よりさらに高濃度のトリチウムを海洋又は大気中に放出しているとされており、IAEAも政府の海洋放出を支持しているが、地元漁協や野党は今回の放出に対して、風評被害が懸念されるとの理由から反対している。
本日の産経抄で知ったことであるが、”風評”という語句を国会で最初に使用したのは1956(昭和31)年に社会党参議院議員の曽根益氏であるらしい。曽根氏はマグロ漁船「第五福竜丸」がビキニ環礁で被爆し船内のマグロから高レベルの放射能が検知されて以降、全ての魚介類の消費が落ち込んだことを”風評”と表現したそうである。産経抄の記述では《・・風評と名付けて・・》とされていたので曽根氏の造語かと思ったが、デジタル大辞泉には《玉石志林(1861‐64)「此人先づ使臣を非毀するの風評を流伝し」という語源めいた例が付記されているので、曽根氏の造語ではないようである。
中国・韓国は今回の海洋放出決定に重大な懸念を表明しているが、自国で高レベルトリチウムの大量排出を続けながら日本の海洋放出を論うのは、いささか「目糞・鼻糞」の感がある以上に、”Fukushima”のイメージに悪用・便乗した日本産品の汚染風評を煽っている根柢が透けているように思える。
日本のメディアの一部にも中韓に迎合するかの論評もあり、政治家でも早速に社民党の福島瑞穂党首が処理水ではなく「汚染水の放出」とツイートしたと報じられており、今後の風評被害の源はそれらに起因することが大きいように思える。
こんな時にこそ、コロナ禍で突然に脚光を浴びたものの表舞台から姿を消した「エビデンス」にとっては再デビュー・再ブレイクの好機であると思うが、一向に姿を見せない。
世に”百日の説法屁一つ”と説かれるように、高邁な理想や科学的な根拠も眼前の一つの映像には勝てないようである。かってO157の主犯との風評に晒されたカイワレダイコンの危機を救ったのは細菌検査データではなく菅直人厚労相のパフォーマンスであった。このことを思えば、今後の自民党議員の会食は福島産品の魚介類に限るとか、黒川式麻雀も金はダメだが福島県産の魚介類や台湾産のパインは可とすれば、多くの映像や視線に露出できて風評被害の局限に寄与できるのでは無いだろうか(笑)。
しかしながらトランプ大統領との晩餐会に独島エビを誇らしげに供した文大統領が冷笑・無視しか得られなかったことを思えば、あまりにもあからさまな手法は好結果に結び付かないようにも思える。