様々な出会い、そして別れの交錯する春。そして年度末でありますが、今春は我々の郷土が誇る大いなる一つの知性を見送らなければならなくなりました。
「組織と人間」をテーマに旺盛な著作活動をしていらした作家 城山三郎さんが一昨日、病気の為逝去されました。
同氏は正に我々と同郷の方で1927=昭和2年8月、名古屋市のご出身で享年は79歳。
学生だった為、戦時下にも関わらず徴兵猶予となるも旧海軍に志願入隊した経緯があります。ただ、当時の旧海軍内は旧陸軍と同様、上官による過度の暴力が常態化していた様で、この事が同氏の組織観に大きな影響を及ぼしたとされます。この辺りの状況は、作家 中野孝次さん(故人)や保坂正康さんの著作からも窺い知る事ができます。
戦後は大學の講師等を経て、1950年代の終わり、昭和30年代の途中より、上記のテーマにての多くの著作活動を開始される事となります。ペンネーム「城山」は名古屋市内の地名より取られた由。
私が拝読したのは恥かしながら以下の3作「小説日本銀行」「指揮官たちの特攻」そして「落日燃ゆ」であります。その他TVドラマにて「黄金の日々」「官僚たちの夏」「男子の本懐」そして「勇者は語らず」の各作品を拝見しました。
これらの著作を拝見して感動したのは、やはり城山さんの事前調査に対する能力の高さと姿勢の真摯さでしょう。
事実に基づき物語を追い込み、読者をもその状況の当事者である気分にさせて頂けるのが所謂「城山ワールド」の魅力だった様に思います。
作品で印象深いのはやはり「落日燃ゆ」ですね。
先の大戦の後処理として行われた「勝者の裁判」と評される東京裁判こと極東国際軍事裁判にて軍人ではない文官として唯一絞首刑となった元内閣総理大臣、広田弘毅さんの戦争回避への命懸けの努力、そして戦後のこの裁判の理不尽と申して良い判決への従容とした姿勢など、本当は高い知性と品性を備えた敬愛すべき政治家であった事を、改めて思い知らされる文章でありました。
唯一疑問の残る所・・・それは東京裁判に際し徹底して被告の立場から、全員無罪の強い主張と刑の減免への尽力を惜しまなかったインドの法学者、R・Bパール博士のご活動に全く触れられていない事でしょう。
この事はあるいは、同氏の旧海軍時代のご経験と関連があるのかも知れませんが、この事は史実として正面より取り上げて下されたかったと強く思います。
その事を差し置くとしても、我国の現代社会においての「組織と人間」の問題はこれからも永遠に続くテーマであり、その事に正面より挑み続けた知性が失われた事の損失は大きいでしょう。このテーマに関して多くの考える事共をご提供下さった城山さんに対し心よりお礼申すと共に、謹んで哀悼の意を表すると共に、同氏の志を継ぐ書き手の出現を望みたいものであります。
城山さん、本当に有難うございました。*(日本)*
「組織と人間」をテーマに旺盛な著作活動をしていらした作家 城山三郎さんが一昨日、病気の為逝去されました。
同氏は正に我々と同郷の方で1927=昭和2年8月、名古屋市のご出身で享年は79歳。
学生だった為、戦時下にも関わらず徴兵猶予となるも旧海軍に志願入隊した経緯があります。ただ、当時の旧海軍内は旧陸軍と同様、上官による過度の暴力が常態化していた様で、この事が同氏の組織観に大きな影響を及ぼしたとされます。この辺りの状況は、作家 中野孝次さん(故人)や保坂正康さんの著作からも窺い知る事ができます。
戦後は大學の講師等を経て、1950年代の終わり、昭和30年代の途中より、上記のテーマにての多くの著作活動を開始される事となります。ペンネーム「城山」は名古屋市内の地名より取られた由。
私が拝読したのは恥かしながら以下の3作「小説日本銀行」「指揮官たちの特攻」そして「落日燃ゆ」であります。その他TVドラマにて「黄金の日々」「官僚たちの夏」「男子の本懐」そして「勇者は語らず」の各作品を拝見しました。
これらの著作を拝見して感動したのは、やはり城山さんの事前調査に対する能力の高さと姿勢の真摯さでしょう。
事実に基づき物語を追い込み、読者をもその状況の当事者である気分にさせて頂けるのが所謂「城山ワールド」の魅力だった様に思います。
作品で印象深いのはやはり「落日燃ゆ」ですね。
先の大戦の後処理として行われた「勝者の裁判」と評される東京裁判こと極東国際軍事裁判にて軍人ではない文官として唯一絞首刑となった元内閣総理大臣、広田弘毅さんの戦争回避への命懸けの努力、そして戦後のこの裁判の理不尽と申して良い判決への従容とした姿勢など、本当は高い知性と品性を備えた敬愛すべき政治家であった事を、改めて思い知らされる文章でありました。
唯一疑問の残る所・・・それは東京裁判に際し徹底して被告の立場から、全員無罪の強い主張と刑の減免への尽力を惜しまなかったインドの法学者、R・Bパール博士のご活動に全く触れられていない事でしょう。
この事はあるいは、同氏の旧海軍時代のご経験と関連があるのかも知れませんが、この事は史実として正面より取り上げて下されたかったと強く思います。
その事を差し置くとしても、我国の現代社会においての「組織と人間」の問題はこれからも永遠に続くテーマであり、その事に正面より挑み続けた知性が失われた事の損失は大きいでしょう。このテーマに関して多くの考える事共をご提供下さった城山さんに対し心よりお礼申すと共に、謹んで哀悼の意を表すると共に、同氏の志を継ぐ書き手の出現を望みたいものであります。
城山さん、本当に有難うございました。*(日本)*