各地で、バリアフリーへの改善が広がってきている。バリアフリー化の初めごろには、障害者市民たちに聞くと、珍事もあったそうだ。バリアフリー化が進んできた現在では、大きく改善されたと思っていた。でもそうではない。以前のままの状況が続いている。新しくバリアフリー化されたところでも、実際に利用した人によれば、えっこれはなに?と驚く事態があるという。
■ 新幹線の障害者用トイレにある「開・閉」のボタン
豊中市の市会議員でもある入部香代子さんの「バリアフリーについて」という文章がある(ぷくぷくの会発行の『ぷくぷく通信』第142号、2003年03月特別号)。入部さんは、つぎの事例を挙げている。
新幹線に障害者用のトイレがある。ドアの横に「開・閉」と書いてある2つのボタンがある。新幹線だけでなく、他の駅でも、私も目撃したことがある。入部さんによると「この使い方がわからず開け閉めできない人が多くいらっしゃいます。とくに高齢の女性の方です」と、書いている。
トイレにも「介護者の人と一緒に入れない」ところもあるという。入部さんは「シンプルでいいから、どこでも、いつでも使えるトイレにして頂きたい」と希望している。
■ シンプルとはいうものの・・・
最近届いた、ぷくぷくの会発行の『まねき猫通信』(56ひきめ、2007年02月01日)の「当事者のリレーエッセイ」に書いている佐野武和さん(滋賀県湖北で障害者運動や作業所などを運営)によると、新しくできたドラッグストアで障がい者用トイレを利用した人のレポートを紹介している。そのトイレは「たしかにひと一倍広いが、全く手すりが無い」とある。手すりが無いほどシンプルすぎると、実際には使えない。
シンプルとは逆の事例もある。佐野さんがN警察署(本文では固有名詞あり)の障がい者用トイレを利用したときの驚きを書いている。つまり「トイレの中が、掃除用具置き場になっているのだ。バケツは困る。手すりにぞうきんを干すのをやめてくれと言いたい」と。
障害者市民が利用するトイレが、物置場に変身しているのだ。障害者市民がまったく利用していないのだろうか。あるいは、鍵がかかっている障がい者用トイレもあると聞いたことがある。急いでいるときに利用するのがトイレのはずだ。大切なところだろう。でも、鍵がかかっていては、実際にいつ使うのだろう。
■ 実際に利用する人の意見を聞かない弊害
入部香代子さんは先の『通信』で、「健常者の感覚での『便利』は、障害をもつ方や高齢の方には不便になることがあります」と、書いている。佐野さんも「当事者の意見を形式的にしか聞かないしくみの中で、バリアフリー化が進められていることに警鐘を鳴らしたい」と、強く主張している。
他にも、トイレで手洗い場にある斜めに傾斜した鏡も、使いにくいという声を障害者市民から聞いたこともある。佐野さんは「スリッパ履き替えが強制される公共施設」なども落とし穴だという。そもそも「長いスロープそれ自体がバリアであることの基本認識がほしい」と、佐野さん。スロープを付ければ、それでバリアフリーだという発注する側の思い込みが、批判にさらされている。
■ 改善に高いコストをかけた成果をみたい
一度、出来上がった建物や設備を、後で改造すると、経費は高くなる。いかにも、障害者市民のために、これほどのコストを費やしているというように、見せ付けている。ところが、障害者市民にとっても、高齢市民にとっても、自由に快適に使うことができない。となると、その費用は有効に使われたといえるだろうか?
改造工事にとりかかる前に、いろいろな人に意見を言ってもらう、あるいは、実際にそれらを試してもらうという、過程があれば、良かった。あるいは、入部香代子さんがいうように、はじめはシンプルに作って、その後、使う人のニーズを取り入れて、使い勝手のよいものにしていくことも重要だろう。
新しい建物で、後からトイレや部屋の案内などを示す張り紙が、たくさんあるところも多い。多分、実際に使ってみて、不満や問い合わせが殺到したのであろう。とくに、小さな字で書かれていて、しかも文字の色が背景と重なるようなデザインは、困りものだ。
とすると、シャレたデザインをした設計事務所は、どんなつもりだったのだろうか?あるいは、それを認めた施主は?せっかくバリアフリー化やユニバーサルデザインにコストを使ったのであれば、これまで以上に多くの人たちが、快適に気兼ねなく利用してほしいものだ。
■ 新幹線の障害者用トイレにある「開・閉」のボタン
豊中市の市会議員でもある入部香代子さんの「バリアフリーについて」という文章がある(ぷくぷくの会発行の『ぷくぷく通信』第142号、2003年03月特別号)。入部さんは、つぎの事例を挙げている。
新幹線に障害者用のトイレがある。ドアの横に「開・閉」と書いてある2つのボタンがある。新幹線だけでなく、他の駅でも、私も目撃したことがある。入部さんによると「この使い方がわからず開け閉めできない人が多くいらっしゃいます。とくに高齢の女性の方です」と、書いている。
トイレにも「介護者の人と一緒に入れない」ところもあるという。入部さんは「シンプルでいいから、どこでも、いつでも使えるトイレにして頂きたい」と希望している。
■ シンプルとはいうものの・・・
最近届いた、ぷくぷくの会発行の『まねき猫通信』(56ひきめ、2007年02月01日)の「当事者のリレーエッセイ」に書いている佐野武和さん(滋賀県湖北で障害者運動や作業所などを運営)によると、新しくできたドラッグストアで障がい者用トイレを利用した人のレポートを紹介している。そのトイレは「たしかにひと一倍広いが、全く手すりが無い」とある。手すりが無いほどシンプルすぎると、実際には使えない。
シンプルとは逆の事例もある。佐野さんがN警察署(本文では固有名詞あり)の障がい者用トイレを利用したときの驚きを書いている。つまり「トイレの中が、掃除用具置き場になっているのだ。バケツは困る。手すりにぞうきんを干すのをやめてくれと言いたい」と。
障害者市民が利用するトイレが、物置場に変身しているのだ。障害者市民がまったく利用していないのだろうか。あるいは、鍵がかかっている障がい者用トイレもあると聞いたことがある。急いでいるときに利用するのがトイレのはずだ。大切なところだろう。でも、鍵がかかっていては、実際にいつ使うのだろう。
■ 実際に利用する人の意見を聞かない弊害
入部香代子さんは先の『通信』で、「健常者の感覚での『便利』は、障害をもつ方や高齢の方には不便になることがあります」と、書いている。佐野さんも「当事者の意見を形式的にしか聞かないしくみの中で、バリアフリー化が進められていることに警鐘を鳴らしたい」と、強く主張している。
他にも、トイレで手洗い場にある斜めに傾斜した鏡も、使いにくいという声を障害者市民から聞いたこともある。佐野さんは「スリッパ履き替えが強制される公共施設」なども落とし穴だという。そもそも「長いスロープそれ自体がバリアであることの基本認識がほしい」と、佐野さん。スロープを付ければ、それでバリアフリーだという発注する側の思い込みが、批判にさらされている。
■ 改善に高いコストをかけた成果をみたい
一度、出来上がった建物や設備を、後で改造すると、経費は高くなる。いかにも、障害者市民のために、これほどのコストを費やしているというように、見せ付けている。ところが、障害者市民にとっても、高齢市民にとっても、自由に快適に使うことができない。となると、その費用は有効に使われたといえるだろうか?
改造工事にとりかかる前に、いろいろな人に意見を言ってもらう、あるいは、実際にそれらを試してもらうという、過程があれば、良かった。あるいは、入部香代子さんがいうように、はじめはシンプルに作って、その後、使う人のニーズを取り入れて、使い勝手のよいものにしていくことも重要だろう。
新しい建物で、後からトイレや部屋の案内などを示す張り紙が、たくさんあるところも多い。多分、実際に使ってみて、不満や問い合わせが殺到したのであろう。とくに、小さな字で書かれていて、しかも文字の色が背景と重なるようなデザインは、困りものだ。
とすると、シャレたデザインをした設計事務所は、どんなつもりだったのだろうか?あるいは、それを認めた施主は?せっかくバリアフリー化やユニバーサルデザインにコストを使ったのであれば、これまで以上に多くの人たちが、快適に気兼ねなく利用してほしいものだ。