④農業と障害者雇用の可能性 炭谷茂氏
農福連携は人手不足の農業と就労場所の少ない福祉の双方にとって大きなメリットです。農業従事者の不足や耕作放棄地の増大など、農業の衰退が著しい現状があります。一方、障害者の就労状況をみると、低すぎる収入や就労場所の不足、生きがいのある仕事に就けない障害者が多いなど問題が山積しています。
障害者が働く場所として農業にぜひ目を向けてほしいです。農業は障害者の就労場所としてこれから伸びていく可能性がとても高く、取り組み方によっては非常にうまくいくと思っています。
障害者が農業をする場合、障害者の心の安定や生きがいを持って働けるなどメリットが多数挙げられます。講演では、埼玉県飯能市の認定NPO法人ぬくもり福祉会たんぽぽの桑山和子会長に実例を紹介していただきます。
また、農業はより多くの収入が期待できます。普通の農業をやっていてはだめで、経営感覚を持って取り組むことが重要。その上で、その土地に合って、工夫を凝らした特色のある農作物を作らないといけません。成功しているケースは、皆それぞれ個性があります。
例えば、ぬくもり福祉会たんぽぽでは、その土地に昔からあり、災害や害虫に強い固有種を使うことで、農薬や化学肥料を抑えて野菜を生産し、成功しています。養蚕業が盛んだった栃木県小山市の社会福祉法人パステルは、桑の葉を加工して、ケーキやパン、桑茶を作るなど差別化をして売り出しています。2年ほど前からは本格的に養蚕業も始め、軌道に乗っています。
一番の課題は販路先の確保です。生産量が少ないことなどが原因で、市場で取り引きできないことが多いです。スーパーマーケットで売ろうとすると、中間マージンが多すぎて、なかなか採算が合いません。
解決策の一つとして期待しているのは、福祉施設です。福祉業界だけで日本の消費需要の一定の割合を占めています。病院も含め、販路が広げられれば、十分採算が合うし、経営も安定します。
【すみたに・しげる】
1946年生まれ。東京大卒業後、厚生労働省(当時・厚生省)に入省。社会・援護局長、環境省官房長、環境事務次官などを歴任し、2006年に退任。現在、日本障害者リハビリテーション協会会長、ソーシャルファームジャパン理事長なども務める。
第4回福祉新聞フォーラム「福祉法人の経営と管理」
10月10日(水)10:40~16:25
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参加費 1人6,000円(新聞購読法人は1人分で2人参加できます)
2018年09月13日 福祉新聞編集部