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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

小火器を学ぶ

2022年03月19日 | 防衛

 自衛隊OBであるが、艦船(機関)特技であるために、銃器については無知に等しいので、来る(かも)機会に備えて小銃を勉強した。

 勉強は主として小火器の弾丸の大きさについてであり、畳の上の水連にもならないが一応の予備知識として調べてみた。
 現在小火器の口径については㎜で表記されているが、入隊した昭和30年代にはインチで呼ばれていたし、ハリウッド映画やアメリカ社会では今でもインチで呼称されるのが一般的である。
 というわけで、主要な銃器の口径についてインチ-㎜換算から始めたので、以下に列記・紹介する(表記は、インチ呼称/弾頭径㎜-主要銃である)

・45口径/11.433㎜-GIコルト(2次大戦時の米軍制式拳銃:自衛隊も長期に使用)、コルト45マグナム(ダーティ・ハリーのキャラハン刑事が愛用)
・38口径/9.65㎜-スナップ・ノーズ(アメリカ警察官が持つ回転式拳銃で日本の海保・警察にも採用)
・35口径/9mmー自衛隊の制式拳銃
・32口径/8.13mmー海保・警察官の主要拳銃
・30口径/7.62mmーかっての軍用小銃(米M1小銃、陸自64小銃、共産圏等AK47突撃銃(カラシニコフ)など多数)
・25.6口径/6.5㎜ー帝国陸軍の三八式歩兵銃
・22口径/5.58㎜ー主として婦女性用の婦人護身拳銃
    /5.56㎜-現在の軍用小銃の主流(陸自89式・20式小銃、米軍M16小銃)

 と分類できるようである。
 現在の小火器については、敵兵を殺すことよりも負傷させて戦闘力を奪う目的が大きく、小さな弾丸を高速で・多量に散布して、敵の動きを制約することに主眼が置かれている。かっての30口径(7.62㎜)銃は反動も大きく、肩撃ち射撃では肩に十分密着させていないと反動で鎖骨骨折の危険があるとされていたが、5.56㎜銃では反動も小さくなって操作性も向上し、何よりも、軽量化されたことで比較的体格の劣る日本(アジア)人でも携行が容易になったとされている。

 口径という呼称であるが、銃と砲(概ね20ミリ弾以上を呼ぶ)では内容が異なる。
 例えば、帝国海軍の大和主砲は「46cm(サンチ)62口径砲」、海自最大の単装速射砲(あたご級及びあきづき級)は「127㎜62口径砲」と呼ばれる。小銃は単に弾丸の大きさを示しているが、砲に使用される口径は砲身の長さを示しており、大和主砲の砲身長は46cm×62=2,852cm、海自主砲の砲身長が787㎝であることを示している。
 自分の小火器射撃の経験は、小銃では7.62㎜弾・拳銃では45口径・9㎜弾に過ぎず20式新小銃の知識・経験はないが、まァ何とかなるだろう。
 余談であるが、娘2人にもハワイで22口径拳銃の射撃を体験させたが、今後とも役立つ場面が無いことを祈っている。また、ベトナムでは悪名高いAK47(カラシニコフ)の射撃を体験したが、「これが世界で最も人を殺した銃か」と思ったことを付け加えて、にわか勉強終了。

 


ゼレンスキー大統領に観る指導者の資質

2022年03月18日 | ロシア

 ウクライナのゼレンスキー大統領の存在と情報発信力が、世界を動かしつつある。

 ゼレンスキー大統領は、コメディアン出身で政治経験の無さを危ぶむ評価が高かったが、亡命政権を樹立して国外から指導することを暗に求めた西側諸国の助言を退けて国内に踏み止まって戦争指揮を続けているが、この現実を見ると、政治家とは何だろうと考えざるを得ない。
 同大統領はアメリカ議会でリモート演説し、バイデン大統領に対しては「アメリカ大統領は世界のリーダーで、世界のリーダーは平和のリーダーでなければならない」と叱咤し、議員に対しては「パールハーバー」「9.11テロ」を想起しろと迫った。クリントン氏以来の民主党が党是とする「戦略的忍耐」が武力による現状変更を迫る無法者には無力である現実を訴える言葉は、バイデン民主党の重い腰を動かし、武器供与本格化に転舵させる一因になったと思っている。
 ゼレンスキー大統領の外国議会での演説・遊説要請は日本にも及んでいる。岸田総理を始め大方の議員は大統領の議会演説受け入れに同意もしくは好意的であるが、立民の泉代表は聊か趣を異にし、「私は日本の国民と国益を守りたい。国会演説の前に首脳会談・共同宣言が絶対必要だ。演説内容もあくまで両国合意の範囲にすべき。それが当然だ」とツイートしたらしい。この、意味不明の思考・姿勢が衆議院議員8期にも亘って国家の経綸を論じた政治経験のなせる業と見ればお寒い限りである。外国指導者の国会演説が政府の動向を縛るものではないことと、西側の経済制裁に同調したことでロシアが日本を非友好国に名指しし、キエフが累卵の危うさにある今にあっても、平時の首脳会談の段取り墨守が絶対という考えは、いかなる政治経験から導き出されたのだろうか。

 両者を眺めると、一国の指導者にとって政治・外交経験の有無は絶対条件ではなく、経験は一種の阻害要因にしか働かない場合もあるのではないだろうか。ゼレンスキー大統領の言動を見る限り、指導者の絶対条件は、経験豊富なブレーン・官僚が提示した選択肢を「愛国心」で選択・実行できる決断力で十分であるように思える。
 議院内閣制の日本にあっては経験の少ないゼレンスキー内閣が出現することはないが、少なくとも経験則に捉われず、時宜に応じて柔軟かつ適切な判断ができる指導者であって欲しいと願っている。
 現在の日本にとっては、泉代表が首班の座に無く・立民が政権に対して大きな影響力を発揮できない弱小野党である事が、唯一の救いであるように思える。


ウクライナと士気

2022年03月16日 | ロシア

 ウクライナでは依然として激しい戦闘が続いているが、国民の「自分の国を守るために戦う」という戦意は旺盛で、狂った強国に立ち向かっている。
 伝えられるところでは、これまで銃器・戦闘とは無縁であったであろう五輪メダリストが、救急救命士が、ミス・ウクライナが、続々と入営若しくは抵抗組織に加わっている。また、直接に銃器を入手できない人々も、対戦車障害物「拒馬」を作成し、土嚢でバリケードを作り、タイヤをパンクさせる「鉄菱」を作り、火炎瓶を準備し、と様々な形で抵抗に参加している。
 一方、平然と非戦闘員を無差別攻撃するロシア軍について「士気の低下・喪失」と分析する意見がある。

 日本の一般社会では、一般的に組織構成員の士気を高めるために「給料を上げる」とか「福利厚生を充実させる」との言葉が使われるが、自分では「真の士気とは、正義・大義を自覚した理性的な自律心」にほかならないと思っている。日本的な功利的な手段では「短期的もしくは一時的に士気らしきものを高揚させる」ことは可能であっても、何らかの理由でそれらが与えられなくなった場合には霧散霧消しかねない危うさを持っているように思える。規律と命令に依るロシア軍と、自発的に抵抗するウクライナ国民を見る限り、士気とは何を由来とし、何のために際立つのかを今一度考えることが必要であるように思う。

 ウクライナ軍民が団結して抵抗している傍らで、略奪行為や食料の争奪など戦闘被害者同士の中での「弱肉強食」の寒々しい事例も伝えられている。戦争・戦場の常とは云え、霞を食っては生きられない人間の生存本能にも起因する原初行動で、理性・士気だけでは完全には補えないことであろうが、士気の高揚はそれらを局限させることはできるように思う。

 ロシア侵攻前に「日本でも民兵の育成を考えるべき」と書いた際には、自分の周囲からも「時期尚早。国情・民情にそぐわない暴論」との意見が少なくなかったが、ウクライナの現状を見ると、侵略者に抵抗しつつ治安を維持するためには国民の士気と士気に裏付けられたスキルを高く保つことが必要であるように思うことに変わりはない。
 これまでの通り、聊かの功利で社員を繋ぎとめるだけで良いのか、銃器を扱えるのは悪か、防衛は自衛隊と米軍に任せて高みの見物でよいのか、を真剣に考えるべきではないだろうか。


非人道兵器とルーブル

2022年03月14日 | ロシア

 ウクライナでロシアが燃料気化爆弾を使用したことを確認したとイギリスが発表した。

 既にロシア軍がクラスター爆弾を使用したことは映像で確認されており、燃料気化爆弾まで投入した背景はロシアの手詰まり感・焦燥感の表れとも観られているが、これらの「ハーグ陸戦条約」が禁止する非人道兵器をも平然と使用するロシアの暴虐ぶりは今更ながらに心胆を凍らせるものである。
 一般的に非人道兵器の使用に際しては「ハーグ条約違反」と一括りにされるし、自分もそのように理解しているが、改めて「ハーグ陸戦条約」を眺めると、1899(明治32)年にオランダのハーグで開かれた第1回万国平和会議において採択された「陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約」を指しているが、それ以後の科学・軍事技術・人道概念の変化によって個々の非人道兵器の使用禁止・制限は、ハーグ陸戦条約の精神を継承する形でオスロ条約・オタワ条約・ジュネーヴ条約等によってなされている。
 しかしながら、一般論としてであるが国際条約は、条約そのものが効力を持つものではなく批准国がそれぞれの国内法で条約の実践を規定するものであることから、ロシアの燃料気化爆弾等の使用が国内法で禁止されていないならロシア軍人がロシアで処罰されることもなく、今後とも使用し続けられることは考えられる。また、ロシア・ウクライナの双方がオスロ条約は批准していないようでもある。
 しかしながら、武力侵攻自体が国連憲章に違反していることは明白で、燃料気化爆弾等の使用を国連憲章違反下で起きた非人道兵器の使用と捉えて、国際軍事法廷の設置が提起されたり、個人の戦争犯罪を裁く国際刑事裁判所が捜査を開始したとも報じられているが、無法を承知で武力侵攻したプーチン大統領を国際世論と国際慣例の面で翻意させることは容易ではないように思う。

 国連や国際条約が無法者に対しは無力である現実から、唯一の武器は経済制裁であるとの認識で中印を除く主要国は協調しているが、それに対してもロシアは非友好国に対する国債の償還・利払いをルーブルで行うと対抗している。日本がどれほどの円・ドル建ロシア債を保有しているのか知らないが、《公的年金を運用している「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIFI」は、運用全体の0.1%にあたる2200億円のロシア関連資産を保有。三井物産は、ロシア向けの投資や融資などの残高が4600億円》という記事をみる限り、日本全体では数兆円規模の債権を持っているものと推測するが、現在では紙くず同然に下落したルーブルを受け取ることになり、日本経済もロシア経済制裁という両刃の刃によって打撃を受けるだろうことが予想される。
 4月以降の電力料金は大幅値上げされるとの報道もあるが、これらに耐えるのもウクライナ支援の一部と考えなければならないのだろう。自分はダウングレードできないレベルの暮らしであるが、それでも切り詰められる支出はあるのかと探さなければと思っている。


グローバルホークの整備に思う

2022年03月12日 | 防衛

 自衛隊が三沢に配備を計画している米国製無人偵察機グローバルホーク(以下、RQ-4B)1機が12日に到着したことが報じられた。

 無人偵察機の導入計画はRQ-4B型3機と地上操縦システム2基で、これによって日本全土の警戒監視が可能とされている。
 RQ-4Bはプレデターなどの無人航空機とは異なり、攻撃能力を持たない純粋な偵察機で、2011年3月11日の福島第一原子力発電所事故の際に被害状況把握のため施設上空を短時間飛行したことでも知られている。ちなみに、RQ-4Bの主要諸元は、全長:13.52m、全幅:35.42m、最大離陸重量:12,111kg、巡航速度:343kt、実用上昇限度:19,800m、航続距離: 22,779 kmで、監視能力は最低飛行速力4kt、最高30cmの識別能力を備えているとされている。
 日本の警戒監視能力の向上は喜ぶべきかもしれないが、政府・国民の防衛力整備に関する意識に関して言えば決定的に欠けている点があると思っている。
 軍事偵察衛星も上げた、軍事情報に関する省庁一元化の体制も整備した、情報本部を作り分析官も育成した、さらにRQ-4Bも配備し得た、と情報の収集・分析・配布については何とか列国の水準に達したと思っているが、問題とすべきは情報を「生かす」若しくは「利用して対処する」という手段が確立できていないことである。情報とは本来、収集し、分析し、確度を高めただけでは何らの価値を持たず、正確な軍事情報を得た指揮官が「如何に対処するかを決断する意志と能力を発揮する」とともに、実行を命じられた部隊が「対処に必要な資機材を保有する」ことで情報は価値を持ってくると思っている。
 ウクライナ侵攻に対するアメリカの対応を見る限り、商用衛星の画像ですらロシア軍の大規模部隊集結を捉えていたことから、より多くの情報入手手段を持つNSAやCIAはロシアの武力行使の確度を正確に把握していたとみるべきで、もしかすると劈頭のミサイル発射の兆候すら聴知していたかもしれない。しかしながら指揮官バイデン大統領はその情報に対処する資機材を持っているにもかかわらず、判断力と強い意志を持ち得なかった。
 日本の場合には更に深刻であると思う。もし情報機関が「侵攻を企図する国が大量のミサイル発射確実」という情報を配布しても、戦後、武力を動かした前例と経験を持たない総理大臣は強い意志をもって決断することに躊躇するであろうし、部隊もまた対処に有効な資機材を持っていない。そして何より、自分で課した専守防衛という軛で、最初の一撃は甘んじて受けなければならないという点である。

 国民や国会議員の国防に関する知識と現状・問題点を啓蒙するために、自衛隊の幹部学校等に設置されているとされる部隊運用訓練のための戦術訓練装置を戦略シミュレーションが可能なレベルに改修して、内閣・与野党議員・財界も参加した国家戦略(ウオーゲーム)を体験するという取り組みは出来ないものだろうか。
 防衛費が突出する世界は好ましいものではなく、かって帝国議会においてすら海軍の提出した建艦計画を否決したことがあるように、攻守バランスの取れた防衛力を整備するためには、節度を持った防衛力整備の限界を共有することが必要であるように思える。そうなれば、敵基地攻撃能力云々などというバカげた問答にも終止符が打てるように思える。