大阪府住宅供給公社が今夏、賃貸マンションの空き部屋を活用した食堂を大阪市にオープンさせ、「孤食」に陥りがちな高齢者らの集いの場となっている。同公社と協定を結ぶNPO法人が運営し、働くのは障害者のスタッフ。お年寄りをサポートする新たな取り組みが注目されている。
この日のランチは、酢鶏や大豆サラダ、コンニャクの炒め煮など。障害者の就労支援などに取り組むNPO「チュラキューブ」(中央区)の事業所でつくられ、栄養のバランスにも気を配る。調理や配膳は障害のあるスタッフが担っている。
同公社は、家賃の一部を国や府が補助する「高齢者向け優良賃貸住宅」を展開。同公社の賃貸住宅で65歳以上の独居世帯は約2700戸(今年6月末現在)あり、全体の約15%を占める。一方、週の半分以上、1日の全ての食事を1人で食べる「孤食」の人の割合は近年増加傾向にあり、農林水産省の2017年度の「食育白書」によると、約15%に達する。
高齢者の孤食は、うつや認知症のリスクを高めるとの研究もあり、同公社の担当者は「高齢者の孤食防止や、障害者の働く場につなげたい」と話す。食堂の安定運営に向け、入居者だけでなく周辺住民の利用者も増やそうとPRを図る。
8月の食堂オープン以来、毎回利用しているというマンション住人の辰巳安英(やすえ)さん(82)は「ここで食事するとリラックスできる。夫が亡くなってから独り暮らしで寂しかったが、今は一番の楽しみです」と笑顔で話した。
営業は毎週月、水、金曜日の正午から午後2時まで。1食450円(税込み)。