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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

消火装置誤作動事故に思う

2021年04月18日 | 社会・政治問題

 地下駐車場設置の炭酸ガス自動消火装置による死傷事故が報じられた。

 事故原因は調査中とされているが、現在のところ天井板張替作業時に誤って配線を傷つけた可能性が大きいとされている。
 消防庁の指導では、このような作業を行う場合には消火装置の電電を切るか手動モードに切り替えるとともに、消防設備士の立ち合いが求められているようであるが、そのすべてが行われていなかったようである。事故の原因解明と再発防止策は関係者に俟つとして、本日はハイテクが持つ「諸刃の刃」の危険性についての感想である。
 安全で快適な社会生活を営むために、多くの分野で自動化や無人化が図られ、その流れは少子化に伴う労働人口の減少や人件費の高騰によって更に加速してきた。また、制御システムはコンピューターによるシーケンス制御と各種センサーの信頼性の向上によって人間の目よりも早くかつ正確に異常を感知したり、正確に対処できるようになって今や自動監視・制御は社会生活には不可欠な要素となっている。一方で、自動機能=安全との神話を生んで、誤作動したりシステムがダウンすること等、思いもよらない世相となっている。
 50年前には鉄道の主要な踏切に警手(踏切り番)が配されて遮断機を手動で監視・制御したり踏切での横断者保護に当たっていたが、踏切内で立ち往生した歩行者を救出する美談が語られる一方で、遮断機開閉の忘れや遅れも度々報じられていた。現在では警手が配された踏切は皆無で、遮断機開閉の遅れや忘れは略々無くなったものの、踏切内での人身事故を阻止することは絶望的となったように思える。
 改めて今回の消火装置の事故を観ると、自動装置のシーケンスは、駐車場での火災を装置が認知→サイレンを鳴らして注意喚起するとともに退避勧告のアナウンス→火災認知後20秒でシャッター閉鎖→閉鎖完了後に炭酸ガス放出、となっていたようであり、この20秒という設定が事故のキモであるように思える。火災の制御と延焼防止の可能性と人間が避退したり手動モード切り替え可能時間の両面から決められていると思うが、装置の操作法を知らない、又は脱出経路を知らない人にとっては短すぎるように感じられるものの、消化装置の作動が遅くなることによる火勢の拡大、上階の居住区核への延焼(住民被害)防止を考えれば長すぎるようにも思える。

 自動制御は、利害の反する複数の要因の最大公約数のために働くように設計されており、限られた若しくは想定外である少数の要因を無視する危険性を必然としている。
 航空管制官(自衛官)から聞いたことであるが、管制塔からの進路や高度の変更指示について旅客機のパイロットは直ちに指示に従うが、一般人が操縦する小型機は指示に従う前に理由を聞いてくることが多いそうである。今回の事象でも1名の作業員が脱出し得たことを考えれば、自動制御の指示には一先ず従うことがハイテク下の時代を生き抜くために必要であるように思う。