障害者スポーツの祭典、リオデジャネイロ・パラリンピックが18日閉幕した。2020年東京大会を控える日本はメダル獲得数で前回ロンドン大会の16を上回る24と健闘したが、内訳は銀10、銅14。1964年の第2回東京大会に初参加して以降で、初めて金メダルなしに終わった。4年後を控えてメディアやスポンサーが格段に力を入れた今大会。一般の関心が高まった中、競技力向上の課題が浮き彫りになった。
◇「レベル上がった」
大会序盤から雲行きは怪しかった。視覚障害者で争う柔道で、100キロ超級の正木健人(エイベックス)が連覇を逃し銅。「柔道自体のレベルが上がっている」と漏らしていた。車いすテニスでシングルス3連覇を目指した国枝慎吾(ユニクロ)は、肘手術の影響でダブルスの銅のみ。水泳(視覚障害)の木村敬一(東京ガス)は一人で四つのメダルを獲得するも金は逃した。団体競技ではボッチャが銀、車いすラグビーが銅に輝いたが、前回優勝のゴールボール女子、人気面でも期待された車いすバスケットはメダル争いに絡めなかった。
◇練習環境で見劣り
陸上でコーチ兼選手の松永仁志(WORLD-AC)が指摘した。「ロンドン大会までの力を持ってきただけ。東京に向けて、日本全体の底上げはこれから」。強化が停滞している現状は切実だ。
100以上の金を獲得した中国、ドーピング違反で大会を締め出されたロシアや隣国のウクライナは、国からの強化予算が潤沢だ。米国ではアフガン戦争で障害者となった兵士にスポーツを奨励し、軍の施設まである。国威発揚を目的とした各国と事情は異なるが、日本は障害者に対応できる強化拠点が整備されておらず、見劣りする。ブラジルはリオ大会開催をきっかけに、パラリンピックを目指す選手専用の大規模な練習拠点をサンパウロに新設して将来に備えた。今大会のメダルランキングは8位に入った。
選手発掘の問題もある。日本は個人単位で行われているのが実態。陸上女子400メートル(切断など)で銅の辻沙絵(日体大)は健常者に交じってのハンドボールから転向した。短期間でメダリストになれたのは、本人の努力とともに、指導者の育成方針が当たったから。競技カテゴリーが細分化しているため、他国の選手層を見極めた重点的な強化はカギを握る。
◇アスリート第一で
「メダル争いが全てではない」との見方は根強い。しかし世界の競技レベルが上がる中、国の障害者スポーツに対する理解度を示す指標になることも確かだ。選手も五輪同様、「見るスポーツ」としての認知度を求める。障害を克服したことへの感動よりも、「アスリートとして見てほしい」との声は多く聞かれる。
閉会式に出席した小池百合子東京都知事は、アスリートファースト(選手第一主義)の徹底を掲げ、「チケットが取り合いになるくらい盛り上げていきたい」と4年後の抱負を語った。バリアフリーに配慮したインフラ整備の面と合わせ、東京大会に向けた準備が本格化する。
リオデジャネイロ・パラリンピックの視覚障害マラソン女子でゴールする道下美里(右)。伴走した健常者との信頼関係が銀メダルを支えた
(時事)(2016/09/21-時事通信 )