ウクライナ戦火にかすんでしまった感があるが、韓国大統領選投開票まで1週間となった。
相次ぐ身内の不祥事発覚によって「悪人の中のましな悪人を選ぶ選挙」と揶揄され、誰が当選しても日韓関係に劇的な変化は見られないと観測されていることから、日本でもゴシップ誌的興味しか語られていなかったが、ここに来て軍事強国ロシアのウクライナ侵攻が大きな影響を与えているように思われる。
韓国メディアが2日に報じた候補者支持率の最新世論調査では、与党「共に民主党」の李在明氏45.0%、保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦氏44.9%、中道野党「国民の党」の安哲秀氏5.1%とされていたが、支持率3位の安哲秀氏が立候補を取り下げて尹錫悦氏支持を電撃的に表明した。もちろん、算術的に安氏の支持者が挙って尹氏支持となることはないだろうが、文大統領の政策を継承するとした与党の李在明氏には大きな逆風である。
文大統領は米中の狭間にあって高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備縮小という選択で米中双方の顔を立てる方策を執っていたが、ウクライナ侵攻で見せたロシアの大量ミサイル同時発射や北朝鮮のミサイル連続発射、特に極超音速ミサイル開発が実戦配備の段階に来ている現実が、米軍依存度を高めると公約している尹氏の支持拡大に影響したと思っている。
韓国のこれまでを考えると、任期1年を切った大統領は支持率10%程度のレームダック状態に陥るのが常であったが、文大統領は現在でも30%程度の支持を得ており、我々には絵空事にしか思えない「太陽政策による南北融和」は国民感情の底流に根強く存在しているようである。
大国・狂国と一衣帯水の韓国にあっては、国防の如何が大統領選挙に大きな要因・争点となるが、日本にあってはこれまで「外交と国防は票にならない」が永田町の常識であるとされてきた。
今回のウクライナ危機に際してプーチン大統領が、戦術核兵器の準備を窺わせる行動を軍に命令したことによって、核攻撃防御に関する論述が増えているが、半世紀も前の「非核3原則」から思考を停止したかのような識者が存在し一定の支持を集めている。
故中川昭一氏は『いまや非核3原則「持たず・作らず・持ち込ませず」は、「言わせず」を加えた非核4原則に、さらには「考えてもいけない」まで加えた非核5原則にまで成長している』と慨嘆されていたそうである。
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