◇全国16校の工業高校生「空飛ぶ車いす」計画、大森学園高でも25台「大修理会」
◇きょうNCAが計100台を無償輸送
日本で使わなくなった車いすを、入手しづらいタイの障害者向けに全国16校の工業高校生が修理。貨物専用ジャンボジェット機を使って現地へ100台贈ろうという「空飛ぶ車いす」計画が進んでいる。
10月31日には東京都大田区の「私立大森学園高校」(井上皓司校長、生徒数1015人)で、同校の生徒、教職員有志に、周辺の中学生や住民のボランティアを加えた約100人が参加して「大修理会」が行われ車いす25台が修理された。
この「空飛ぶ車いす」活動は20年前、栃木市にある県立栃木工業高校が創立事業として、日本で古くなって廃棄されている車いすを、生徒たちが修理して車いすが足らないタイへ贈ったことが始まり。その後、この活動が全国の工業系高校に広がり、現在では約50校がこの活動に参加。現在まで24カ国に約3500台の車いすが贈られた。
大森学園高では9年前から、この活動に取り組み生徒会活動として生徒たちが週1~2台の修理を行ってきた。7年前からは年1度「大修理会」という名称で在校生やOBの呼びかけで集まったボランティアを含めた100人以上が参加して修理活動が始まり、ネットを通じたり教職員や卒業生が集めた廃棄車いすを修理している。
この日の修理会では、最初に井上校長が「参加に感謝します」とあいさつ。続いて女子生徒も含め約100人と日本を訪れているタイ側の福祉関係者6人も加わり、車いすのサビ落としやタイヤ交換などの作業に汗を流した。
修理された車いすは今年は全国から集まった車いすとともに17日、成田国際空港から日本貨物航空(NCA)の貨物専用機でタイ・バンコクまで約4500キロを無償で輸送される。
同校「空飛ぶ車いす」活動代表の安藤夏樹さん(3年)は「日ごろ、コツコツとやっている活動にこれだけ多くの人が参加してくれてうれしい」と話した。
◇「毎日国際交流賞」きっかけに社会貢献
今回、再生車いす100台を無償輸送するNCAが「空飛ぶ車いす」活動に協力するきっかけとなったのが、国際交流を続けている団体に贈られる「毎日国際交流賞」。
「空飛ぶ車いす」活動で2007年、栃木工業高が同賞を受賞。受賞の記事をみたNCA側が協力を申し出て、昨年初めて栃木工業高と大森学園高が修理した車いす40台をタイへ輸送した。
同社は日本では唯一の国際貨物専門航空会社で毎日、成田空港からタイのバンコク・スワンナプーム国際空港へ貨物専用ジャンボ機を運航している。
輸送作戦の責任者を務める片山辰也・同社広報部長は「日本とタイの間で貨物を輸送している航空会社として、もっともふさわしい社会貢献。できる限り長く続けていきたい」と話している。