続いては、綾辻行人の作品2作。
まずは③綾辻行人「十角館の殺人」
彼のデビュー作であり、「ミステリー史上最大級の驚愕の結末が読者を待ち受ける」といううたい文句がついている。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を意識したと思われる内容だが、いわゆる「叙述トリック」ものであり、途中までミスリードしながら、終盤の一行でもって、一気に流れをひっくり返す、という展開となっている。
確かに、あの一行には驚いた。
しいて言えば、登場人物の名前を、氏名ではなくニックネームで書き進めているので、余計にわかりにくくなっている中で、エラリーとかアガサなどという古今東西の有名な作家・探偵のニックネームがどういう経緯でつけられたのかはともかく、守須という名前の人物のニックネームが「モーリス(ルブラン)」ではない、というのは、ちょっとフェアではないような気はするが、本人があえて「モーリスはありきたりすぎてイヤだ」と言ったから別の名前にした、という設定であってもおかしくはない・・・かも知れない。
ただ、犯人がわかった後で感じたこと。
それは「いや、いくら何でもあの犯行は無理だろう」ということ。
犯人は、「島の連中には7人で来た、と思わせ、本土の人たちには、島には6人で行っていると思わせた」というトリックを使ったということになっているのだが、そのために孤島と本土とを毎日何回か往復している。
この間、島の連中が犯人のいないことにまったく気が付かなかった、というのは、あまりにも不自然だ。
それでなくても、殺人が行われた後である。
皆の神経はいつも以上に高ぶっているはずなのに、他の連中の動向にまったく無頓着であるわけがない。
実際、本土から島に戻ってきたところを仲間の一人に見つかってしまうのだけど、よりによって足をケガしていたヤツだから、後から追いかけていって殺害した、という展開は、あまりにも安易だろう。
同じ建建物の中にいるのだから、ちょっとした物音で気が付かれてしまう可能性の方が高いと思われるし、そもそもそんな運任せの計画を立てる時点で、杜撰としか言いようがない。
しかも、一度は「みんなの部屋を確認しよう」という流れになるのだけど、なぜかそれをやめてしまう。
例え仲間の中に犯人などいない、と思っていたとしても、誰がどうやって殺人を行ったのかわからない状況の中では、犯人がどこかに潜んでいるかも知れないわけだし、一度それぞれの部屋の中を確認するということは、まず間違いなくやると思う。
しかも、連中は全員ミステリー研究会のメンバーだ。
凡人以上の感覚を持っているはずなのに、あまりにも無防備すぎて、ここは違和感バリバリの展開だった。
特に、最後に殺されたエラリーという男は、はっきり言って「お前、バカなの?」としか思えない。
自分の他にはもう一人しか残っていないという状況の中で、なお「犯人は亡くなったと思われている中村青司だ」と思い込む神経もどうかしているが、少なくとも何の疑念もなく、犯人に用意されたコーヒーを飲んでしまうとは、無防備にもほどがある。
さらに、それ以前の問題として、犯人は亡くなった中村青司の娘と恋仲であった、ということだけど、わざわざ刻印入りの指輪を作るほどの仲なのに、仲間の誰もが知らなかったということはあり得るのか?
それに、亡くなった娘は心臓に持病があった、ということになっているが、そんな女性を夜遅くまで飲み会に引っ張り回す方もどうかしているけど、恋人として「お前は体が弱いのだから、早く帰った方がいい」とか言わなかったの?
オレは先に帰ったから、後で起こったことは知らなかった、なんてことを、よくも白々しく言えるものだと思う。
いずれにしても、よく考えられたトリックとは言え、たぶん実行不可能だろうから、私ならゼッタイにやらない。
まずは③綾辻行人「十角館の殺人」
彼のデビュー作であり、「ミステリー史上最大級の驚愕の結末が読者を待ち受ける」といううたい文句がついている。
アガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」を意識したと思われる内容だが、いわゆる「叙述トリック」ものであり、途中までミスリードしながら、終盤の一行でもって、一気に流れをひっくり返す、という展開となっている。
確かに、あの一行には驚いた。
しいて言えば、登場人物の名前を、氏名ではなくニックネームで書き進めているので、余計にわかりにくくなっている中で、エラリーとかアガサなどという古今東西の有名な作家・探偵のニックネームがどういう経緯でつけられたのかはともかく、守須という名前の人物のニックネームが「モーリス(ルブラン)」ではない、というのは、ちょっとフェアではないような気はするが、本人があえて「モーリスはありきたりすぎてイヤだ」と言ったから別の名前にした、という設定であってもおかしくはない・・・かも知れない。
ただ、犯人がわかった後で感じたこと。
それは「いや、いくら何でもあの犯行は無理だろう」ということ。
犯人は、「島の連中には7人で来た、と思わせ、本土の人たちには、島には6人で行っていると思わせた」というトリックを使ったということになっているのだが、そのために孤島と本土とを毎日何回か往復している。
この間、島の連中が犯人のいないことにまったく気が付かなかった、というのは、あまりにも不自然だ。
それでなくても、殺人が行われた後である。
皆の神経はいつも以上に高ぶっているはずなのに、他の連中の動向にまったく無頓着であるわけがない。
実際、本土から島に戻ってきたところを仲間の一人に見つかってしまうのだけど、よりによって足をケガしていたヤツだから、後から追いかけていって殺害した、という展開は、あまりにも安易だろう。
同じ建建物の中にいるのだから、ちょっとした物音で気が付かれてしまう可能性の方が高いと思われるし、そもそもそんな運任せの計画を立てる時点で、杜撰としか言いようがない。
しかも、一度は「みんなの部屋を確認しよう」という流れになるのだけど、なぜかそれをやめてしまう。
例え仲間の中に犯人などいない、と思っていたとしても、誰がどうやって殺人を行ったのかわからない状況の中では、犯人がどこかに潜んでいるかも知れないわけだし、一度それぞれの部屋の中を確認するということは、まず間違いなくやると思う。
しかも、連中は全員ミステリー研究会のメンバーだ。
凡人以上の感覚を持っているはずなのに、あまりにも無防備すぎて、ここは違和感バリバリの展開だった。
特に、最後に殺されたエラリーという男は、はっきり言って「お前、バカなの?」としか思えない。
自分の他にはもう一人しか残っていないという状況の中で、なお「犯人は亡くなったと思われている中村青司だ」と思い込む神経もどうかしているが、少なくとも何の疑念もなく、犯人に用意されたコーヒーを飲んでしまうとは、無防備にもほどがある。
さらに、それ以前の問題として、犯人は亡くなった中村青司の娘と恋仲であった、ということだけど、わざわざ刻印入りの指輪を作るほどの仲なのに、仲間の誰もが知らなかったということはあり得るのか?
それに、亡くなった娘は心臓に持病があった、ということになっているが、そんな女性を夜遅くまで飲み会に引っ張り回す方もどうかしているけど、恋人として「お前は体が弱いのだから、早く帰った方がいい」とか言わなかったの?
オレは先に帰ったから、後で起こったことは知らなかった、なんてことを、よくも白々しく言えるものだと思う。
いずれにしても、よく考えられたトリックとは言え、たぶん実行不可能だろうから、私ならゼッタイにやらない。
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