台湾海峡の防衛にまで踏み込んだ日米共同宣言に関する、主要紙の論調が興味深い。
読売・日経・産経は、中国の覇権追及現状から宣言に盛り込まれた日本の選択肢は当然若しくはやむを得ないと評価する一方で、朝日・毎日は否定的な社説を掲げている。
毎日は「(中国を翻意させるためには)人権・法の支配・貿易ルールが大事であることを訴えるのが大事で、同盟強化だけでは打開できない」、朝日は「日本が果たすべきは米中双方に自制を求める外交努力が必要」とし、それぞれアメリカと距離を置いた日本の独自外交の必要性を説いている。
国際関係と国際政治に明るいであろう朝毎論説委員は、米中という経済・軍事大国間の紛争を調停する能力が日本にあると考えているのだろうか。特に、武力・経済力による現状変更では国際司法裁判所の判断をすら公然と無視する無法国家「中国」に対して、日本がどのような手段・手法を以てすれば独自外交が可能と考えるのだろうか。
国内の治安が保てるのは、国民が法律という共通認識に従うためであり、共通認識を外れた行為者には公権力が刑罰を与えるためと思う。国際関係に於いても同様で、各国は国際機関での諸合意や条約を共通認識とし、無法行為については各国が協調した経済制裁や国連軍(多国籍軍)による懲罰で翻意を迫っている。国際紛争の調停に当たっては、当該国に共通する利害に絶大な影響力が必要であることは歴史が証明しており、第二次大戦後の紛争にあっては米ソ両大国が担ってきたが、米ソ冷戦の調停を実現できた国は無く、解決はソ連崩壊による自然解消まで待たなければならなかった。新しい米中冷戦も同様に、米中のどちらかが疲弊するまで続かざるを得ないと考えれば、中国共産党の独裁政権に加担するわけにはいかないのは当然と思う。
韓国の文大統領は、アメリカとは軍事同盟、北朝鮮とは同族・経済支援というカードを強力と信じて米朝首脳会談の仲介を目指したが、手持ちのカードは意に反して米朝双方にとって無力で、米朝双方から梯子を外されて結局はピエロの役割しか果たせなかったことは、国家の調停能力とは何かを示しているのではないだろうか。
朝毎論説委員は、大航海時代の植民地争奪競争など児戯にも思えるほど熾烈な「パワー・ポリティクス」蔓延の現状においても、永世中立国でしか成立し得ない「全方位・等方位外交」というマジックが中立国以外にも存在し、日本が「独自外交という名」で成し得ると思っているのだろうか。ネット上の主張にも「対話重視」「日中共生」の意見が散見されるが、中国の王毅外相の尊大で高圧・威圧的な発言を聞いても、対話ができるとは到底思えない。力(軍事力+経済力)で現状変更を求める中国に通じる言語は、世界中に存在せず、中国語ですら用をなさないと思っている。