◇近江学園職員が「段取り八分」
◇職業教育や課題取り組みなど
知的障害児らの入所施設「県立近江学園」(湖南市東寺)の職員、吉田巧(たくみ)さん(41)が職業教育や、就労支援の経験をまとめた「段取り八分」をサンライズ出版(彦根市)から自費出版した。吉田さんは「重要なのは指導する側が地道に、根気よく取り組むこと。障害者支援はもちろん、職業教育に携わる人の参考になれば」と話している。(生田ちひろ)
吉田さんは2001年から同学園に勤務。これまでに木工科の担当として、ものづくりを通じて子どもたちを指導し、08年からの5年間は主任を務めた。現在は重度障害児の生活支援に関わる。
「段取り八分」は、今から5年ほど前、部下の育成に悩んでいた友人が、吉田さんの仕事に興味を持ったことがきっかけで出版を思い立ったという。
主任時代の経験を中心に執筆。タイトルは「仕事は段取りが万全なら8割が終わったも同然」という意味で、木工科で肝要とされる言葉を使用した。内容は、子どもたちの一日の生活や、毎月の個別面談で仕事を振り返る様子、職場実習などについて記している。
自らの経験から、「社会で働くには、仕事力、社会性、生活力、豊かな心の四つが必要と痛感した」と吉田さん。毎朝、子どもたちの言動を通じて、課題に向き合う姿勢が整っているか観察。「あいさつをしよう」「身だしなみを整えよう」などと具体的に呼び掛けたという。
また、課題に取り組む際にも、指示通りの方法で集中できているかどうかを確認。表情が曇っていたり、疲れを見せていたりすれば、「原因を丁寧に探ることが大切」としたためた。
吉田さんは「心が満たされて、初めて健康的な生活を送る意欲や自制心が生まれ、それが社会性を育み、仕事に結実する」と話す。本には、その思いを反映させたという。
四六判、195ページ。1300円(税抜き)。近江学園で販売しているほか、県内書店で注文を受け付けている。
◇近江学園 「障害者福祉の父」といわれる糸賀一雄氏(1914~68年)が戦後間もなく設立。教育として木工や窯業などの製作や造形活動を重視し、知的障害のある、原則18歳以下の男女が入所する。木工科では15~18歳の入所者が糸のこや機械を使って椅子や台、小物を作り、心理、技術両面で、社会で働く態勢を整えられるよう支援する。
2016年09月15日 Copyright © The Yomiuri Shimbun