横須賀うわまち病院心臓血管外科

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医療保険の選び方:保険会社のウソに惑わされるな!

2019-08-11 07:40:28 | 心臓病の治療
 人の体に関する保険は、大きく病気やケガで入院した際にお金がもらえる医療保険と、死亡時や高度障害で仕事や日常生活ができなくなった場合にもらえる生命保険があります。たくさん会社や種類がありすぎて選ぶのが難しいのが現状です。
 基本的に、医療保険は掛け捨てです。部分的に返金されるものもありますが、そんなのだったらその分保険料を安くするべきです。
 最近は高血圧や高脂血症などで治療中でも加入可能な商品も出てきたようで、より保険の選択に幅が出てきました。

 一つ大事なこととして、病気をしてからでは加入できないので、特に病気がないうちに終身保険に入っておくことが重要です。普通定期保険では10年で満期が来て、その間に病気にかかったりすると保険がそのあと継続できないリスクがあります。まさに、保険は転ばぬ先の杖です。その意味で、特に治療中でないのであれば、健康な人のみが入れる終身保険がベストです。病気の方も加入可能な保険は、その分ハイリスクな加入者が増えて保険のコストがかかるので保険料が当然ながら高額になります。

 「最近は入院期間も長くなっているので、短い給付期間の商品でも大丈夫ですよ」って宣伝する保険のセールスマンやCMの宣伝もありますが、十分な注意が必要です。たしかに政府の医療費抑制の施策によって入院期間は短縮の傾向にあり、横須賀市立うわまち病院の平均の入院期間も8日ほどです。現在の保険は120日くらいまでの給付期間が多くなっていると思います。一日5000円×120日間で60万円+手術料たとえば30-50万円 = 100万円をもらうために毎年3-4万円払うということでしょうか。20歳から80歳までもし60年払って病気をしなかった場合は、最大の保険で受け取れる額の2倍を払うことになり、「かけ損」な可能性もあります。100万円も大金という人もいるかもしれませんが、保険というのはそういうものではありません。3か月以上入院した場合は、毎月の収入がない状態がその後も続くことになります。病気の中には1年以上入院継続になるリスクも十分あるということを最近の保険は考えていない、と思います。心臓血管外科の疾患では、半年以上入院するような重症の患者さんが少なくありません。高度の障害が出た場合は年単位の入院の患者さんもいます。例えば、5000円×730日(2年)=365万円保証されていれば、だいぶ違うと思います。すなわち、医療保険の最も重視する点の一つは、「入院日数の何日まで給付されるか」ということです。長期入院には保証しないが、1日の入院でも保険金がおりる、というのが最近の保険です。

 たしかに、せっかく入院したのに、1日や2日で保険金がおりないのでは入っていて損、って気持ちになってしまいます。しかし、1日目の入院にお金を払う分、長期入院に支給する額を削っているのです。たしかにほとんどの患者さんは1日とか短期の入院ですので、払っている人がよりたくさん保険金がもらえる、ということで加入者を集めるのが最近の保険です。保険会社としては、加入さえしてくれれえばいいだけですので、より多くの人が入ってくれるためにあの手この手を考えているのです。その意味で昔の簡保(郵便局の簡易保険)など、最初に7日間は保険金は払わない、という商品は理に適っている部分もあります(そのせいで、7日以上入院させてほしい、という患者さんが多数いました)。

 最近は入院期間無制限という最強の医療保険も出ています。その分、年単位で入院するような大病を患っても最低限の家族の生活を保障できます。

 実は日本の医療の自己負担は非常に低額です。長期間入院した場合は、毎月の医療費負担は高額療養費の対象になるので、その年収にあわせた一定額で抑えられます。たとえば、多くの老人の患者さんの一か月の入院医療費の自己負担額は10万円ほどです。たとえ急性大動脈解離の手術をうけて、その月の医療費が600万円かかっても、その3割の180万円を請求される訳ではありません。その170万円引きの10万円ほどでいいのです!その医療費を払う分の保険料をできるだけ長くもらえることが一番重要なのです。
 
 保険屋さんと時々保険の商品について話をすることが仕事上ありますが、保険屋さんより医師の方が知識をもっていることも多いので、保険の窓口に行くよりもまず、担当医に相談してはどうでしょうか?

続編は次回。
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