参院で前田武志国土交通相、田中直紀防衛相の問責決議案が可決されてから二十日で一カ月。二閣僚の辞任を拒む政府・民主党と、辞任しない限り国会審議に応じない野党の対立のため、社会保障と税の一体改革関連以外の重要法案がたなざらしになっている。与野党対立が続けば、国民生活にも影響する可能性も出てくる。 (大杉はるか)
今国会の法案成立率は十八日時点でわずか23%。二閣僚の問責可決以降で成立した法案は、議員歳費削減や郵政民営化見直しなど計三本にすぎない。
原子力の安全規制に関する組織を一元化する政府の原子力規制庁設置関連法案は自民、公明両党の対案の趣旨を受け入れ、独立性の高い原子力規制委員会を設置する方向で修正される見通し。
与党は十八日の衆院本会議での審議入りを提案した。しかし、問責問題で自民党が難色を示し、審議入りは二十九日以降に先送りされた。新組織は四月一日設置の予定だったが、大幅に遅れている。
二〇一二年度予算の財源となる赤字国債の発行に必要な公債発行特例法案も、四月に予算が成立して以降、衆院で採決されないままになっている。当面は影響がないとされているが、予算執行が止まる懸念は消えない。
与野党合意の上で参院に送られた障害者就労施設支援法案や競馬法改正案など対決型でない法案も、審議が止まっている。
障害者法案が成立しなければ、障害者就労施設の賃金アップが進まず、障害者の自立支援の弊害になる。
競馬法改正案は二十年間で売り上げが七割落ちている地方競馬場の活性化対策。成立が遅れれば地方競馬への交付金が出ず、衰退が進みかねない。
自民党の岸田文雄国対委員長は十八日の記者会見で「問責を受けた閣僚の辞任以外に、(審議促進の)妙案はない」と強調。民主党の城島光力国対委員長は「問責二閣僚の交代には賛成できない」と述べた。
東京新聞 - 2012年5月19日 朝刊