文字の書籍を視覚障害者らのためにCDやテープの音に置き換える「音訳」。多くはボランティア団体に支えられており、まだまだ広く知られてはいないが、徐々に音で読める書籍が増えているという。そんな音訳の現状と未来の可能性を中央大学3年の鈴木あきほさん(20)が取材した。
◇
□今週のリポーター 中央大学 有志学生記者 鈴木あきほさん
≪ボランティアが支え 若人集まれ≫
「音訳」と聞いても、どれだけの人がすぐにイメージを浮かべられるだろうか。恐らく多くの人が首をかしげるのではないだろうか。私も数カ月前まではそのうちの一人だった。
音訳とは、書籍の文字を音、すなわち声に置き換える作業だ。主な利用者は視覚障害者の人たちだが、細かい文字を読むことがつらくなってきた高齢者にも利用されている。
■機械よりも肉声
全国には多数の音訳ボランティア団体がある。東京・荻窪に事務所を構える「テープ版読者会」の代表、舛田妙子さんと事務局長の矢部信博さん(52)に話を聞いた。
矢部さんは最低でも1日に1度は事務所に顔を出す。読書会には、現在30~40人の音訳ボランティアが登録している。いつでも活動できる人ばかりではないので、人手が足りないときもあり、ボランティアは常時募集している。
「基本的にはボランティアさんとメールでやり取りしている。音訳する文章を送り、ボランティアさんが吹き込んだ音声ファイルをもらって、こちらで編集するのが一連の流れ」と、矢部さん。
最近は「音声読み上げソフト」も登場したが、単調な機械音声よりも肉声を好む人の方が多いという。テープで録音していた時代は、読み間違いがあると、録音のやり直しが必要だったが、今ではパソコンを使って音を切り張りできるようになったため、「だいぶ作業が楽になった」と、笑顔の舛田さん。
編集した音声をCDとして複製し、図書館や出版社に発送。北海道から沖縄まで全国各地に届けられる。
利用者の要望は積極的に取り入れるようにしている。週刊誌など新しい情報がほしいという人も少なくない。矢部さんは「どんなに頑張っても1週間はかかるので週刊誌が限界。マイナーな雑誌を読みたい、という声もあるので少しずつ実現していきたい」と意欲的だ。
■出版許可が障壁に
出版社から音訳の許可を得ることも大切な仕事だ。基本的には読者会から版権を持つ出版社に働きかけることが多い。音訳作業はすべて読者会が行い、利益は出版社と読書会の折半だが、それでも、「音訳化」を断る出版社が大半だという。「音訳自体メジャーではないし、出版社としてはやり取り自体面倒臭いのでしょう」と、矢部さん。
音訳CDだけでなく、映画やテレビ番組でも、音が流れない場面で、状況説明などの副音声を入れた視覚障害者向けのソフトはまだまだ少ない。
音訳テープ利用者の山口通さん(61)は「音訳CDも副音声付きの番組も全国的に広がってきた。それでもまだ十分ではない。自治体が中心に動いてほしい」と訴える。
統計では視覚障害者は30万人を超えるものの、ビジネスの対象としては規模が小さすぎるのかもしれない。
これから音訳が広く認知され、普及していくにはどうすればいいのか。
矢部さんは「音訳ボランティアの低年齢化が必須。音質のバリエーションが広がると聞く方も楽しいし、次の世代が興味を持ってくれる」と話してくれた。(今週のリポーター:中央大学 有志学生記者 鈴木あきほ/SANKEI EXPRESS)
統計では視覚障害者は30万人を超えるものの、ビジネスの対象としては規模が小さすぎるのかもしれない。
これから音訳が広く認知され、普及していくにはどうすればいいのか。
矢部さんは「音訳ボランティアの低年齢化が必須。音質のバリエーションが広がると聞く方も楽しいし、次の世代が興味を持ってくれる」と話してくれた。(今週のリポーター:中央大学 有志学生記者 鈴木あきほ/SANKEI EXPRESS)

SANKEI_EXPRESS__2012(平成24)年5月22日付EX(18面)
MSN産経ニュース - 2012.5.22 15:24
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□今週のリポーター 中央大学 有志学生記者 鈴木あきほさん
≪ボランティアが支え 若人集まれ≫
「音訳」と聞いても、どれだけの人がすぐにイメージを浮かべられるだろうか。恐らく多くの人が首をかしげるのではないだろうか。私も数カ月前まではそのうちの一人だった。
音訳とは、書籍の文字を音、すなわち声に置き換える作業だ。主な利用者は視覚障害者の人たちだが、細かい文字を読むことがつらくなってきた高齢者にも利用されている。
■機械よりも肉声
全国には多数の音訳ボランティア団体がある。東京・荻窪に事務所を構える「テープ版読者会」の代表、舛田妙子さんと事務局長の矢部信博さん(52)に話を聞いた。
矢部さんは最低でも1日に1度は事務所に顔を出す。読書会には、現在30~40人の音訳ボランティアが登録している。いつでも活動できる人ばかりではないので、人手が足りないときもあり、ボランティアは常時募集している。
「基本的にはボランティアさんとメールでやり取りしている。音訳する文章を送り、ボランティアさんが吹き込んだ音声ファイルをもらって、こちらで編集するのが一連の流れ」と、矢部さん。
最近は「音声読み上げソフト」も登場したが、単調な機械音声よりも肉声を好む人の方が多いという。テープで録音していた時代は、読み間違いがあると、録音のやり直しが必要だったが、今ではパソコンを使って音を切り張りできるようになったため、「だいぶ作業が楽になった」と、笑顔の舛田さん。
編集した音声をCDとして複製し、図書館や出版社に発送。北海道から沖縄まで全国各地に届けられる。
利用者の要望は積極的に取り入れるようにしている。週刊誌など新しい情報がほしいという人も少なくない。矢部さんは「どんなに頑張っても1週間はかかるので週刊誌が限界。マイナーな雑誌を読みたい、という声もあるので少しずつ実現していきたい」と意欲的だ。
■出版許可が障壁に
出版社から音訳の許可を得ることも大切な仕事だ。基本的には読者会から版権を持つ出版社に働きかけることが多い。音訳作業はすべて読者会が行い、利益は出版社と読書会の折半だが、それでも、「音訳化」を断る出版社が大半だという。「音訳自体メジャーではないし、出版社としてはやり取り自体面倒臭いのでしょう」と、矢部さん。
音訳CDだけでなく、映画やテレビ番組でも、音が流れない場面で、状況説明などの副音声を入れた視覚障害者向けのソフトはまだまだ少ない。
音訳テープ利用者の山口通さん(61)は「音訳CDも副音声付きの番組も全国的に広がってきた。それでもまだ十分ではない。自治体が中心に動いてほしい」と訴える。
統計では視覚障害者は30万人を超えるものの、ビジネスの対象としては規模が小さすぎるのかもしれない。
これから音訳が広く認知され、普及していくにはどうすればいいのか。
矢部さんは「音訳ボランティアの低年齢化が必須。音質のバリエーションが広がると聞く方も楽しいし、次の世代が興味を持ってくれる」と話してくれた。(今週のリポーター:中央大学 有志学生記者 鈴木あきほ/SANKEI EXPRESS)
統計では視覚障害者は30万人を超えるものの、ビジネスの対象としては規模が小さすぎるのかもしれない。
これから音訳が広く認知され、普及していくにはどうすればいいのか。
矢部さんは「音訳ボランティアの低年齢化が必須。音質のバリエーションが広がると聞く方も楽しいし、次の世代が興味を持ってくれる」と話してくれた。(今週のリポーター:中央大学 有志学生記者 鈴木あきほ/SANKEI EXPRESS)

SANKEI_EXPRESS__2012(平成24)年5月22日付EX(18面)
MSN産経ニュース - 2012.5.22 15:24