◇問われる「確かな居場所」づくり
甲府市天神町のNPO「いでたちの家 ひかりハウス」。一軒家を借り切った作業所では、知的障害や精神障害を持つ人たちが、黙々と色とりどりのガラスの断面を削ったり、ガラス片を組み立てたりしている。制作するのはステンドグラス製品。目標は「売れる商品を作る」ことだ。
ひかりハウスは06年1月、福祉施設職員だった斉藤加代子さん(58)が設立した。
当初は農作業が中心だったが、長年ステンドグラスを制作してきた姉の河口妙子さん(61)の協力を得て、ステンドグラスを始めた。「日常生活では触れられない『きれいな物』を身近に感じてほしかったし、さまざまな工程があるので個性に合わせた作業ができると思ったのです」と斉藤さんは語る。
ひかりハウスには現在、20~65歳の男女9人が通う。携帯電話のストラップや小さな容器をバザーなどで販売している。
1日の作業量や手順は決められていない。集中力は続かないが手先が器用な人、逆に細かい作業は不得手だが根気のある人もいる。気が乗らなければ休んでもいい。各自の得手不得手に合わせて仕事を振り分けている。
「みんな仕事にプライドを持っている。『人と同じようにする必要はない』と言えば、思いもしない作品が出来ます」(斉藤さん)。基本的な技術は身についた。来年は木を模したナイトランプに挑戦しようと考えている。ナイトランプは、作家によっては数十万円する商品もある。商売として成り立つ可能性が十分にある。
甲府市の30代の男性は、ひかりハウスに通い初めて10月で1年になった。母親(66)は「良く続いている」とうれしそうだ。
男性には20歳のころ、精神障害の症状が表れた。「心の中から声がする」と言うようになり、入退院を繰り返した。たどりついたのが、ひかりハウスだった。仕事に出るのがおっくうになる日もある。そうすると斉藤さんから「待ってるよ」と電話がかかる。
「待っていてくれる人たちがいるのがうれしい。この仕事なら頑張れると思う」と男性は話す。技術も身につき、他のメンバーを指導することもある。「1人になっても、大丈夫じゃないかな」
母親は今夏、展示会で初めて息子の作品に触れ、その才能に驚いたという。「『こんなことができるのか』と。優しい子なんだけど、仕事が続かなくて心配だった。光が見えてきました」
◇ ◇
障害者の就労支援に携わる甲府圏域地域療育コーディネーターの出口幸英さん(38)は「一概には言えないが、知的障害は単純作業を長時間続けられる特性がある。精神障害者も、短時間なら障害のない人と同等の仕事ができる」と話す。
ただし、周囲の理解と支援が不可欠。それさえあれば、障害者が収益を生む事業を営むことは可能と出口さんは考えている。
実際、南アルプス市の「みらいコンパニー」は果物や野菜の生産・販売で収益を上げている。同市の「どんぐりの家」は「癒やし」ブームに着目。「コケ玉」を育てて販路を拡大しようとしている。
生き生きと仕事のできる確かな居場所があれば、本人も家族も希望を見いだせる。それを受け止められるかどうか、社会の側も問われている
甲府市天神町のNPO「いでたちの家 ひかりハウス」。一軒家を借り切った作業所では、知的障害や精神障害を持つ人たちが、黙々と色とりどりのガラスの断面を削ったり、ガラス片を組み立てたりしている。制作するのはステンドグラス製品。目標は「売れる商品を作る」ことだ。
ひかりハウスは06年1月、福祉施設職員だった斉藤加代子さん(58)が設立した。
当初は農作業が中心だったが、長年ステンドグラスを制作してきた姉の河口妙子さん(61)の協力を得て、ステンドグラスを始めた。「日常生活では触れられない『きれいな物』を身近に感じてほしかったし、さまざまな工程があるので個性に合わせた作業ができると思ったのです」と斉藤さんは語る。
ひかりハウスには現在、20~65歳の男女9人が通う。携帯電話のストラップや小さな容器をバザーなどで販売している。
1日の作業量や手順は決められていない。集中力は続かないが手先が器用な人、逆に細かい作業は不得手だが根気のある人もいる。気が乗らなければ休んでもいい。各自の得手不得手に合わせて仕事を振り分けている。
「みんな仕事にプライドを持っている。『人と同じようにする必要はない』と言えば、思いもしない作品が出来ます」(斉藤さん)。基本的な技術は身についた。来年は木を模したナイトランプに挑戦しようと考えている。ナイトランプは、作家によっては数十万円する商品もある。商売として成り立つ可能性が十分にある。
甲府市の30代の男性は、ひかりハウスに通い初めて10月で1年になった。母親(66)は「良く続いている」とうれしそうだ。
男性には20歳のころ、精神障害の症状が表れた。「心の中から声がする」と言うようになり、入退院を繰り返した。たどりついたのが、ひかりハウスだった。仕事に出るのがおっくうになる日もある。そうすると斉藤さんから「待ってるよ」と電話がかかる。
「待っていてくれる人たちがいるのがうれしい。この仕事なら頑張れると思う」と男性は話す。技術も身につき、他のメンバーを指導することもある。「1人になっても、大丈夫じゃないかな」
母親は今夏、展示会で初めて息子の作品に触れ、その才能に驚いたという。「『こんなことができるのか』と。優しい子なんだけど、仕事が続かなくて心配だった。光が見えてきました」
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障害者の就労支援に携わる甲府圏域地域療育コーディネーターの出口幸英さん(38)は「一概には言えないが、知的障害は単純作業を長時間続けられる特性がある。精神障害者も、短時間なら障害のない人と同等の仕事ができる」と話す。
ただし、周囲の理解と支援が不可欠。それさえあれば、障害者が収益を生む事業を営むことは可能と出口さんは考えている。
実際、南アルプス市の「みらいコンパニー」は果物や野菜の生産・販売で収益を上げている。同市の「どんぐりの家」は「癒やし」ブームに着目。「コケ玉」を育てて販路を拡大しようとしている。
生き生きと仕事のできる確かな居場所があれば、本人も家族も希望を見いだせる。それを受け止められるかどうか、社会の側も問われている