横須賀うわまち病院心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

新型コロナウィルスパンデミックの心臓血管外科診療への影響

2020-12-05 12:26:17 | 心臓病の治療
 新型コロナウィルスパンデミックにより重症患者が増えるとICU管理が必要な患者さんが増加。これによって最も大きな影響を受ける診療科の一つは心臓血管外科です。ECMOといわれる人工心肺装置は、主に循環器の救急患者を救命するための装置です。循環器の救急を受けている施設や心臓血管外科を有する施設では必ず持っている装置ですが、COVID-19の呼吸不全患者さんに主に使われてしまうと、ICUもICUスタッフも占拠されて通常の心臓血管外科診療ができなくなります。
 緊急事態宣言をしている第一波のときには多くの病院で一般病棟を閉鎖して、その看護師などのスタッフを新型コロナウィルス患者に充てるなどの措置をしてしのぎました。そうした対応をすると、通常の患者さんが入院、治療しにくることがなくなるために、その分の収入が減ってしまい、かといって、新型コロナウィルス患者さんの多くは、手がかからない人も多く、またECMO以外は特殊な治療もしないため、病院への収入も大幅に減少します。
 前任地の自治医大さいたま医療センターでも一時ECMOが4台運転されており、これは全国のECMO患者さんの10%に相当する数だったようですが、この時は毎月億単位の減収となったようです。
 新型コロナウィルスで、心臓血管外科診療もできなくなり、病院も億単位の減収を迫られるという、非常に厳しい状況がまた起ころうとしています。
 なんとか、ここで食いとどまって、ワクチンができるまで持ちこたえてほしいです。
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静脈血栓症後の下肢浮腫

2020-12-05 12:22:48 | その他
 深部静脈血栓症は主に下肢の静脈に血栓をきたし、静脈の閉塞のために下肢がむくみます。足のむくむ病気の典型の一つです。この病態は、抗凝固療法などで徐々に血栓が溶解して血流が再開すると浮腫が軽快することがおおいのですが、実は浮腫が持続する患者さんが多くいます。これは、静脈起こしているときに、静脈弁が破壊されてしまうため、下肢の血液が静脈弁によって心臓まで上がっていくことができずに起こる浮腫です。これは静脈血栓症の後遺症ともいえます。
 静脈弁を再建することは難しいので、なかなか有効な治療がないのが実情です。
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心室中隔欠損症に対する右小開胸アプローチによる低侵襲手術

2020-12-05 12:08:58 | 心臓病の治療
 心室中隔欠損症は、どの位置に存在するかによって、アプローチが違うため術前の詳細な手術プランの検討が必要です。超音波検査がもっとも有力な検査ツールであることは間違いありませんが、穴の正確な位置、弁など他の構造物との関係を評価するのには造影CTやMRIが有力な武器になります。
 横須賀市立うわまち病院では、小開胸アプローチによる低侵襲心臓手術(MICS =Minimally Invasive Cardiac Surgery)を基本にしているため、心室中隔欠損症においても右小開胸アプローチが可能かどうかの観点から術前評価を行っております。
 心室中隔欠損症のタイプとして最も多いのは膜様部欠損です。これは主に三尖弁中隔尖の直下に存在するため、右房からのアプローチが一般的です。右房切開して三尖弁の中隔尖をけん引して欠損孔を露出、閉鎖しますが、中隔尖に遮られてうまく見えない症例が多いので、当施設では中隔尖を弁輪近くで切開してアプローチしています。これにより視野は抜群に改善します。切離した三尖弁中隔尖はその後、縫合し、多くの場合は三尖弁逆流の予防のために人工弁輪を縫着しています。これらの膜様部欠損に対しては右小開胸アプローチでのアプローチが可能です。左心系と交通しているため必ず大動脈遮断して心筋保護液で心停止下に行います。中隔欠損部が袋状になっていて、それがまるで心室中隔瘤のように見える場合も同様ですが、瘤を残さず、パッチ縫着点をいろいろな角度から見たい場合は、従来の正中切開アプローチで大動脈を切開し、右房側からと大動脈側と両方から観察して手術する場合もあります。
 肺動脈弁直下型の場合は肺動脈切開からアプローチするため右開胸からは不可能であり、この症例も従来の正中アプローチが必要です。
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