ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

足りない「レスパイト」

2016年07月19日 00時59分02秒 | 障害者の自立

 全盲で重複障害のある山崎音十愛ちゃん(11)と母、理恵さん(49)=高知市=の壮絶な「生命の闘い」を取り上げた連載「音十愛(おとめ)11歳 奇跡の笑顔」(5~6月に合計21回)。次々と降りかかる試練を乗り越えて、わが子の笑顔をつかみ取った小説のような実話は共感を呼び、県内外から励ましのお便りをいただくとともに、障害児を持つお母さんからは「人ごとではない話」「レスパイト(家族の休息)制度の充実を」といった切実な現実も寄せられました。11人の方の思いを3回続きで紹介します。  

■家族の休日は切実な願い■
全国重症心身障害児(者)を守る会県支部事務局長 森下陽子(47)
 連載に登場した山崎理恵さんは、守る会の仲間です。大変さはある程度聞いていたものの、ここまで壮絶とは。過去を振り返る作業は大変だったと思いますが、完遂されて、他の障がい児家庭の大きな勇気になったことに敬意を表します。

 私の5歳の息子は重度脳性まひで全介助、最重度の意識障害。これまで13回の入退院を繰り返しました。人工呼吸器を使い、経鼻経管栄養、気管切開をしており最重度の医療的ケアが必要です。

 6月24日付「方丈の記」の山崎さんの手記に、「在宅重症児者のショートステイ(短期入所)の主要な受け入れ施設は高知県内で3カ所、合計10ベッドしかない」とありますが、私の息子が利用できるのは夜間に小児科医が対応可能な国立病院機構高知病院のみで、病棟に空床がある時だけです。

 利用の競争率が高く希望日に予約できることはまれ。利用は年2回程度で1、2泊です。息子の体調が不安定であまり利用できないこともありますが、感染症のはやる冬場は受け入れ中止。年間を通じて利用できるわけでもありません。

 日々の生活は、深夜でも2時間ごとの吸引や体位変換があり、まとまった睡眠は取れません。その中での1泊程度の利用は非常にありがたいものの、ショートステイの準備と施設への移動で疲れ、十分に休めたとは言えない実情がありますが、何より、不安なのは、身内が病気になった場合などの緊急時です。また、停電が予想される台風前の予約も、直前ではほとんど無理でした。

 同じ境遇の方々から聞こえてくる話は、ショートステイ先が全く足りないことと、もう一つ、サービスの前後のすきま時間の見守りをしてくれる方がなかなか探せないということです。

 ある働くお母さんは、「全部を頼むわけではない。週のうちの1時間だけの支援があれば救われるのに」。あるお父さんは、「親が楽をしたいわけではない。自分らに何か起きても何とかなるという、日々の生活を安心して送る上でのよりどころがほしいだけ」と言われます。

 県外の知人の話では、2016年春からかかりつけの急性期病院で、家族のレスパイトを目的とするベッドが2床確保され、その結果、月2回の日帰りショートステイ(送迎付き)と1泊の利用も月1回以上可能となり、その恩恵で、きょうだい児のために食事や旅行に行ける時間ができたと聞きました。一方、病院側からは、看護師が子供に慣れるために2泊以上してほしいと要望もあるそうです。

 障がい児の母親は、障害が重いほど離職に追い込まれます。私も2016年春、職場復帰を断念しました。高齢者介護の問題も深刻ですが、子供の介護は成人してもずっと続きます。見守る家族の時間も人生も尊重されることが普通となる社会が来るように、今回の連載を機に関係機関の方々にご一考していただければありがたいです。

■支援慣れは災害時に生きる■
秋田市 佐々百合子(40)
 重症心身障害の子を2014年の11月、2歳3カ月で亡くしました。連載14回目の『「レスパイト」が道開く』の内容はまさにその通り。私が長男とともに、命を絶つことなく過ごすことができた一つの理由は、レスパイト制度の利用でした。

 他人の手を借りるということは、恥ずかしいことでも何でもなく、家族みんなで生きていく上でとても必要なことです。レスパイトもヘルパーも大切な仕組みだと思います。

 ただ、残念ながら秋田では、ヘルパーさんに家の中に入ってほしくない、入ってほしいが同居の祖父母が嫌がってお願いできないという話をよく聞きます。頑張りすぎて破綻しないだろうか、ご両親亡き後の子供さんは大丈夫なのかしら? と、とても心配です。すぐに環境の変化になじむことが難しい障害があるからこそ、逆に普段からどれぐらい支援慣れして生活しているかがとても重要になるのです。

 そしてそのような生活をしていることは、地震などの災害時に、避難所生活を送る上での備えにもつながるんです。地域につながっていれば理解者も増えます。もちろん嫌な思いもするけれど、プラスの面がはるかに大きい。そしてそのことは、健常者と呼ばれる方々にも意義があり、有益だと私は信じています。

 2016年の4月、私の体験を本にしました。題名は「あなたは、わが子の死を願ったことがありますか? 2年3カ月を駆け抜けた重い障害を持つ子との日々」。参考にしていただければうれしいです。


■やっと1泊できました■
東京都 宮副和歩(42)
 高知県出身で、大学進学とともに地元を離れました。3歳の次男は先天性の脳障害で寝たきりです。2015年、気管切開をして24時間人工呼吸器を装着しました。栄養も胃ろうからチューブを介して取るようになりました。いわゆる超重症児です。

 音十愛ちゃんの連載はFacebookで知り、高知新聞のWebサイトで閲覧。感激しました。

 東京にいると、「田舎よりも良い環境にいるのでは?」と尋ねられますが、現実はさほど変わりません。確かに有名な子ども病院があったり、手厚い施策を持つ自治体もありますが、対象はその地域住民だけで、私たちが暮らす区は23区内でも障害児に対するサービスレベルがとても低いと言われています。

 例えば2015年まで、当時2歳の息子には医療的ケアはなく、福祉事務所にレスパイト支援の相談をしたところ、「3歳までは育児と介護の差はつかないし、まだ小さいから重症心身障害児に該当するかも分からない」と言われ、短期入所の受給者証を出してもらうこともできず、ずっとどこにも預かってもらうことができませんでした。

 保育園も、片まひのお友だちですら受け入れ拒否されるくらいなので、首も座らないわが子は、一時保育すら無理だと言われていました。必然的に私は仕事ができず無職で、無職を理由にヘルパー利用の受給者証も出してもらえず、利用できませんでした。

 今は医療的ケアが必要になり、ご想像の通り、私の1日の睡眠は3~4時間の毎日です。買い物に出るのも大変なのでほぼ全てを宅配に頼っています。「大変ね」と言われますし、確かに心身の疲れは取れない日々ですが、一方で、医療的ケアが入ったことで、往診や訪問看護、ヘルパーさんにも来てもらえるようになり、少なくとも精神面ではとても軽くなりました。短期入所も許可が出て、やっと先日、慣らしのために1泊させてもらったところです。

 このような状況ですので日ごろからいろいろな情報を自分で探す習慣が付きました。SNSの恩恵は本当にありがたく、音十愛ちゃんの記事にも出会った次第です。

 高知新聞は小学生の頃から読んでいました。私に障害児という存在を教えてくれたのも高知新聞です。30年ほど前に載った四万十市の水難障害児の森本佳子さんの連載は、彼女が同世代だったこともあり、私には衝撃的な記事でした。今回の音十愛ちゃんの連載は、わが身に通じる思いで読み進め、本当に本当に力をもらい、これからの生活に希望を持つことができました。ありがとうございました。

運動会。母と教頭先生に手を引かれ喜んで走る音十愛ちゃん

2016.07.18    高知新聞


女性の起業・キャリア支援にかじ キャリア・マム 堤香苗社長

2016年07月19日 00時48分16秒 | 障害者の自立

 10万人の主婦ネットワークを使って、リサーチやマーケティング、在宅ワークによる業務請負を行うキャリア・マム(東京都多摩市)は設立から16年。前身の育児サークル発足からは20年あまりを迎える。堤香苗社長は、インターネット時代の女性起業家では草分け的存在だ。「家族や自分自身を大切にできる働き方」を提唱してきたキャリア・マムは近年、主婦ネットワーク活用から歩を進め、女性のキャリア支援に力を入れだした。

 ◆公園ママが原点

 子育て女性が在宅で仕事を請け負う現在の事業スタイルのきっかけは、公園で出会った母親たちにあった。

 フリーアナウンサーだった堤社長は20代を仕事に没頭、30歳を前に出産した。子連れで公園へいくと、同じような人同士で固まる母親集団がいる。障害のある子供がいるなど「みんなと違う」を排除しようとする“空気”に違和感をもった。

 根っこに母親たちの閉塞(へいそく)感があると考える。90年代初頭は寿退社が当たり前。どんなキャリアを築いてきたとしても「よい母親」像だけを求められる。

 「母親だって人生を楽しんでいいはず」。居住地の東京都多摩市で育児サークルを設立したのが1995年のこと。子連れや障害者も歓迎という、サークル主催のコンサートが新聞に掲載されると、家庭に入った女性たちの反響を呼んだ。会員は1500人に膨らんだ。このネットワークを生かすには「主婦から会費をとるのではなく、むしろ主婦がお金を得られる仕組みが必要」と、会社設立を考えたのがキャリア・マムの原点だ。

◆主婦力を生かす

 「障害があったり子育て中だったり、フルスペックでない人も働ける場にしよう」

 子育て中の主婦と企業をキャリア・マムがつなぐ「BtoBtoC」モデルをつくった。キャリア・マムの営業やマネジャーが企業から仕事を受注し、これを在宅ワーカーの主婦らに発注する。子供の発熱などの緊急時には、できる人で分担する「チーム請負受託」にした。

 受注するのは企業のアウトソーシング(外部委託)事業が主だ。データ入力や主婦の感覚を生かしたアンケートに店舗レポート、商品やサービス開発に向けた「主婦目線」のマーケティングも評判を呼んだ。

 当時はそもそも、在宅でできる仕事が少なかった。2000年代初頭は、パソコンとインターネットの普及で追い風が吹いたこともあり、会員は全国10万人にまで広がった。

 現在は常時約2000人の在宅ワーカーが稼働。年間3億円超の売上高のうち、半分以上は企業から在宅ワーカーへのアウトソーシング事業によるものだ。

 ◆多様な働き方実現を

 今年は女性活躍推進法が施行され、働く女性を支援する流れは近年、これまでにない盛り上がりをみせている。そんな中、キャリア・マムが新たな主力事業に育てようとしているのが、女性の起業やキャリア支援だ。

 自治体と連携して起業したい女性にノウハウやサポートを提供するセミナーを開催。在宅ワーカー向けの就業支援イベントや講演も行う。

 「これからの10年は、情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)にロボットといったテクノロジーと、育児や障害で働き方に制限ある人とを組み合わせた、新たな仕組みを作っていきたい」と堤社長はいう。

 「仕事は成長の場であり、クリエーティブなもの」と堤社長。だから女性もどんどん挑戦してほしい。ただ、バリキャリだけでなく「ゆるキャリ」的な働き方があってもいい。多様な働き方の実現が、多様な考えや生き方を認めあう「寛容な社会」につながってほしい。そう願う気持ちが、キャリア・マムの原動力だ。

【プロフィル】堤香苗

 つつみ・かなえ 早稲田大学第一文学部卒。在学中からフリーアナウンサーやラジオDJなどとして活躍。1995年育児サークル「PAO」設立。97年有限会社アクセルエンターテイメンツを設立し社内にキャリア・マム事業部設置。2000年キャリア・マムを設立し現職。パソコンの普及とともに全国10万人の主婦ネットワークを構築。兵庫県出身。2児の母。

2016.7.18    SankeiBiz