エリザベス女王の棺がバッキンガム宮殿に帰館された映像を見た。
霊柩車を先導する形でチャールズ3世、アンドリュー王子、アン王女、ウイリアム皇太子が歩かれていたが、全て軍装であり、加えて護衛の軍人と完全に歩調を揃えていたことに感動した。
第二次大戦までは英軍将校の大半は貴族であり、現在でも王族を含む全ての貴族の義務として一度は軍に身を置くことが不文律的に行われていることを思えば当然のことであるかもしれない。
集団で歩調を揃えて行進することは簡単であると思われるだろうが思いのほか大変である。「気を付け」に始まる停止間における各個動作の教育があったのち、行進の訓練に移行するが、教官・班長の怒声が飛ぶことなく一応整斉と行進できるようになったのは、入隊して半月程度も経っていたように思う。その後も、歩調の乱れ、列の乱れ、足の挙げ方、手の降り方、と折に触れて注意される始末で、ましてやパレード・観閲行進等で部外者の目に触れるようなケースでは、いやになるほど矯正・練習が繰り返えされる。
海上自衛隊(陸・空も多分同じ?)では、行進時の歩幅は75㎝、歩数は毎分120歩とされている。歩数については自分が最初に教育された時は112歩とされていた。何故にきりの良い120歩ではなく112歩であったのかは知らないが、例えば行進曲のテンポがそうであったのかもしれないと今は思っている。
行進時の姿勢は、顎を引いて背筋を伸ばし、手は軽く握って肘を伸ばし前に30度後ろに15度自然に振るとなっているが、20年近く気ままに歩いていたものを型に嵌めるのは容易ではない。さらに、葬送式で遺体や遺灰を運ぶ際は国際的に「半歩行進」が慣例であり、故女王の棺を運ぶ際にも半歩(概ね靴の長さ程度)行進で保持されていた。
このように、歩くだけでも相当な教育訓練が必要であるにも拘わらず、王族が平然とかつ優雅にこなしているのを見て英王室・王族の強靭さを実感した。
また、いろいろな場所で棺が運ばれる映像を目にしたが、全て陸海空海兵の軍人がその任に当たっており、元首の葬送や国葬の儀礼に軍が関与するのは国際基準であるように思える。
安倍元総理の国葬では19発の礼砲を撃つことが報じられたが、国葬に自衛隊が関与することの是非を行間に滲ませたり、空砲の値段に触れたものさえある。
自分は、礼砲は概ね慶事において現職の階級に対して行われるもので葬送に際しては弔砲3発が国際基準と思い込んでいたが、昭和天皇大喪の礼で21発の礼砲が行われたことから弔事でも撃たれることを知った。
今回の国葬での自衛隊の関与は、儀仗・礼砲・沿道での「と列」だけであるように思えるが、構想に際しては国際基準に適した軍人(自衛官)の関与を認めるべきではないだろうか。非礼な野党議員よりも名もなき自衛官の列席の方が安倍氏の葬送に相応しく思える。