はなこのアンテナ@無知の知

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プロ棋士 藤井聡太四段

2017年06月26日 | はなこのMEMO
 彗星の如く顕れた(実際は幼少の頃から記録尽くめの)天才棋士、藤井聡太四段は14歳の中学3年生。

人相も良いんだな、これが…
 21世紀生まれ初のプロ棋士であり、それまで加藤一二三九段が持っていたプロ棋士昇段最年少記録を14歳2カ月で62年ぶりに更新。

 その加藤氏との対局を皮切りに、デビュー以来、今日まで負けなしの29連勝で、これまた公式戦連勝記録を約30年ぶりに更新と、その天才ぶりは今、日本中で話題となっている。

 今日の公式戦連勝記録更新では、午後9時半過ぎにも関わらず新聞の号外も出た。

 今日の竜王戦決勝トーナメント初戦は、プロ棋士ではたった二人と言う10代同士の対局。午前10時から始まって、対戦相手の増田康宏四段(19)が投了したのが午後の9時半過ぎ。実に12時間近い熱戦を制しての勝利だ。

 藤井四段の活躍に、我がことのように目を細める加藤一二三九段曰く「危なげない試合運びの完璧な勝利」。「序盤では藤井四段が劣勢の場面もあった」とする他の棋士達とは違い、加藤九段は「(茶目っ気たっぷりに)"最多勝記録を誇る自分"にしか理解できない、終始一貫して優位に戦いを進めた、序盤で勝利を確信した戦い方であった」と評した。

 私は将棋に関しては門外漢だけれど、彼の並外れた集中力には驚きを隠せない。将棋と言うのは体力勝負の一面もあるのだと、藤井四段の対局の話題を通じて改めて知った次第だ。「長丁場の神経戦」と言う意味では、緊張の糸が先に切れた方が負けであり、彼が伸び盛りで怖い者知らずの14歳と言うところも、有利に働いているのだろう。

 師匠の杉本昌隆七段は、先の28連勝の対局の後、ふたりで帰途につくまでの間、対局の疲れも見せずに、ずっと楽しそうに将棋の話をする普段と変わりない藤井四段の姿に、29連勝を確信したと言う。

 また師匠曰く、藤井四段自身は連勝記録への拘りはなく、目の前の一局一局への勝利に集中しているそうだ。出来過ぎた弟子が破竹の勢いで連勝する姿を、師匠は優しい眼差しで見続けている。

 私はこの師匠との子弟関係も、藤井四段の大きな支えになっているのではないかと思う。何よりも将棋を愛する藤井少年の熱情の受け皿となっているのが、師匠の杉本七段だからだ。しかも師匠は藤井四段の傑出した才能を認め、伸び伸びと本人のやりたいようにやらせて、自身は彼を見守ることに徹している。

 藤井四段は一体どこまで勝ち続けるのか?「彼がこれから見せてくれる世界」はどんなものなのか、俄かファンながらも興味あるところだ。

 ただひとつ気がかりなのは、彼の体調だ。

 彼が対局に勝ち続ければ勝ち続けるほど、中学生の彼は学校に行けなくなる。ままあることだが、早熟の天才は自身の並外れた才能を発揮する為に、二度と戻らない貴重な子ども時代を犠牲にしがちだ。

 たとえ能力は大人並み、或は凌駕するものであっても、また、一連の発言から10代前半とは俄かに信じ難い精神年齢の高さが感じられるとしても、やはりまだ心身共に成長途中の子どもである。

 その時々に為すべきことをしないと(子どもなら同世代と一定の時間を共に過ごすこと)、本人は後々いつまでも何かをやり残したような違和感を覚えたり、ひとりの人間としての精神のバランスを欠く可能性がある(それを「天才の宿命」と言われたら、凡人には返す言葉もないけれど…)

 しかも長時間に渡る並外れた対局への集中は、想像以上に育ち盛りの脳に多大な負荷を与えるのではないか?そのことが、彼の脳に何らかの悪影響を及ぼさないかと、母親目線で心配になる(あの羽生三冠でさえ為し得ていない、将棋史に残るデビュー戦以来の連勝<無敗>記録である)

 また、過度の、無責任な周囲の期待は、せっかくの貴重な才能を潰してしまうこともある。特に話題とあれば、取材対象の骨の髄までしゃぶりつくさんばかりのマスコミの取材攻勢は、テレビの画面越しに見ても不快になる(対局前後の威圧するような夥しい数のカメラはどうにかならないものか?1~2社の代表撮影では駄目なのか?激しいシャッター音で、インタビューの声さえ聞こえない)

 現在は14歳、7月には15歳になる藤井君の人生はこれからだ。今まで生きて来た歳月よりもずっと長いものだ。天賦の才は大切に生かしつつも、そのことで自身を消耗してしまうことのないよう、気を付けて欲しいなと思う。どうか彼を大切に思う周りの皆さんで、彼のことを守ってあげてください。

【2017.06.27 追記】

 マスコミの過熱報道を批判しつつ、ここに昨日の「報道ステーション」の内容を引用するのは自己矛盾もイイトコですが、かなり説得力のある面白い内容だったので、以下にメモっておきます。

 これまで藤井四段が公式戦で指した手は1,522手。

 番組では、その全てをコンピュータソフトAIで解析すると共に、ソフト開発者とAIの申し子とも言われるプロ棋士千田翔太六段(23)による徹底分析で、藤井四段の強さの秘密に迫った。

 「藤井四段が負けない4つの理由

①序盤の強さ
 
 AIは局面ごとの「最善手」を割出し点数で評価して、藤井四段の「技巧」のレベルを測った。

 藤井四段は、速攻が一発で決まった局面では、攻め方を理解した上で攻めている。

 これまで「終盤に強い」と言われて来たが、実際には序盤で積極的に攻めを仕掛けており、優勢になると、そのまま勝ち切っている=一度有利になったら、勝ちを逃さない。

 (因みに、加藤九段は当初から、藤井四段は序盤で相手の数歩先を行っていると評していた。)

 差し手の間違いも少なく、大きな間違いもしない→形勢逆転が起こりにくい。

②「最善手」との"一致"

 「最善手」とは、最善の攻め方のこと。
  
 コンピュータが導く「最善手<シュ>」と実際の藤井四段の「指し手<テ>」の一致率が高い。一致率が高ければ高いほど、確実な攻めを行っているということ。

 例えば加藤九段との初戦では、藤井四段の一致率が69%に対し、加藤九段は42%。

 これまでの対戦相手の一致率の平均値は49.79%に対し、藤井四段は65.25%。

③"悪手<アクシュ>"が少ない

 "悪手"とは誤った指し手のこと。つまりミスだ。

 藤井四段は悪手率が低い。つまりミスによるダメージが小さい。

 これまでの対戦相手の悪手率の平均値は118.07に対し、藤井四段は40.42。

 たとえミスをしたとしても小さなミスで、大勢(タイセイ)には影響を与えないのが彼の強み。

④"不利"になっても差を広げない

 拮抗した対局で、たとえ形勢不利になったとしても、不利を拡大させないのが藤井四段。

 拮抗した状態をうまく保つ、粘る技術が高い→対戦相手がしびれを切らして自滅=長丁場であればあるほど強みを発揮

 そして天才的な寄せ(終盤戦)を見せる。

 番組出演のアマ有段者曰く「歴代の名人、トップ棋士の強みをすべて併せ持った棋士。付け入る隙がないモンスター

 また、別の記事では、将棋歴40年以上の俳優森本レオが、「羽生三冠が人類の頂点なら、藤井四段は藤井聡太と言う人間の皮を被ったAIだ。藤井四段は将棋界の新たな扉を開いた。」と評していた。


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