農業分野での就労を目指す障害者が農作業を体験できる農園「国府福祉農園」が鈴鹿市国府町にお目見えし、市内六つの福祉施設の利用者十九人が十二日、野菜の苗植えをした。農業分野の求人と障害者の就労を結び付ける市内の一般社団法人「障がい者アグリ就労人材センター」が農園を整備し、施設利用者を招いた。
センターは二〇一六年十二月、福祉と農業に携わる有志で発足。農業分野の人手不足を障害者の就労で補う「農福連携」に取り組んでいるが、センターの仲介で就労を受け入れた農家は六軒にとどまる。求める水準の人材を派遣してくれるのかと、農家側は慎重になっているのが原因とみられる。
このため、センターは障害者が要求に少しでも応えられるよう経験を積む場として農園を計画。国府町の未利用地約千三百平方メートルを地元所有者から有料で借り八月から、肥料の投入や畝作りの下準備を進めた。初めて栽培する野菜は取り扱いが比較的容易な高菜に決め、八百平方メートルで栽培することにした。
この日は小雨が降る中、知的や精神の障害者十九人が集合。苗の植え方について協力農家に教わったり、支援役の「ジョブトレーナー」から助言を受けたりしながら、一時間で約二千三百本を植えた。
立ち会った福祉施設の職員、中村勇也さん(42)は「室内作業と違って気持ちが解放され、楽しく作業できたようです。環境の変化に対応できる力を付けてくれればいい」と期待。指導した同市柳町の農家、川出洋正さん(63)は「障害者も要領さえ覚えれば十分やっていける。経験を積み、自信を付けてほしい。ジョブトレーナーも農業を勉強してもらえるとありがたい」と求めた。
センターの事務局担当、小林卓さん(66)は「農作業にはいろいろあり、障害が重くてもできることはある。農業は、障害者が活躍できる可能性を秘めた分野だ。他の施設からも今後、農園作業の体験に参加してほしい」と話している。
障害者は今後、除草や収穫で携わる。高菜は十二月に収穫し、漬物業者に製品化してもらい、センターが販売する。残りの土地はセンターが大根を植え、漬物業者に販売する。いずれも収益は運営費に充てる。
2018年9月13日 中日新聞