横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

1/3の単独冠動脈バイパス術をMICS-CABG

2020-12-30 11:34:42 | 心臓病の治療
横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では冠動脈バイパス術においても可能な症例は低侵襲アプローチを優先して採用しています。
 左小開胸アプローチで、人工心肺を使用せず心拍動下に吻合するこの手術は特殊な専用の開胸器、攝子などの手術器具が必要です。最も導入しやすいのは、左冠動脈前下行枝の完全閉塞(CTO)症例に対して、左小開胸で左内胸動脈を吻合するMID-CABですが、特にこれに加えてほかの血行再建をする多枝バイパスを特にMICS-CABGと呼んでいます。二本目の再建枝は右内胸動脈や大伏在静脈、右胃大網動脈を使用します。
 この術式を導入して2年となりますが、可能な症例をすべて小開胸アプローチとすることにして診療してきましたが、そうすると約3分の1の症例で実施可能でした。2020年も1/3の症例に対して実施しました。
 特に感染症が起きやすい糖尿病患者や透析患者さんには術後合併症が少なく回復が速いというメリットがあります。関東でもまだ他枝バイパスを左小開胸アプローチで行っている施設は少ないので、少しでも広まるように他施設にも技術指導に依頼があれば行く方針としており、2020年は3か所の施設に指導に行き、また手術見学も受け入れております。
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Sutureless弁は大動脈弁置換術を大きくかえるきっかけになるか

2020-12-30 11:26:25 | 心臓病の治療
 消化管の手術では現在はほとんどの吻合が自動吻合器を使用して行われています。筆者が消化器外科医であった時代には自動吻合器が出現してもしばらくは手縫いの吻合との使い分けがされていましたが、その進化によりほぼすべてが自動吻合器となり、手縫いをする機会が少なくなっていると聞いています。
 大動脈弁置換術において縫わなくてもよいSutureless弁が出現し、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科でも今後導入予定ですが、これが今後標準術式になる可能性が十分あると思われます。そうするて、若手医師が最初に執刀する手術がこのSutureless弁という時代がすぐに来るのではないでしょうか。
 手術時間が短くなり、低侵襲性がさらに進化するため、確実に広まると思われます。

 最初の導入は筆者が執刀する必要がありますが、数例の症例を経て、その後は後輩の育成を目的に、指導に回る予定です。手技的に難易度が高いといわれている右小開胸アプローチでの大動脈弁置換術においても、このSutureless弁を使用することによって、確実性があがり、習熟の過程の修練医でも安心して執刀を任せられるようになるのではないかと思います。
 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では2021年度も新たな修練医が入ってくる予定ですが、より手術執刀のチャンスが増えるように、こうした新しい技術も積極的に導入していく予定です。
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2020年の大動脈弁置換術は45件(心臓手術の4割以上)・半数はMICS(右小開胸アプローチ)

2020-12-30 11:15:45 | 心臓病の治療
 新型コロナウィルスパンデミックの影響で心臓血管外科手術も件数が減少する中、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では大動脈弁置換術のみが大きく件数を増加させました。高齢化による患者数の増加もありますが、本年は特に大動脈弁置換術が増加しております。県内の他病院と違い、基本術式を右小開胸アプローチ(低侵襲心臓手術=MICS)としているため、それを希望してご紹介いただいてる症例が多いことも関係していると思います。

 実際には上行大動脈置換術や冠動脈バイパス術を併施している症例があるため、実際の大動脈弁置換術を行う症例の半数ほどになっておりますが、おそらく神奈川県内のどの施設よりも多く実施しているのではないかと思います。特に大動脈弁置換術の小開胸アプローチは手技的に難しい面もあり、導入している施設が少ないのも現状で、本年は大学病院の教授や施設の部長クラスのドクターが多数見学に見え、その導入のお手伝いをするという貴重な機会もありました。企業企画のオンライン講演会でも、このMICS-AVR(右小開胸アプローチによる大動脈弁置換術)に関する講演の機会をいただき、見学についての問い合わせをさらに複数いただいています。

 2021年もこのMICS-AVRのトレンドはさらに進化し、Sutureless弁の導入によってより確実に短時間で実施できるようになれば、さらに手術の低侵襲化がすすみ、また三次元内視鏡システムの導入によって、さらに小さい皮膚切開で実施できるようになることを当面の目標とする到達点としています。
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2020年の横須賀市立うわまち病院心臓血管外科手術件数は305件

2020-12-30 10:55:20 | 心臓病の治療
 2020年もあと2日で終わりになりました。今年は最初から新型コロナウィルスパンデミックに大きく影響された一年でした。学会などもほぼすべて中止、延期、またはオンライン開催となり、実際に学会らしいものとしては、岩手県雫石市で行われた心臓血管外科ウィンターセミナーが最後で、講演を頼まれていた北九州市で開催予定だった胸部外科教育施設協議会も一年間の延期となりました。最後に12月の胸部外科学会関東甲信越地方会は現地開催となりましたが、今後も学会などはオンラインまたはハイブリッド開催が主流になり、今までのようなお祭り的な意味合いのイベントではなくなってしまっていくのではないかと思います。

 横須賀市立うわまち病院心臓血管外科の手術件数は305件で、前年から約5%ほどの手術件数の減少でした。多くの施設で1割くらいの件数減少と聞いていますが、当院も院内クラスター発生により大きく影響され、減少に至ったものと思われます。

 まだまだ新型コロナウィルスが猛威をふるっており、この診療抑制はしばらく続くものと思われます。

横須賀市立うわまち病院心臓血管外科2020年手術件数
手術件数 305件 
心臓胸部大血管手術件数 104件 
腹部大動脈瘤(腸骨動脈瘤含む) 41件(EVAR 5)
末梢動脈疾患 15件
下肢静脈瘤 93件 
シャント造設術 35件 
その他 20件
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