2022=令和 4年 8月も後僅な所へ、我国経済屈指の巨人の訃報を聞いた。稲盛和夫・京セラ名誉会長の逝去。まずは一言の弔意を申す次第。対中経済への関与など 賛否はあろうが、一面で 今の我国経済が最も必要としている強く健やかな姿勢の持主であったのも事実だろう。願わくば望ましい形での、稲盛会長の精神的後継者の出現を望みたい気もする所だ。
今夏の拙特集日記は 鉄道開通 150周年に因む意味もあり、大きな一課題である 国の安全保障と鉄道の関わりにつき触れてきた。最近特に目立つ地方鉄道路線 所謂「ローカル鉄道」の今後と、各地の住民にとり より望ましい交通手段のあり方などについての提言を国主導で促している所あるのも事実。その議論自体は必要だろうし、尊重もする者だ。
しかしながら 前回も触れた様に、有事や災害時に備え 不採算といえど存続が必要もしくは望ましい鉄道路線もあるのは明らかだ。北海道、本州、四国、九州の各地にそれぞれある事だろうが、拙者が特に重視すべきと心得るのが JR函館本線南部の 函館北郊・新函館北斗と渡島半島北部の交通要衝・長万部(おしゃまんべ)の間約 100kmについてである事は一度述べた。
西暦 2030年台の初頭、令和 10年代前半位に 北海道新幹線が札幌進出を果たすと、在来の函館本線は JRによる運営を離れ、自治体などが関与の別組織・第三セクター移行かバス路線転換による鉄道廃止などを迫られる。前述の長万部から小樽西郊の余市間 約 120kmについては残念ながら路線廃止のやむなきとなりそうだが、その南・長万部から函館を結ぶ路線は 旅客需要は希薄になるといえど、本州向けの多くの貨物輸送の実態から 存続の努力が強く求められるとされる。
この区間の存続には、沿線自治体がメインの第三セクター運営だけでは採算に乗せるのは無理で、線路や地上施設を自治体が保有し、車両と運転は引き続き JR北海道に願う「上下分離方式」が考えられて良いと拙者などは思うのだが、それでも不採算をカヴァーするには至らないらしい。貨物運行を担う JR貨物の更なる関与も考えられてい良い様なものだが、これにも限界がある様だ。
そこで考えたのが、我国の防衛安保上重要な鉄道路線という位置づけだ。既に複数の識者の方々も指摘される所だが、今は一貨物便ユーザーに留まる 防衛省と自衛隊の対鉄道関与を今より少しでも深化させ、保線や運転管理などの分野にも一定関われる様 道を開くべきではないかという事だ。
既に空自にては、自衛隊基地と共有の地方空港管制を自衛隊側で行うケースもあると聞く。こういう考え方を鉄道の分野にも広げ、空自のケースと同じ考え方で 陸自による必要な範囲の鉄道運営を行える様、法制度面を含めて見直しを願いたいとの希望を込めて 今月の記事を綴って参った次第。現実的には 前述の「上下分離方式」に 安全面を大きく考慮の上、陸自が地上と列車の両面で 必要な関与を行って輸送路線の存続を図れれば、などと愚考している所である。
こうした議論は、例えば北海道内の他路線、札幌と道東を結ぶ JR石勝線~根室本線や同石北本線、道北へ向かう JR宗谷本線についても行われている様だ。ある程度の輸送密度ある石勝線~根室本線・釧路まではとも角として、他の路線は概ね過疎化の進む地域を通るも、今 東欧ウクライナ危機を引き起こしている大国ロシアの南下脅威に晒される所で、不採算を理解するにしても存続を図る考慮はされて良い様に思う。
前述危機も 早半年を経た訳だが、露軍苦戦の背景には、宇側に向けた欧米からの軍事・経済両面の支援に加え、インター・ネットを含む通信面の援護と 宇国内に周到に張り巡らされた鉄道網の力量に負う所も大きいとされる。ここは我国も学ぶ所があるのではと心得る者だ。
函館本線南部と根室本線釧路までを除いた北海道各線は、湿地帯などを通る事もあって線路が弱く、同道の主力機関車たる DF200大型ディーゼル機の運行が困難とされる。旧国鉄の蒸機時代もそうだったが、もう一回り小型で線路負担も少ない機材(主に当地愛知に展開する DD200型ディーゼル機)を 寒冷地装備を追加の上導入の必要もあるかも知れない。勿論その前に 函館本線南部以外に防衛省と自衛隊が関与すべきかの議論も必要は当然だが、仮に実施となれば考慮されるべき点だろう。
南方も基本は似た考えで願うべきだろう。先日記事で、自衛隊鉄道貨物の現状南限は JR鹿児島本線沿いの佐賀・鳥栖となっているが、貨物便そのものは鹿児島市まで乗り入れている。当然有事には 自衛隊装備輸送が行われて然るべきであり、JR初め第三セクターを含む鉄道関係各位も考慮を願いたい所だ。こちらは無理レベルの海洋政策を強行せんとする 中国大陸の動きを念頭に置いたものである。他にも本州、四国などで同様の事情にある鉄道路線はあろうが、恐れながら今回は割愛致す次第。
輸送密度の高い 東海道・山陽新幹線とその影響下にある九州新幹線の貨物輸送は無理としても、東北・北海道新幹線については可能性があろう。これも先日記した様に、栃木県内の沿線に 新幹線貨物拠点を設置すれば貨物便運行に道が開けよう。その折、車両設計共々 自衛隊装備輸送を織り込んだ新幹線貨物列車のあり様が周到に議論され、実現に繋がると良いと思う。戦車・装甲車を含む自衛隊装備は、在来線貨物便に載せる時は 一部部品の脱着を要する事があるそうで、新幹線貨物便での輸送が実現すれば その手間を省く事も一定は可能性があるのではないか。
後になったが、元五輪陸上代表のスポーツ評論家・為末 大さんが先日某新聞紙上で語られた、折しも流行の中国大陸他由来の新型コロナ・ウィルス感染症対策についてのご見解を載せたい。安保面についても、我々日本人はこの様な課題を抱えているのかも知れない。こうした見方とも謙虚に向き合って、この難しい課題を少しでも乗り越えられればとと思う所だ。
「日本の得意技は はっきりとしていない基準でも空気を読みながら 皆が規律を持って対処することだと思います。しっかりと中央に情報を集約し 考え指示を出す時間がないような災害時にとても機能します。一方で、情報をしっかり集め 意思決定をする際には混乱します。なぜならば意思決定は やらないことを決めることでもあり、全体への配慮が強すぎれば意思決定はできないからです。日本人の意思決定は 空気が醸成されるまで配慮と検討を続け、世論に押されるように決めることが多い(つまり実際は意思決定ではない) わけですが、それはコロナ(感染症) 対策の後半戦には とても不利なやり方なのだろうと思います」(引用ここまで)
以上の 為末さんご見解は、我国安保の事共にも相当に当てはまるのではないかと思う。有事には、早い判断と行動が求められる。やはり官民の垣根を越えたレベルで平時から色々と考え、準備しておくべきと改めて思う。「備えあれば憂いなし」という事だ。今回画像も、前回に続き 当地北郊・清州市内にての大型機 DF200の様子を。南郊の JR関西本線から稲沢へと向かう所です。