知的・精神障害者が畑を耕したり、調理場に立ったり、接客したり…。適性に応じて役割を担ってもらい、働く生きがいを持ってもらう。飲食店経営に障害者雇用をマッチさせ、関係者の注目を集める「アップルファーム」(仙台市)。渡部哲也社長(43)は社業の拡大と併せ、東日本大震災からの復興と被災者雇用にも力を入れる。
◎被災者の就労支援追求
<評判呼ぶ料理>
仙台東部道路・仙台東インターチェンジ近くのビル1階にある野菜ビュッフェレストラン「六丁目農園」(若林区)。店内にはガラス越しに水耕栽培プランターが置かれ、周囲のテーブルに彩り鮮やかな手作り総菜が60種も並ぶ。
2010年11月オープン。スタッフ40人の半分以上を占める障害者が、調理や盛り付け、運搬にいそしむ。有機野菜の滋味と手間暇掛けた料理が評判を呼び、連日満員の盛況ぶり。ランチのみの営業だが、売り上げは当初の月380万円から600万円に伸びた。
20年ほど前、義弟が交通事故による障害で仕事を失った。窮状を目の当たりにし、食品卸や飲食業を通じ障害者の雇用創出を模索してきた。
青葉区八幡のたい焼き店を皮切りにカレー店、石窯パン屋、移動販売、農園管理などに障害者を雇用。「適材適所で働きがいを感じてもらえば、ちゃんと能力を発揮できる」と確信した。10年に会社を設立。それまでの実績を評価され、宮城県障害福祉サービス事業所として認可された。
東日本大震災では、ビルそばの東部道路が防波堤となり、津波被害を免れた。ビルには自家発電設備があり、3日間、臨時の避難所となった。店内の食材を使って被災者に炊き出しをした。震災後、会社の社会的貢献の一つに被災者支援が加わった。
<名取に第1弾>
経営者仲間ら6人で一般社団法人「東北復興プロジェクト」を設立し、理事長に就任した。第1弾として農園付きレストランを、名取市のイオンモール名取エアリの近接地(約4000平方メートル)にオープンさせる。
総事業費5億4000万円で5月に着工、9月完成を見込む。参加企業がパン、そば、総菜、カフェなどを出店。水耕栽培施設に風力や太陽光発電を取り入れるなど、防災と環境にも配慮した循環型のモデルタウンを目指す。
開業時60人、1年後には100人を雇用する予定。多くが障害者、被災者になるという。渡部さんは「復興支援に賛同してくれた仙台銀行の融資が決め手になった。被災者も障害者と同じ弱者であり、培ったノウハウを生かし、地元の復興につなげたい」と意気込む。
<「6次化」目標>
障害者雇用を取り入れた一連の飲食事業は10年、内閣府の地域社会雇用創造事業(農村六起プロジェクト)に認定された。起業して農産物に付加価値を付け、直販も担う-。農業生産(1次)、加工(2次)、販売(3次)を一体化させた「農村の6次産業化」が、地域雇用を継続させるポイントだと感じている。
お仕着せの福祉でなく、民間主導で新たな支援策を追求するスタイルは、福祉関係者に注目され、講演の機会も増えた。
渡部さんは「障害者も被災者も、自立していくには就労が絶対条件になる。地域の雇用の創出が、おのずと復興につながるはずだ」と、新たな事業展開を見据える。
障害者雇用のノウハウを生かし、新たな事業で復興支援も目指す渡部社長=六丁目農園
河北新報 - 2012年04月07日土曜日
◎被災者の就労支援追求
<評判呼ぶ料理>
仙台東部道路・仙台東インターチェンジ近くのビル1階にある野菜ビュッフェレストラン「六丁目農園」(若林区)。店内にはガラス越しに水耕栽培プランターが置かれ、周囲のテーブルに彩り鮮やかな手作り総菜が60種も並ぶ。
2010年11月オープン。スタッフ40人の半分以上を占める障害者が、調理や盛り付け、運搬にいそしむ。有機野菜の滋味と手間暇掛けた料理が評判を呼び、連日満員の盛況ぶり。ランチのみの営業だが、売り上げは当初の月380万円から600万円に伸びた。
20年ほど前、義弟が交通事故による障害で仕事を失った。窮状を目の当たりにし、食品卸や飲食業を通じ障害者の雇用創出を模索してきた。
青葉区八幡のたい焼き店を皮切りにカレー店、石窯パン屋、移動販売、農園管理などに障害者を雇用。「適材適所で働きがいを感じてもらえば、ちゃんと能力を発揮できる」と確信した。10年に会社を設立。それまでの実績を評価され、宮城県障害福祉サービス事業所として認可された。
東日本大震災では、ビルそばの東部道路が防波堤となり、津波被害を免れた。ビルには自家発電設備があり、3日間、臨時の避難所となった。店内の食材を使って被災者に炊き出しをした。震災後、会社の社会的貢献の一つに被災者支援が加わった。
<名取に第1弾>
経営者仲間ら6人で一般社団法人「東北復興プロジェクト」を設立し、理事長に就任した。第1弾として農園付きレストランを、名取市のイオンモール名取エアリの近接地(約4000平方メートル)にオープンさせる。
総事業費5億4000万円で5月に着工、9月完成を見込む。参加企業がパン、そば、総菜、カフェなどを出店。水耕栽培施設に風力や太陽光発電を取り入れるなど、防災と環境にも配慮した循環型のモデルタウンを目指す。
開業時60人、1年後には100人を雇用する予定。多くが障害者、被災者になるという。渡部さんは「復興支援に賛同してくれた仙台銀行の融資が決め手になった。被災者も障害者と同じ弱者であり、培ったノウハウを生かし、地元の復興につなげたい」と意気込む。
<「6次化」目標>
障害者雇用を取り入れた一連の飲食事業は10年、内閣府の地域社会雇用創造事業(農村六起プロジェクト)に認定された。起業して農産物に付加価値を付け、直販も担う-。農業生産(1次)、加工(2次)、販売(3次)を一体化させた「農村の6次産業化」が、地域雇用を継続させるポイントだと感じている。
お仕着せの福祉でなく、民間主導で新たな支援策を追求するスタイルは、福祉関係者に注目され、講演の機会も増えた。
渡部さんは「障害者も被災者も、自立していくには就労が絶対条件になる。地域の雇用の創出が、おのずと復興につながるはずだ」と、新たな事業展開を見据える。
障害者雇用のノウハウを生かし、新たな事業で復興支援も目指す渡部社長=六丁目農園
河北新報 - 2012年04月07日土曜日