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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

「海南」就役と海上自衛隊の儀式について

2021年04月26日 | 中国

 中国海軍初の強襲揚陸艦「海南」の就役が報じられた。

 「海南」は、米海軍のワスプ級と同程度の能力と見積もられており、離島や台湾の着上陸を念頭に置いているとされている。余談であるが、大東亜戦争の島嶼攻撃や朝鮮戦争での仁川強襲は「上陸作戦」と呼ばれてきたが、近年では海岸からの上陸とヘリコプターによる兵力投入が同時に行われることから「着上陸作戦」と呼ばれることが多い。閑話休題。
 「海南」の就役行事には習近平主席が出席して海軍旗を授与したが、台湾攻撃に対する本気度を示すとともに、日米首脳会談に代表される西側諸国の中国包囲網に対する強烈なメッセージを発信したものと思える。中国軍の着上陸能力や「海南」の就役に伴う台湾及び尖閣諸島に対する影響は専門家の分析に俟つとして、本日は自衛隊の礼式に関するあれこれである。
 自衛隊の儀式については「自衛隊法施行規則」で、①自衛隊旗授与式、②自衛艦旗授与式、③観閲式、④観艦式、⑤航空観閲式、⑥表彰式、⑦祝賀式、⑧葬送式、⑨着任式、⑩離任式、⑪入隊式、⑫除隊式とされており、自衛隊の礼式に関する訓令で防衛大臣が、⑬自衛艦命名式、⑭入校式、⑮卒業式、⑯追悼式を追加している。儀式に際しては、式の執行者に対する栄誉礼が行われることが多いが、総理大臣が部隊を視察して隊員に訓示する場合も儀式ではないために、栄誉礼等は行われないのが普通である。
 今回、習主席が出席した儀式を日本に置き換えれば「自衛艦旗授与式」に相当するが、これまで「自衛艦旗授与式」に総理大臣が出席したことは無かったのではと思っている。例えばアメリカの空母については進水式=自衛艦命名式は正副大統領夫人が、就役式=自衛艦旗授与式には正副大統領が出席(執行)することが慣例となっているように、軍の最高指揮官が軍艦旗を授与することは洋の東西を問わずに行われている。自分もかって護衛艦の初代乗員として自衛艦旗授与式に参加し得たが、式の執行者は海上幕僚長であり、掃海艇や補助艦艇の執行者が更に下位の地方総監等であることも多い。艦艇の就役が相次ぐ2・3月は通常国会の山場であるために、フラッグシップ的な艦の場合を除いて閣僚の出席は略無いように思っている。

 海上自衛隊内では、自衛艦の建造や命名にまつわる諸々が以後の艦の運命に投影されるという都市伝説が幅広く信じられている。事実、艤(ぎ)装期間中に何かと(悪しき)話題を取り沙汰された某護衛艦は、就役後に暴走事故を、海難事故を、滅多に起きない乗員の落水事故を、人身事故を、ミサイル落下を、指令装置が原因不明の誤作動を・・・と暗い艦齢を重ねたこともある。
 「海南」の就役に見られる中国軍の着上陸能力向上は、台湾・日本にとっては重大な脅威であるとともに、太平洋の島嶼国家にも大きな影響を与えることは素人目にも判る。
 敵基地攻撃能力云々としてミサイル射程の長短を論じている場合ではないと思うが。