高校で発達障害を持つ生徒への対応が不十分であることを紹介しました。では、高校卒業者の2人に1人が大学に進学する時代の、高等教育機関における障害者への対応は、どうなっているのでしょうか。独立行政法人・日本学生支援機構の「障害のある学生の修学支援に関する実態調査」の結果、大学など高等教育機関の学生のうち、発達障害を含む障害のある学生の割合は、0.2%であることがわかりました。
調査は2008(平成20)年5月、全国の大学(大学院を含む)、短大、専門学校のうち1,218校を対象に実施されました(回答率100%)。障害のある学生が1人以上在籍しているのは、そのうち約6割に当たる719校でした。内訳は、「1人在籍」169校、「2~5人在籍」304校、「6~10人在籍」113校、「11~20人在籍」81校、「21人以上在籍」52校となっています。
障害のある学生の数は6,235人(大学5,797人、短大277人、専門学校161人)で、前年度より15.4%増えています。このうち学校に通う「通学制」の在籍者は5,150人、残りの1,085人は通信制に在籍しています。学校種別に学生全体に占める障害のある学生の割合を見ると、大学が0.20%(前年度比0.04ポイント増)、短大が0.15%(同0.03ポイント減)、専門学校が0.27%(同0.04ポイント増)となっています。
障害別の内訳は、「視覚障害」10.4%(同0.3ポイント減)、「聴覚・言語障害」23.0%(同2.1ポイント減)、「肢体不自由」35.8%(同2.5ポイント減)、「重複障害」2.2%(同0.7ポイント増)、「病弱・虚弱」17.0%(同4.0ポイント増)、「発達障害(診断書がある者)」4.8%(同1.5ポイント増)などで、発達障害の割合が増加していることが注目されます。
障害のある学生が必要な支援を申し出て、学校がそれに何らかの対応(予定を含む)をしているというケースは567校(大学450校、短大81校、専門学校36校)で、支援を受けている学生は3,440人となっています。これは、障害のある学生全体の55.2%に当たります。また、障害のある学生うち、通信制の在籍者を除くと、障害のある学生の66.8%が何らかの支援を学校から受けている、という計算になります。支援を受けている学生の障害別の内訳は、「視覚障害」13.4%、「聴覚・言語障害」26.2%、「肢体不自由」35.3%、「重複」2.2%、「病弱・虚弱」11.8%、「発達障害(診断書がある者)」6.6%などです。
障害のある学生の比率の推移を見ると、2005(平成17)年と06(同18)年が0.16%、07(同19)年が0.17%、08(同20)年が0.20%と徐々に上昇してはいますが、まだまだ十分とは言えないのが現状のようです。障害のある学生の支援に対する教職員研修などを実施している大学なども、全体の44.5%に過ぎません。
調査では発達障害に関して、医師の診断書がある者に限っていますが、対応が必要な学生は実際にはもっと多いと考えられます。大学などで学べる力のある者が、障害のあるなしにかかわらず学べるようになる体制の整備が、早急に望まれるところです。